【写真】とあるホテルの客室。通常、ベッドの位置と方向は、頭が壁面に向くように設定されている。（筆者撮影）
年々夏の暑さが増し、就寝時もエアコンをフル稼働させる日が増えているのではないでしょうか？ そんな時に気になりがちなのが、エアコンの運転音。特に出張や旅行でホテル宿泊時は、いつもと異なる環境ということもあり、眠りを妨げる原因になりがちです。
今回は、ホテルでも簡単に効果を発揮する可能性がある「騒音回避の裏技」をご紹介します。
■実体験。眠ろうとすると煩わしく感じる唸り音
今回、「裏技」をご紹介しようと切っ掛けは、あるホテルでの実体験からです。ホテルは米系チェーンでランクは四つ星。一般的に快適さが期待できる水準と言えるでしょう。チェックイン直後に入室した際は異変を感じませんでしたが、眠ろうとベッドに入ると、低く唸るような騒音が。当初はフロントに部屋交換を申し出ようと思いましたが、異常というほどの大騒音でもなく、また面倒でもあるので考え直すことに。そこで思いついたのが「裏技」。期待通り騒音がピタッと止んだので、無事眠ることができました。
■原因と対策
エアコンの騒音にはいろいろな種類と原因があります。近年のエアコンは静音性に配慮した設計がなされていて、明らかな「異音」は少ないものです。では気になる可能性が高い騒音とは？ それは、モーター音や風切り音などに含まれる低音騒音が共振して発生する、低く唸る様な音です。
ホテルの部屋のように比較的コンパクトな空間で、さらにモノが少なく壁面が露出している状態では、音が平行する壁面間を繰り返し反射します。音は波としての性格を持ち、入射波と反射波の波形のピーク（山にあたる部分）が一致すると音の大きさが2倍に増幅されます。また逆にピーク（山）とディップ（谷）が重なって打ち消しあって、音の大きさがゼロに近く小さくなる場所も生まれます。こうした現象を共振、音の世界では定常波や定在波と呼び、オーディオでも音響障害の一つとして知られています。端的には、部屋の中で、騒音が大きく聞こえる場所と、逆にまったく聞こえなくなる場所が存在するという不思議な現象です。
オーディオの専門家として普段から定常波の悪影響を感じていた筆者は、今回のエアコン騒音も同様のメカニズムと考えて対策を実行。部屋の中を動き回ると、やはり騒音が大きく聞こえる場所とゼロに感じる場所が見つかりました。因みに今回のケースでは、不運にもベッドの枕の位置が、騒音面で最悪だったようです。次に対策。ベッドの位置は動かせないという制約はありますが、ベッドの足元で非常に静かなことが分かり、横たわる方向を180度変えることで解決しました。
因みに、この頭と足を反転する寝方は、今回の条件（部屋の形状や騒音源の位置）に合ったものですが、多くのケースで適用できる可能性があります。理由は、定常波によって音が増幅されるのは、物理特性上、部屋の角や壁面に近い場所が多いためです。もしみなさんが同様の騒音に遭遇したら、まずは、足と頭を入れ替えてみてください。試す価値があります。もし不十分な場合、ベッドの位置を移動することが考えられますが、ホテルでは難しいので、無理せずフロントにご相談を。ほか、エアコン風量の調整でも解決できる可能性があります。
■自宅でも有り得るエアコン騒音定常波問題
ご自宅でもエアコン運転時に唸り音が気になったら、定常波を疑ってみると良いでしょう。部屋の中をゆっくりと歩き回り、騒音が大きく聞こえる場所と、小さく聞こえる場所があれば、定常波の影響だと分かります。自宅ならベッドの位置を選べますし、高さ方向の調整が非常に有効なこともあります。定常波を知れば、ご自身でいとも簡単に騒音問題を解決できるチャンスが増えるはずです。
