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- 第28号 内部昇格社長のための全員営業の活用法【実践編】
第28回コラムは、内部昇格社長の人柄が浸透した後に、どうやって社内に影響力を発揮して全員営業につなげるかのポイントについてお話します。
内部昇格社長の場合、義父となる先代社長との関係性を抜きにして経営することはできません。
その関係性は、時に自らの影響力を発揮する際の煩わしさや障壁となることもありますが、一方で、その微妙な立ち位置を活用することもできます。
特に、数年間の管理職経験を得て内部昇格社長となった方の場合、先代社長や古参の経営陣よりも優れている特質の一つが、現場との距離感が近いということです。ゆえに、現場社員の立場から会社を見る事ができます。
いくら優秀な経営陣でも、例えば社歴30年前後の会社ともなれば、先代社長や役員の一部は、すでに直接的な現場実務からは10年以上離れています。そのため、現場と違和感のある業務が続いていたり、明らかに許容量を超える指示を与えていることがあります。
内部昇格社長という立場で就任から少し時間が経過した第2段階では、そのような課題に対して、社員の視点も配慮して、現場業務の見直しやお客様の声を吸い上げるための架け橋となることができます。
そうこうするうちに、この内部昇格社長は、「いまの現場を知っている」、「社員の声に耳を傾けてくれる」ことが実態として理解され、さらに良質な現場情報や本音の意見が集まるようになっていきます。
得られた情報と経営の業績数字とを照らし合わせることを工夫していけば、やがて属人的な感覚や業界慣習に準拠するだけの経営ではなく、独自の考えと施策を、社員にも合理的に説明することが可能な経営へと移行できるようになります。
これらは、その立場ゆえに常に周囲に気遣いが欠かせず、かつ謙虚に他人から教えてもらわないと会社の仕事を覚えられなかった内部昇格社長だからこそ、自然に行うことができるやり方ともいえます。
しかし、この段階で重要なのは、会社経営を大きく変える舵取りや、役員が表だって反対するような施策を、独断で押し通すには、まだまだ難しい立場だということです。
そのような決断をしたいならば、やはり先代社長と相談し、先代社長に表に出てもらうか、又は協働で行うことにより、社内の統一感を得やすくするとともに、いざという時に自らの立場も守ることが必要かもしれません。
創業家であれば、多少の失敗やワガママも許されますが、内部昇格社長の立場で同じようにやってしまうと、1回の大きな失敗が、自らの評判と立場を決定的に落としてしまう可能性があるからです。
これは決して、消極的な姿勢や保身ではありません。
先代社長との信頼関係があり、現場との懸け橋となる調整役になれる立場だからこそ、その立場を最大限に活用して、社内に無用の波風を立たさず、かつ会社の業績向上に向けて最短距離で到達するための効果的な方策なのです。
・今回のポイント(〆の一言)
内部昇格社長は、現場の意見に沿うことは自らが、経営リスクのあることは会長を通じて発すれば、よりスムーズに社内に浸透していく。