公正な人事評価を実践するために
管理職の重要な役割の一つに、部下への人事評価があります。しかし、評価実施の指示や評価シートが管理部門から送られてくると、「忙しいときに面倒だけど、定例の業務だから仕方ない」と、ネガティブな捉え方をする管理職も少なくないようです。しかし、現在の職位に評価権限が与えられているということは、責任と信頼の証でもあります。まず、管理職に理解してほしい「公正な人事評価のためのポイント」を整理してみましょう。
まず始めに、評価者である管理職に評価することの意図を正しく理解させることが大切です。人事評価は単なる定例業務ではありません。部下への評価権限と育成責任は表裏一体のものであり、部下の成長を促し、組織全体のパフォーマンスを向上させるための重要な取り組みの1つです。評価を通じてこそ、部下の強みや改善点を明確にし、適切なフィードバックを通じて彼らのモチベーションを高めることができるのです。
次に、公正さと透明性を保つことの大切さを常に意識して臨むことです。評価における公正さと透明性は、部下の信頼を獲得し継続させるために欠かせません。評価基準を明確にし、全員に対してあらかじめ設定されたオープンな基準で評価することが基本です。また、評価実施の一連の流れや評価結果の取り扱いについても、部下に対し事実に照らして具体的に説明できる体制づくりが重要です。
第3のポイントは、フィードバックの質を高め続けていくことが求められているということです。あらためて言うまでもなく、評価はフィードバックとセットで行う必要があります。具体的で建設的なフィードバックをすることで、部下は自分の強みを伸ばし、ブラッシュアップに取り組むことができます。フィードバックとは、単に評価結果を伝えることではなく、「今後の努力の方向性を示し部下の成長をサポートする」ための重要なコミュニケーションの場です。常により良いもの、中味の濃い質の高いものにしていく努力が公正な評価に繋がるのです。
第4のポイントは、管理職は個々の部下の現状を正しく理解したうえで、どのように人材育成や能力開発を図るべきかについて計画的にとりくまなければならないということです。部下育成はその場しのぎではなく、個々の能力や特性を見極め中長期的な視点で行わなければなりません。このような準備がなされているかどうかは、部下一人ひとりにも伝わります。効果的な仕事の与え方や進捗管理、業務フォロー、状況に応じた支援・サポートによって、部下も今後の具体目標に照らして自らの成長を捉えるようになるでしょう。将来不安の払拭は人材の定着にも良い影響を与えます。
最後に、評価者である管理職にとっての成長の機会であり、評価力を高める実践の場であることを、会社(社長)が理解して評価運用に臨むべきだということです。人事評価の実施を通して、管理職自身も成長を実感できることでしょう。ただし、評価者が常に本来期待される評価権限を適正に行使し、育成責任を果たしているかをチェックする責任は経営側にあります。会社として、評価者自身が観察力や判断力を常に磨く努力をするように仕向け、評価力を向上させていくことも大切です。管理職が評価業務を通じて部下との信頼関係を深めることは、マネジメント力の向上に直結するだけでなく、チーム全体の結束力も高まるのです。
計画的な部下育成を
日頃の業務活動では、目先の業績や成果の追及ばかりに目が向かいがちですが、計画的な部下育成を後回しにしてはいけません。管理職は部下の成長を長期的に見据え、計画的に育成する意識を持つことが求められます。自社の管理職には部下の成長が組織全体の発展につながることを理解させ、意識の転換を図りましょう。
公正な人事評価の実践は管理職の責務の最たるものであり、部下の成長と組織の発展に直結するものです。評価を単なる定例業務として捉えることなく、部下との信頼関係を築き、彼らの成長をサポートするための貴重な機会であることを常に意識できるように経営者の皆様には導いていただきたいものです。