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<事例―28 でんかのヤマグチ(B2C)>徹底した御用聞き営業と接客対応で、高くても売れる家電店になった…それが「でんかのヤマグチ」だ

酒井光雄 成功事例に学ぶ繁栄企業のブランド戦略

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 ●小売業の高付加価値化とブランド力向上を阻む原因
 
 組織小売業も含めて小売業が付加価値を高められず、ブランド力が向上しない理由。それは「どこにでもある製品を品揃え」して、「効率重視」で「安売り」し、「薄利多売」によって収益を上げようとするからだ。
 
 小売業は家電製品・食料品・シャンプーに代表される日用雑貨などのカテゴリーでは、どの店も売れ筋の製品を品揃えするため店頭が画一的になり、店舗の個性は発揮できなくなる。さらに商圏での競合が激しいため、自社の優位性を発揮するには販売価格を安くする以外に方法がないと思い込み、人件費など販売管理費を削減して利益率を高めようとする。
 
 しかし価格競争は消耗戦のため、規模の小さい小売業でこうした発想で経営を続けることは難しく、淘汰されてしまう事態も起こる。
 
 ●価格の安さ以外の「高付加価値づくり」
 
 「大量購入(調達)によって安価に入手したNB中心の品揃え」「効率重視」「安売り」「薄利多売」という過去のチェーンストア理論が崩壊して、次の打ち手が見えない小売業が多い中で、独自に活路を見出した小売業がある。それが「でんかのヤマグチ」だ。
 
 同社は東京都町田市に立地し、価格競争が熾烈な家電業界の小売店でありながら、20年間に渡り黒字経営を続けている。
 
 同社は20年前に自店舗の1.5キロメートル圏内に6店の大型家電量販店が進出したため顧客離れが加速し、売上がおよそ30%も減少する事態に直面した。そこで創業者の山口勉氏が考えたのが、従来25%だった粗利率を35%にまで引き上げるため他店よりも取扱い製品を高く売る販売戦略だ。
 
 他店よりも高く売る販売戦略を実現するために同社が採用した戦術は、
 
 (1)重点顧客の絞り込み
 既存顧客のリストから「同社で5年以上購入履歴のない顧客」と「他店のチラシを持って値引きを要求する顧客」を削除して従来の3分の1の数に絞り込み、自社の重点顧客に設定した。
 
 (2)高付加価値型御用聞き営業の採用
 顧客の数を3分の1に絞り込んだことで従来の3倍のサービス提供が可能だと判断し、製品価格が高くても企業価値を感じてもらえる営業方法として、御用聞き営業を採用する。御用聞き営業を通じて顧客から依頼があれば、家電製品の配線作業や電球交換に加え、「病院への送迎」「旅行などで不在になる際に庭の植木の水やり」なども請負う。
 
 (3)週末に店頭イベントを開催し、顧客との接触機会を増大
 週末には店頭で季節ごとの食材を使った料理とお土産を来店客に提供し、顧客との接触機会を増大し営業活動につなげている。
 
 こうした取組みにより同社は目標とした35%の利益率を8年後に達成し、御用聞き営業(訪問販売)による売上構成比は約65%となった。また同社の主要顧客層は50代後半以降のシニア層が中心となっている。
 
 
<「でんかのヤマグチ」の事例に学ぶこと> 
 
 小売業は「製品価値」と「製品価格」で他社にない優位性を発揮しようとするが、この方法には限界がある。
 
 事例の企業は、『店頭でのセルフ販売でなく、御用聞き営業』『製品価格の安さでなく、高付加価値接客サービスの提供』『画一的な小売業でなく、高付加価値サービスによる顔が見える企業としてブランド力の向上』に取組んだ。
 
 自社の重点顧客を明確化し、どこにもない小売業の高付加価値戦略を採用したことが、同社の成功要因だ。
 
 
 
 
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