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社長業

Vol.120 2008年・注目のベトナム3大都市  視察レポート 2

作間信司の経営無形庵(けいえいむぎょうあん)

 大企業と地方の中堅企業では、進出に対する姿勢・心構えが違って当たり前だと思う。中国でも工場視察を通して、同じように感じたが、ベトナムでも、うまくいっている工場責任者に共通しているのは現地化を真剣に考え、社員教育も技術教育も経営幹部教育も、非常に熱心に行っているということである。
 
 ベトナム琉球文化工芸村(ハノイ郊外)
 
 シラサキベトナムコーポレーション(ホーチミン郊外のロンビン工業団地)
 
 そして、益岡製作所(ハイフォン工業団地)
 
でも、「チャイナプラスワン」だけでは、決してうまくいかないことを、教えていただいた。
 

 一見きれいごとに思えるかもしれないが、3人の経営者に共通していたのは「ベトナムに対する愛情、地元の人に対する情」を感じた。
 
 当然、経営であるから人件費に対するコスト面、進出に関わる税制優遇面、立地、原材料の調達、技術的な裾野の広さ、など総合判断を通して進出を決定しているが、現地の経営者が現地企業の業績を伸ばすためには、班長、幹部がどこまで一生懸命にやってくれるかにかかっている。
 
 ベトナム琉球文化工芸村では、1995年の進出以来、安里(あさと)専務が先頭に立ち、手作りの琉球ガラスの技術者を沖縄より交代で招き技術指導に明け暮れたとのこと。
 
 当初60人でスタートし12年たった今では280人の職人が、年間300万個の手作りガラス製品をつくり、ほとんど沖縄に出荷している。ヨーロッパなどからもバイヤーが訪ねてきて販売させて欲しいとの依頼も数多く寄せられるが、全品手作りのため要求に応えられない状態である。
 
 沖縄の本社との間でも、どこまで秘伝の調合技術や工芸の技を教えるのか、ベトナムの技術者を沖縄へ派遣し教えるかなど、微妙な問題も残っているが、ソロバンだけでの判断ではない現地化の本質の理解がいる。
 
 安里専務は現在でも10ヶ月は現地で陣頭指揮を採り、将来、ベトナムの技術者が世界に通用する品質、デザイン性、芸術性を身につけ、アメリカやヨーロッパに工場を持とうと夢を膨らませている。
 

 シラサキベトナムの笠原社長に会社の案内をしていただいたときも、痛切に同じ愛情を感じた。たまたま本社から一年間の研修で日本人社員、山本さんが派遣されていたので2名の日本人が居られたが、常時は笠原社長のみ。
 
 カベ一面に、国内のTQMが進んでいる工場も真っ青なくらいに、会社とチーム・個人の目標設定や達成項目、日本語習得の進捗度合い、掲示物が掛けられ業績も順調にのびている。それもすべて現地のベトナム人幹部がやっており笠原社長が当初教えたとはいえ、決して日本流を強制しておらず現地の工夫改善を活かして自主活動としてやっていた。
 
 単にPCで作っただけでは、どんなに重要なことでも、みんなが読まないと悩み、一部に手書きのスペースを作ったところチームみんなが読むようになったなど、幹部の努力の跡が、ありありと見える。笠原社長は常々、次の社長は現地の人からと公言するくらい現地化を目指している。
 

 ダナンでお世話になった「ダイワ精工」様でも、厳しさと教育、会社の一体感作りに腐心しておられる姿は、おなじものであった。第二工場を増設中だが、これから日本向け高級品の手作りにも挑戦していきたいと意欲的で、また現地の人がそれに応えられるほど能力があるといっておられた。
 

 南京で、失敗するケースの典型が「日本の本社を見て、現地をないがしろにする経営」であると教わったことがあるが、いずれの経営者も現地化を真剣に行っておられた。チャイナのリスクに備えるのは当然だが、雑誌で取り上げられるようなチャイナプラスワンの意識では結局は大成功とはいかないであろう。
 
 (来週へつづく)

 

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