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人事・労務

第11話 職種によって評価要素ごとのウエイトを加減すべきか

賃金決定の定石

 間もなく、多くの会社が年末賞与の支給に向けて、社員の勤務成績を評価する時期となります。4月から9月までの上期を年末賞与に反映するための評価対象期間としている会社では、すでに人事評価に取り組まれているかもしれません。

 

 賃金管理研究所が推奨している成績評価制度では、評価要素を5項目に分けて設定し、評価要素ごとに4つの着眼点に細分化して、それぞれについて相対評価をするように構成されています。これは、管理職も一般職(非管理者)用も同様です。

 

 評価結果が納得感をもって社員に受け入れられるようにするには、一定数以上の評価項目を揃えることが必要です。成績評価制度における評価様式「成績評価基準書」では、総計20項目の着眼点について、直属の上司が責任をもって評価するようにしています。

 

 ところで、「それぞれの評価要素間には、職種によって軽重の差があるはずですから、それに応じたウエイト付けを行なうべきではないか。」という質問をいただくことがあります。このような考え方は、たとえ評価要素の重要度に違いがあったとしても、評価者は平板的に点数をつけるものだということが前提となっています。

 

 実際はどうでしょうか?例えば、製造課長が製造課のスタッフを評価する場面を想定してみましょう。この製造課長が部下の評価をするとき、被評価者の担当する仕事の種類は、同一もしくは類似職種となりますので、その職種内で重きを置くべき(=重要度の高い)評価要素は分散型に、反対にウエイトの軽い(=重要度は高くなく、差を付けにくい)評価要素は集中型の点数分布となる傾向を示すのが一般的です。

 

 このような傾向を理解せずに、無理に評価要素間のウエイト付けを行なおうとすると、特定の評価要素ばかりが加重されることとなり、かえって公平を失することにもなりかねません。1つの評価単位(被評価者グループ)の中の職種の違いはそれほど大きくはありませんし、評価者である上司も課内での仕事内容や要素別の重要度を良く理解していますから、そのような評価者が評価することを前提とした成績評価制度では、改めて評価要素ごとのウエイト付けを行なう必要はないのです。

 

 仮に、ある職種に対して一定のウエイト付けを行なったとしても、評価者が適正な点数格差をつけることができなければ、まったく意味をなしません。よく中間管理職の多くがプレイングマネージャーであるといわれますが、特にプレイヤーとして多忙な管理職が評価者となると、部下を十分に観察していないという負い目からか、評価点に適正な格差(メリハリ)を付けられずに集中型の点数分布となりやすいものです。このように評価者が実質的に評価責任を果たしていない状況のもとでは、いくらウエイト付けを調整したところで、根本的な問題解決にはなりません。

 

 評価者としての責任は、自らが預かる部下一人ひとりについて、評価対象期間におけるその仕事ぶりをしっかり観察し、仕事の成績(プロセスと成果)を自身の判断に基づいて評価を下し、会社に報告することにあります。評価の納得感を高めるためには、職種別のウエイト付けに頼るよりも、まず評価者の評価力向上に努めていただきたいと思います。

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