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第149回 川湯温泉(和歌山県) 温泉の川に出現する冬限定の露天風呂

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■川を掘ってつくる「マイ露天風呂」

 世界遺産・熊野本宮大社から車で10分ほどの距離にある川湯温泉は、熊野川の支流である大塔川に湯けむりをあげる。川沿いに10軒弱の宿が並ぶ山里の静かな温泉地だ。

 川湯温泉の名物は、大塔川から直接湧き出す温泉。「川底を掘ればたちどころに温泉が湧く」といわれるように、川全体が源泉地帯である。川原をスコップで掘れば自分だけの即席露天風呂をつくることもできる、というわけだ。夏場は温泉を楽しみながら川遊びに興じる人でにぎわう。

 筆者も水着に着替えて露天風呂づくりに挑戦。イチから掘る体力はないので、先客がつくった湯船跡を拝借し、自分サイズに掘り進めていく。スコップを入れるたびに湯が湧き上がってくるのは不思議な感覚である。ちなみに、どこでもすぐ湯が出るわけではなく、目を凝らし、ぷくぷくと湧き上がっているところを見つけて掘るのがコツだという。
 
 10分ほどで湯船が完成。しかし、すぐに入浴できるわけではない。約73℃という高温の源泉なので川の水を引き込んで自分好みの泉温に調整する必要がある。

 完成した湯船に身を沈めると、まるで川に浸かっているかのよう。目線の先には太陽の光に照らされてキラキラと光る川面。川魚が泳いでいるのも見える。すいすいと泳ぐカモの後を追う子どもたち……。のどかな風景に心が癒やされる。入浴中、突然のにわか雨に見舞われたが、雨上がりの青空に見事な虹が出現。幻想的な光景に思わず息を呑んだ。

 なお、温泉にゆっくり浸かりたいなら、「川湯温泉公衆浴場」がおすすめ。川から引いた大量の源泉がかけ流しにされ、新鮮な湯を堪能できる。

■冬の風物詩「仙人風呂」

 冬場には川湯温泉の風物詩ともいえる湯船が出現する。大塔川を堰き止めてつくる大露天「仙人風呂」だ。その始まりは江戸時代初期と伝わり、現在では例年12月から2月末日まで入れる季節限定の野天風呂として人気である(今年度は2025年12月1日から2026年2月28日までの予定)。

 自然が相手のため、その年によって湯船の大きさが変わり、荒天時や川の水が増水した場合は入浴不可となるというから、温泉は自然の恵みであることを実感できる。

 感動的なのは、その大きさ。幅40m、奥行き15m、深さ60cmと、まるでプールのような広さで、思わず泳ぎたい気分になる。さすがに「1000人」とはいわないが、数百人は入浴できそうな規模である。

 仙人風呂の湯も、川底から直接湧き出す。源泉が70℃を超えるため大塔川の清流を引き入れて40度前後に調整している。少しぬるめに調節されているので、長湯が楽しめるのはうれしい。

■開放感抜群の大露天風呂

 湯船に浸かると、川の底から湯がぷくぷくと湧き上がってくるのが見える。ただし、湯が湧き出している泉源の上に誤って陣取ってしまうと、「ぬぉぉ!」と大きな声をあげてしまいそうな熱さに襲われる。ちょうどいい湯加減の場所を探すのも、この温泉の楽しみのひとつである。

 湯船に浸かると、大塔川の流れは見えなくなってしまうが、川を堰き止めてつくった仙人風呂そのものが絶景である。よしず張りの囲いのみで、青空の下、開放感は抜群である。水着着用がルールなので、女性の姿も見える(男女別の簡易更衣室あり)。

 さらなる絶景を求めるなら、夜がおすすめ。川の湯船に浸かりながら星空を眺めるのも一興だが、とくに満月の夜は、水面に月光が映り風情がある。昼とはまったく違う表情を見せてくれるだろう。

 ちなみに、土曜日の夜は「湯けむり灯篭」といって、仙人風呂を囲むように灯篭に火がともされる。温泉の湯けむりが灯篭の明かりに照らされて幻想的な雰囲気に包まれるという。ゆっくりと宿泊して、夜の仙人温泉を楽しみたい。

 

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