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- 第16号 “販売卸業”のための全員営業の活用法【実践編】
第16回コラムでは、販売卸業が、競合と同じ商品でも勝つために、全員営業を活用するポイントについてお話します。
販売卸業は、競合他社と全く同じ商品を扱うことが多いため、営業現場では、値引き勝負になることが他業界よりも圧倒的に多くなります。
ゆえに、値引き勝負にならずに、新規契約を獲得し続けるには、正攻法の商品知識をいくら高めても、それだけでは不十分です。
では、契約交渉やクロージング話法かというと、新規契約では、そこまで到達することが少ない会社や、商談相手が後で振り返って、上手くしてやられたと思う可能性があるような手練手管ならば、2回目の取引がなくなるだけです。
では、どうするか?
「社外の営業力の活用」が、幾つかある方策の内の一つです。
その社外の営業力で、最も効果的かつ協力的なものは、現在取引している既存のお客様に眠っています。
理由は、販売卸業の特性にあります。まったく同じ商品ゆえ、新規取引の獲得が難しい一方で、まったく同じ商品なのに、自社から購入し続けてくれているお客様がいるのです。不思議に思われませんか?。そこにこそ、販売卸業の営業強化の原点があります。
しかし、なぜ自社と取引いただいているかについてのヒアリングを行っても、普通にやれば、「昔から取引しているから」、「いろいろムリきいてくれるからね」という答えしか返ってこないものです。
そこから先を聞き出すノウハウは、また別の機会があればお伝えするとして、相手にヒアリングをせずとも、お客様に埋もれている営業力を発掘することは可能です。
仮に、長年自社が取引している相手が、超有名企業であるとすればどうでしょうか?。
東京の中小企業がゼネラルエレクトリック社と、あるいは愛知県の中小企業がトヨタと長年取引してきているとすれば…。それだけでも会社の新規営業における初回訪問の信用力は、今までと格段に上がると思いませんか?。もし、そうだったとして、それを最大限活用してきているでしょうか?
あるいは、御社が販売卸業として、営業マンの中で、お客様が自社の商品をどう使っているかまで把握していたり、興味を持っている人がどれくらいいるでしょうか?
注文がくれば、発注書を作成して、商品部に回して、それから宅配業者が倉庫からお客様に配送して終わりになっていないでしょうか?
単に商品パンフレットに書かれてある内容や商品スペックの比較だけなら、自社商品だけでなく、数多くの会社から営業をかけられ、他社商品と比較ができる商談相手の方が、上という場合すらあるのです。
だからこそ、既存のお客様の現場にいって、「実際にどんな使われ方をしているか?」、「自分たちはおろか、メーカーすら思ってもみないような使用法や不具合などがないだろうか?」を知り、それを営業活動に盛り込むと、他社と差別化ができる可能性が出てきます。
その典型的な代表例が、通販の「ジャパネットたかた」です。値段が安いかというと決して一番安い訳ではありません。しかし、メーカーでも気づかないような商品の特徴や新たな使用法を提案することで、爆発的に売り続けています。
自社が、売る側ではなく、まずお客様となってTV放送前に、使用法や不具合を徹底的に検証しているからこそ、できる売り方といえます。
しかし、すでに創業何十年を経ている販売卸業であれば、自社で商品を手にとるところから試さずとも、実際に長年使っているお客様先にいって、観察すればいい話です。
商売の基本は、「現場、現物、現金」の三現にある、とは昔から言われています。
しかし、多くの販売卸業では、現物≒商品を説明し、現金≒売上を得ようとはしますが、 『現場≒売った後のお客様先の様子』については、経営者はもとより、営業マンでさえ、お客様が自分から話すか、あるいは、トラブルでも発生しない限り、把握していない中で、売っている場合すらあるのです。
今回のポイント(〆の一言):
商売の原点は、現場にあり。同じ商品で勝負する販売卸業こそ、その差別化は、より現場に近い情報と工夫のあるものが勝者となる。