
前回、「仕事の頼み方」についてお話しました。今回は、「注意・指摘を次に活かせる社員の共通点」について3つの視点からをお話します。
【1点目。人とのコミュニケ―ションの第一歩は、相手の気持ちを汲み取ることからはじめる】
AさんとBさんが、指示を受けて同じ位の時間を掛けて作成した資料を上司に提出したとします。二人は上司からほぼ同じような内容の注意・指摘を受けたとします。このとき対応によって二人の成長に今後差がでるのは、なぜだと思いますか?私は受け取る側の気持ちが大きく影響するように感じます。
Aさんは、「注意」・「指摘」などの言葉を耳にしたり、活字を見たときマイナスの緊張が走ります。準備して時間もかけて作成したのにという全面自分サイドの感情から、「がっかり」の沼に落ち込んでしまいます。Aさんはこの時点で、相手の心を思い図る「ゆとり」などありません。これでは「負のスパイラル」に突入です。「人格否定をされているのではない」にもかかわらず、注意や指摘から改善点を見つけるどころではありません。
一方、Bさんは、Aさん同様時間をかけて作成したものへの注意・指摘を受けても、相手の気持ちを一番に推し図ることから始めています。Bさんは相手がBさんに伝える前に、分かり易く説明をするにはと考えてもらった時間や、伝えるタイミングなどの配慮を有難く感じとれていました。
前述の例はどこの会社でも起こり得ることです。最初の段階に、どこへ視点を向けるかでその後の言動が大きく変わります。たぶんAさんはややぶっきらぼうに「そうですか」と答えるでしょう。しかし人とのコミュニケーションの中では、Bさんのように相手の気持ちをまず考えることが大変重要です。Bさんはきっと、「お忙しいところ、ご注意・ご指摘をいただきありがとうございます」から始められるでしょう。私たちは人生の中で誰とも言葉を交わさずに過ごす時間はほとんどないといっても良いかも知れません。
だからこそ、相手の気持ちをまず考える事は、仕事の中で、呼吸をするのと同じ位最重要課題ではないでしょうか。例えば親が子供を注意するのは、「子供が良い方向に伸びていって欲しい」と願っているからこそです。子供の人格を否定することなど微塵も考えていないでしょう。私は会社の先輩や上司も同じような立ち位置からの注意や指摘と考えています。相手から言われた言葉に振り回されるのではなく、有難く受け取れる自分を育てる。これが「相手に寄り添う」ということであり、今回の共通の大きな要素です。
【二点目。自分を上手に疑う】
注意や指摘を受けたとき、もう一つ大切な視点は、「自分を上手に疑う」です。これまでの経験から、多くの人は自分が書いた文や発言した言葉をまるでわが子のようにとても大切に思っていると感じています。注意や指摘の内容を説明しているときは、しっかり頷いてくださるのですが、いざ修正の提出物を見ると、指摘が十分に反映されていないことがあります。
そのような場面に出会うたびに思うのは、こここそが成長の分かれ道だということです。自分を疑うと言っても自己否定をする必要はありません。「上手に」という言葉には、スキルとして身に付けられるという意味も含まれていますから、ご安心ください。
まずは軽やかな気持ちで自分に問いかけてみます。
「なぜ私は先輩の注意や指摘より自分の考えが正しいと思ったのか。その理由と思えることを3点挙げてみて。・・・・・・「それらは『①』・・・『②』・・・・・『えーとそれから③』かなぁ」。次に、もう一人の私が「でも、」とそれに答える。1人二役で会話を何往復かしてみるのです。いわば1人二役でディベートをしているイメージが湧けばよろしいと思います。
どちらの役も自分ですから傷つく必要もなく、敢えて言うと幅を広げて考えた結果、反対意見のどれかが自分の中に留まる可能性も起こるでしょう。一方向の考えを固めてしまうと他人の言葉はあなたの耳を通り過ぎ、やがては消えてしまいます。それでは継続した成長は望めなくなります。それを阻むのが自分とならないように慎重に行動をして欲しいと思います。自分を上手に疑うことは、人の話を聴く耳を育てる事にも繋がります。たぶん私の1人二役の提案は、楽しみながら継続する成長のサポートとなります。是非お試しになってください。
【三点目。左脳と右脳をバランスよく使う】
注意や指摘を受けた時、その瞬間何を感じたかをもう一度思い出してみてください。言われた内容を理解しようとする前に身体全体で「えーっ」という感じや「どうして?」と思ったりしませんでしたか?私もそのような思いを抱いた経験がありますし、「私も!」とうなずかれる方も多いのではないかと思います。ここでは【一点目】でお話した「相手の気持ちを汲み取る」や「相手の気持ちに寄り添う」ことと角度が少し違う話をします。
人はまず感情が動き、そのあとで考え始める生き物と言われています。一般的には、感情や直感を司る右脳が先に反応し、言葉を整理したり、意味を考えたりする左脳は少し遅れて働き始めるようです。生き物の視点から見ると気持ちが先に動くのは、自然と捉えてよいでしょう。ここで無理に「前向きに受けとめよう」と自分を鼓舞する必要はありません。感じたことは感じたこととして、さらっと受け止める。その上で注意や指摘の内容にフォーカスするよう努めます。「次に活かす」ためには「相手が伝えたかった内容をしっかり見極める作業が求められます。つまり「相手は何が伝えたかったのだろう」と自分の中で何度も「考える余地」を持つことが大切です。
突然で恐縮ですが、ここで50センチ程度の一枚の布を想像してみてください。縦糸は、相手の気持ちに寄り添おうとする自分。横糸は、自分が感じたことや考えを大切にする自分です。縦糸だけ強く引くと、相手のことばかりを優先してしまい、自分の気持ちを見失いやすくなります。反対に、横糸だけ引くと、自分の思いに閉じこもってしまい、相手の言葉が耳に入りにくくなります。どちらか一方だけでは、布はなかなか動きません。
ところが、縦と横を同時に斜めに引いてみると布は少しずつ伸び始めます。この斜めの力とは自分の感情と相手の言葉を行き来する時間のことだと、私は考えます。すぐに答えを出さなくても構いません。受け止めて、考えて、また振り返る。その時間があるからこそ気づきが生まれ、次の一歩へと進むことができるのだと思います。
布を斜めに引いたとき、確かに伸びていく長さが目に見えるように、左脳と右脳をバランスよく使うとはまさにこの場面をさしています。右脳の感じたことを出発点にしながら、そこに左脳の考える視点を幾重にも重ねていく。その積み重ねが、注意や指摘を単なる評価で終わらせず、「次の行動につながるヒント」として受けとる力を伸ばしていくと信じています。
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