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人事・労務

第56話 賞与に込めた想いをどのように社員に届けるか

賃金決定の定石

 賞与は、その本質が「利益の分配」にあることからも分かるように、社員一人ひとりの働きに応えたいという会社の想いが込められた大切な報酬だということができます。物価上昇や雇用環境の変化など、さまざまな要素を考慮しながら、社員の生活やモチベーションに思いを巡らせて支給額を決定する経営者も多いことでしょう。同時に、賞与は「会社が社員の貢献をどう受けとめているか」「どのような価値観でそれを処遇に結びつけようとしているのか」を、明確に示す機会でもあります。

 そうした視点から賞与制度を見直すとき、私たちが重視しているのは、評価結果との連動性を高め、納得感とメリハリのある仕組みを築くことです。たとえば「成績比例配分」の考え方では、上位等級者にはより厚く、同一等級内でも成績に応じた差を設けています。原資構成においても、成績比例配分を50%以上とするか、基本給に比例した1か月分程度を基礎部分とし、それを超える部分をすべて成績比例配分とする設計を基本としています。なぜなら、こうすることで努力に見合った適正な処遇と、組織全体の成長意識を生み出していくことができるからです。

 今般のような物価上昇が続く局面では、賞与支給月数が比較的多い企業でしたら、制度運用上の選択肢として、原資の一部を月例賃金へ振り分けるといった柔軟な対応も現実的です。とくにベースアップ圧力が高まる昨今、賞与という変動報酬の特性を活かしながら、持続性のある人件費の配分へと修正していくことは、戦略的な報酬設計を考えるうえでも大切な視点です。

 年収の10~20%を占めるともいわれる賞与ですから、賞与支給日には、社長から社員に向けたメッセージを出していただくようお勧めしています。社長談話の中で、今期の業績や支給の位置づけはもとより、社員一人ひとりへの感謝と今後に向けたエールを込めて話していただくのが良いでしょう。そうした言葉は、会社からの期待を表わすだけでなく、必ずや次のチャレンジへの動機づけとなるはずです。

 また、現場の評価者にとっても、支給日の意味合いは大きなものです。支給明細を渡すときには、併せて「どのような行動が組織に価値をもたらしたのか」を丁寧に伝えていただくのが良いでしょう。社員が明細を見た瞬間に感じた「うれしさ」や「悔しさ」が、そのまま次の仕事への原動力になるよう、支給日を“伝える場”としても大切にしていきたいところです。

 賞与支給というと、評価される側の心情に注目が集まりがちですが、賞与を支給する側に立つ皆さんにとっても、「どのように伝えるか」「どんな姿勢で臨むか」を見つめ直す機会と捉えなおし、翌期につながる有意義な賞与支給としていただきたいと思います。

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