外部招聘社長の意思決定に、満場一致はありえない
第30回コラム(最終回)では、外部招聘社長が全員営業を実践する際、どのように腹心を活用して全員営業を浸透させるかについてお伝えします。
前29回で、外部招聘社長の最大の特徴は、社内に余計なしがらみがないこと。一方で、最大のマイナス要素は、情報不足であるとお伝えしました。
ゆえに、いちはやく腹心を作ることで、自分に不足している社内外の真の情報を得ることが、変革に向けて最初の関門となります。
これを踏まえず、決算数字とにらめっこして戦略立案したところで、現場の実態は見えてきません。
しかし、ここで最大の関門となるのが、経営幹部と社員のほとんどからは、まだまだ外様扱いであり、「まずはお手並み拝見」という態度をとられる場合が多いことです。
あるいは、社内の状況次第では、「自分にとっては邪魔者?」、「言われたことだけやろう」という幹部もいるという場合さえあるかもしれません。
仮に、ここまで極端ではなくとも、人間関係も信頼関係もない人から、いままでのやり方が変わることを指示命令されて、本心から納得して従う人は少数派です。
では、どうするか?
以前関わった会社では、社長が新たな方針や目標を発表する前に、社員全員と面談することにしました。
その面談を通じて、自己紹介も兼ねつつ、会社をとりまく状況と今後どういう会社にしたいかを一人づつ直接伝えていきました。
その面談は、人間関係を構築するきっかけ作りとしてだけではなく、役職に関わらず、誰が会社の変革に前向きか?、現状維持に傾いているか?を、外部招聘社長が自らの目で見て判断する機会にもなりました。
結果的に、経営陣だけで話し合って会社を変えようとしても難しいと判断することで、会社の変革に前向きな経営幹部を見出し、その経営幹部を軸にプロジェクトチームを作り、現場の事態をとりいれた改革へと向かうことができました。
外様と思われている間は、どうやったところで、短期間での満場一致は得られません。
もし、それが多少の痛みを伴う変革であればなおさらです。
ゆえに、現状維持派は、まずは自分がやろうとすることに表だって邪魔をしなければ良しすることも時には必要となってきます。
社歴10年以上、従業員20~30人以上であれば、少なくとも自分が関わる部下やお客様に対しては、できるだけの仕事・サービスを提供したいと考える人材がいるものです。
外部招聘社長は、そういう有意の人材を発掘することさえできれば、仮に自分をとりまく経営陣に改革推進派と現状維持派が混在していても、偏った情報や業績数字だけで判断することなく、マネジメントを前進させることができるようになります。
外部招聘社長が会社を変革する際に必要な腹心とは、自分の分身ではありません。
役職や部門に関わらず、自分の持っていない情報を持っていたり、自分ではできない範囲の現場との橋渡しができる腹心なのです。
・今回のポイント(〆の一言):
外部招聘社長の営業強化は、分身よりも補完で決まる
足かけ1年半にわたる本コラムも、今号にて最終回となります。長い間、お読みいただきありがとうございました。
全員営業について、より詳しく知りたい方は、弊社HPや書籍等もご参照いただくと
現有戦力のままで営業力を最大限アップさせるヒントが更に得られるかと存じます。
末尾になりますが、御社の益々の繁栄・発展を心よりお祈りしています。また、どこかでお会いするのを楽しみにしております。