1位づくり戦略コンサルタント佐藤元相です。
かつて司法書士の主要業務は不動産登記や相続登記で、人生や事業の節目に信頼される存在でした。しかし今、業界は大きな変革期を迎えています。
2003年の報酬規定廃止により価格競争が激化し、特に定型業務は「誰でも同じ」と見られ、低価格化で利益確保が困難になりました。司法書士数は約2万3,000人に増加し、開業5年以内の約45%が経営不安を抱える中、オンライン化で都市部大手が地方案件を獲得、案件争奪戦も激化。
さらに、司法書士業務の78%がAI代替可能とされ、登記申請のオンライン化が進み、定型業務の価値は低下しています。差別化やブランド構築も難しく、複合的ニーズへの対応が遅れる事務所も多い中、従来型のやり方では生き残りが難しい構造的課題に直面しています。
しかし司法書士・行政書士法人ラバール代表の松井さんは、大手と同じ土俵で戦わず、自社の得意な分野を絞り込み、そこで圧倒的な存在になる道を選びました。
「大手と競う必要はない。自分が勝てる場所で1位を取る」
彼が実践したランチェスター弱者必勝の戦略は、業界の未来を示す参考モデルになるでしょう。
願望から戦略、戦術、そして成果までの物語
1. 原点は「家族の争いをなくしたい」という願い
2020年に松井さんは独立しました。当時の自己評価はこうでした。
● 経営経験:ゼロ
● 営業力:ゼロ
● 資金:なし
● 人脈:ほぼなし
唯一あったのは、「家族や社員が争わずに済む世界をつくる」という強い願望でした。
おばあちゃんが亡くなった翌日、叔母と母の間で「この家は私がもらう」という言葉が飛び交い、それまで仲の良かった家族関係が一気に壊れました。四十九日を迎える頃には調停にまで発展し、解決まで2年。
当事者の心が荒んでいくのを見ながら、「この争いを未然に防げる方法を、世の中にもっと広めるべきだ」と強く思いました。
その後、大手法人で事業承継や会社法に携わりながらも、「もっと自由に、お客様に最適な形で支援したい」という気持ちが膨らみ、2020年に独立。資金も営業経験もないゼロからのスタートでした。
2. ランチェスター戦略で市場を絞り込む
独立当初、業界を冷静に分析しました。
司法書士の主な仕事は不動産登記や相続登記。ところが、その需要は年々減少する一方で、司法書士の数は増え続けています。競争は激化し、価格勝負になりがちです。
そんな中、松井さんはランチェスター戦略を学び、競合調査をした結果、「会社法」「自社株承継」に特化する司法書士がほとんどいないことに気づきました。知り合いの税理士やライフプランナーと接点を持ちながら、株式の承継設計まで踏み込める専門家は稀です。
さらに、過去の顧客インタビューから、自分には以下の強みがあることも発見しました。
● 法律を図解・可視化して説明できる
● 経営戦略の知識がある
● レスポンスが早い
そこでランチェスター戦略の「弱者の一点集中」を応用し、自社株承継支援というニッチ分野に特化する方針を固めました。
これらは、同業者と比較して明らかに差別化できるポイントでした。
3. 戦略の柱――「自社株デザイン」というブランド
松井さんの1位づくり戦略です。
【顧客】:事業承継予定の経営者、後継者、税理士、中小企業診断士、ライフプランナー
【商品】:自社株承継支援(設計・図解化)
【地域】:東海3県+オンライン全国対応
キャッチフレーズは「自社株デザイナー」。
株式という“目に見えない権利”を、経営者が一目で理解できる図解に落とし込み、理想の承継形をデザインします。
●「10分セミナー」という営業ツール
松井さんの武器は「10分セミナー」です。
忙しい経営者や税理士が短時間で理解できるよう、専門的な株式承継の話を図解で簡潔にまとめたプレゼンです。
この形式はライフプランナーや税理士に好評で、共同開催や紹介先づくりに直結しました。「短時間で“この人なら任せられる”と思ってもらうことが狙いです」と松井さんは話します。
4. 戦術――ゼロから紹介先をつくる行動
戦略が定まったら、次は“種まき”です。
彼は以下のような多角的な戦術で、接点を増やしていきました。
① 飛び込み営業
税理会研修講師を依頼してもらうため、愛知県内にある税理士会をリストアップし飛び込み営業を開始しました。そうすると、12件中11件が受け入れという予想外の好反応で、自信を得ました。
② FAX DM
商工会議所のリストを使い、1000枚の案内を送信。三重県の商工会館からセミナー依頼を獲得。
③ 第三者評価を得るため専門家登録
元職員の紹介で京都府・愛知県の商工会議所専門家に登録。肩書きの信頼性が格段に上がりました。
④ 価値観を共にする仲間作り
研修や展示会で知り合った経営者や専門家と関係を継続。助け合えるネットワークを構築。
これらは単発の行動ではなく、すべて「事業承継に特化した司法書士」というポジションを強化するための布石です。

5. 願望から一貫した取り組み
彼の活動は、すべて「家族の争いがない世界をつくる」という願望から始まりました。だからこそ、戦略も戦術もぶれることがありません。
株式承継の失敗によって、創業100年を迎えた企業が解散に追い込まれたことがありました。松井さんは、危機感を持たない経営者を説得できなかった悔しさを、今も鮮明に覚えているといいます。
「当時のその悔しさは、原点となった家族の相続争いの記憶と重なりました」と語ります。
法律知識だけでは救えない現実を変えるために、松井さんは経営者の思いを可視化し、関係者全員が納得できる形へと落とし込むことに力を注いでいます。
「この姿勢こそが、私の活動の軸です」と力強く言い切ります。
●「経営参謀」としての立ち位置
松井さんの顧客には、中小企業の経営者が多くいます。
単に法務手続きを行うだけでなく、株式や経営権の承継計画を経営戦略の一部として提案しています。
「自分は単なる司法書士ではなく、経営者の参謀役です。株式の承継は単発の仕事ではなく、会社の未来を左右する戦略の一部です」と松井さんは語ります。
●成果と今後の展望
現在、松井さんは数多くの経営者を支援し、事務所も名古屋中心部に構えるまでに成長しました。今後は、オンライン活用や他士業との連携をさらに強化し、全国の中小企業に「争わずに事業をつなげられる仕組み」を広めていく計画です。
松井さんはこう話します。
「これからは、事業承継を迎える企業をより多く救っていきたい。そのために価値を共有できる仲間を全国に増やし、日本の中小企業の発展に貢献していきます」
●経営者への提言
私が中小企業経営者にお伝えしたいのは、まず勝てる土俵をつくることです。
大きな資本や特別な才能がなくても、差別化戦略は作れます。その出発点は、自分の原点となる願望を明確にすることです。それが事業の柱となり、ぶれない行動を支えます。
次に、市場の隙間と自分の強みを重ね合わせ、そこで勝てる戦略を立てること。そして、軸を持つことです。私はその軸としてランチェスター戦略を推奨しています。弱者が勝つためには、一点集中で市場を絞り込み、そこで圧倒的な存在になることが欠かせません。
今回、紹介した松井秀也さんは、自社株承継というニッチ分野に特化し、経営者の信頼を得る存在になりました。重要なのは、その戦略を日々の戦術に落とし込み、成果が出るまでやり抜く姿勢です。
あなたの会社は、どこで1位を目指しますか。

https://www.laval-one.com/
司法書士・行政書士法人ラバール
〒453-0821 名古屋市中村区鈍池町1丁目39番地の1
TEL:052-414-6620
代表司法書士:松井秀也
代表行政書士:猪子大介









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