― 地方工務店が「体験」を設計し、選ばれる時代へ ―
家を買える人が減っている。今、工務店に必要な変化とは
こんにちは、1位づくり戦略コンサルタント佐藤元相です。
いま、家を建てようとする人が確実に減っています。
その背景には、資材費の高騰、人件費の上昇、金利の不安など、さまざまな経済的要因があります。さらに、地方では人口減少も大きな要素です。
岡山県美作市。人口は約24,000人。この地方都市でも例外ではなく、住宅業界全体が厳しい環境に置かれています。
それでも、安定して年間20棟を着工し、むしろ事業を成長させている工務店があります。それが小林工業株式会社です。

創業は明治32年。社員数は24名。現在は64歳の小林社長が事業承継を進めながら、次の時代の工務店のあり方を模索しています。
その答えが、「顧客体験(CX)」という考え方でした。
価格競争からの脱却。選ばれるためには客層を変える必要がある
これまで多くの工務店が頼ってきたのは、価格訴求とスペック競争でした。「性能がいい」「コスパがいい」「構造がしっかりしている」。それらをチラシや見学会で伝え、顧客を獲得してきたのです。
しかし、今の時代、それでは通用しません。価格で家を選ぶ層が、家を建てられなくなってきているからです。ではどうすればいいのか。
小林工業が出した答えは、客層を変えること。そして、その新たな客層とどう出会うかを戦略的に設計することでした。
「ロハスな暮らし」を求める人たちと出会うために
小林工業は、明確に客層を設定し直しました。それが、ロハス(LOHAS)という価値観を持った人たちです。

ロハスとは、健康、環境、持続可能性を大切にし、自然と調和したライフスタイルを求める人たちのこと。
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- 都会の喧騒を離れて、自然の中で暮らしたい
- 無垢材や自然素材の心地よさを大切にしたい
- 暮らしそのものに豊かさを感じたい
そうした価値観に共鳴する層に、的を絞ってマーケティングを行う。
これが小林工業の現在の戦略です。
コンセプトにブレなし。一見バラバラでも“暮らし”でつながっている
小林工業の取り組みは多岐にわたります。
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- 森のログハウス宿泊体験
- 薪ストーブ付きの本格サウナ
- 築50年の古民家を再生したカフェ
- 吉野川を眺めながらの外気浴
- 地元産の無垢材を使った住宅
- 自社製の可動式サウナユニット「kobaco sauna」
一見するとバラバラに見えるかもしれません。しかし、そのすべてに「ロハスな暮らし」という共通するコンセプトがあります。このコンセプトがぶれないからこそ、顧客との深い共感が生まれるのです。
森の中のログハウスで「住まいの思想」を体験
たとえば、森の中にある一棟貸しのログハウス。
外観は木に囲まれ、室内には自然素材がふんだんに使われています。薪ストーブの炎の揺らぎ、漆喰の壁、無垢の床。どれもが、「本当に心地よい暮らしってこういうものだよね」と感じさせてくれるのです。

さらに、そこには本格的なサウナが併設されています。設計は一級建築士、素材は美作材、ストーブは薪式でセルフロウリュ対応。水風呂にはウイスキー樽を使用し、自然と香りが調和しています。

外気浴は、森の中。鳥の声、木々の音、風の感触。これらすべてが、「住む」ということの本質を体に教えてくれます。
言葉ではなく、「感じてもらう」ことが最大の営業になる
このログハウスには、営業マンはいません。カタログも配られません。けれども、宿泊したお客様の多くがこう言います。
「こういう暮らしをしたい」
「友人を連れてきたい」
これこそが、CX=顧客体験の力です。説明より体感。説得より共感。これが今の時代の新しい営業のかたちなのです。
予約は「じゃらん」で。自然に出会える仕組みがある
この体験型ログハウスは、旅行予約サイト「じゃらん」から誰でも予約できます。「住宅の体験」ではなく、「ちょっと贅沢な旅の宿」という位置づけ。だからこそ、お客様の心理的ハードルが低く、自然な導線がつくられているのです。
これが、「営業されている」と感じさせずに「信頼される」理由の一つでもあります。
ブランディングではなく、体験そのものがブランドになる
小林工業のブランドは、ロゴやキャッチコピーのような“見せるための飾り”ではなく、五感で感じる体験そのものにあります。
森の香り、薪のぬくもり、静かな川のせせらぎ。カフェやサウナ、宿泊施設で得られるすべての感覚が、「こんな暮らしがしたい」と思わせる確かな価値となり、記憶に残るブランド体験をつくり上げているのです。

これは単なるブランディングを超えた、“暮らしの思想”の共有であり、本質でつながる顧客との共感設計といえるでしょう。
工務店の未来は「体験」をどう設計するかにかかっている
お客様は、家という「物」ではなく、そこにある「暮らしの空気感」に価値を見出しています。
小林工業は、それを設計図やスペック表ではなく、実際の体験を通じて届けている。そしてその体験が、そのまま営業にも、ブランドにも、紹介にもつながっているのです。







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