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第141回 上諏訪温泉(長野県) 重要文化財「千人風呂」で楽しむ名建築

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■諏訪湖畔のレイクビュー温泉

 ひんやりとした空気に耐え切れず、目を覚ました。春のやわらかい日差しが車内に差し込んでいた。諏訪湖を見下ろす諏訪湖サービスエリアに停めた車の中で目を覚ました。高速道路が空いている夜中に移動し、車中泊で朝を待ったというわけだ。外に出て、雲ひとつない青空と、湖面がキラキラ輝く諏訪湖を眺めたら、眠気が一気に吹き飛んだ。

 目的地は、諏訪湖畔にある上諏訪温泉。湖の東岸に広がる温泉街で、大型のホテル・旅館が立ち並ぶ。レイクビューの部屋や浴場が人気だ。四季折々の湖の風景を楽しめるが、夏は湖上花火大会が開催され、冬季は湖が全面結氷して幻想的な表情を見せてくれる。

 上諏訪温泉の歴史は古く、縄文時代にまでさかのぼるといわれる。諏訪湖畔に点在する遺跡からは土器や石器などが発見され、当時すでにこの地に人々が住み、自然の恵みとして湧き出る温泉を利用していた可能性がある。

 諏訪湖畔は、諏訪大社上社本宮など歴史を感じさせる寺社が点在するだけでなく、温泉も長野県内屈指の湧出量を誇る。上諏訪は、まさにパワースポットともいえるエリアである。
 
 ちなみに、諏訪湖の北側に広がる下諏訪温泉は、江戸時代に中山道と甲州街道が交差する唯一の宿場町として栄え、その歴史的背景から、今でも石畳の通りや本陣跡、木造建築の旅館など、情緒ある風景が残る。小規模な旅館が多く、落ち着いた静かな雰囲気が魅力だ。開放的でにぎやかな上諏訪温泉とは対照的である。

■湖畔にそびえ立つ洋風建築

 上諏訪温泉のシンボル的存在が、日帰り温泉施設「片倉館」だ。1928(昭和3)年に建てられた、教会を彷彿とさせる建築物が目印だ。洋風を基調にゴシックやロマネスク様式の意匠を取り入れている。2011年には国の重要文化財に指定された。何も知らない人は、この立派な建物の中に大浴場があるとは、夢にも思わないだろう。

 

 ゴージャスかつ昭和レトロな雰囲気の館内も、洋風の意匠がところどころに取り入れられており、食堂・休憩室は大ヒット映画『テルマエ・ロマエⅡ』のロケ地として使用されたという。

 片倉館は、もともとは製糸業を営んでいた片倉財閥の片倉兼太郎が、従業員や地域住民の福利厚生施設としてつくったのが始まりだとか。社員のために温泉施設をつくってくれる会社が現代に存在すれば、ぜひ働いてみたいものだ。

■深さ1メートル超の「立ち湯」

 大浴場内にも、西洋建築の趣きがそのまま残されていて、大理石とタイル、ギリシャ風の彫像、ステンドグラスなどで飾られており、「ヨーロッパの公衆浴場」というイメージである。このような文化財クラスの建物が、現役の温泉施設であることに感動を覚えずにはいられない。

 天井が高く開放感のある浴室には、「千人風呂」という名のとおり、長方形の巨大な湯船がひとつ。小ぶりのプールという感じで、1000人は無理だとしても、50人くらいは余裕で入れるだろう。深さが1.1メートルもあるのが特徴で、立って入浴することになる。しかも、底には玉砂利が敷き詰められていて、歩くたびに足のつぼが押されている感覚で、痛気持ちいい。マッサージ効果もありそうだ。

 泉質は、無色透明の弱アルカリ性単純温泉。さっぱりとした気持ちのいい湯だが、加水したうえに、一部循環ろ過(かけ流しとの併用)もされている。目立つ特徴はあまり感じられないものの、ぬるめの泉温で、万人受けするやさしい湯といえるだろう。だが、源泉のことが気にならないくらいに浴室の建築と雰囲気がいい。

日が差し込む湯船にゆらゆらと浸かっていると、体にエネルギーが充電されていくような感覚になった。

 

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