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故事成語に学ぶ(11)糟糠(そうこう)の妻、堂より下さず

指導者たる者かくあるべし

 苦労を分かち合った妻
 「糟糠の妻」というと、俗に、「糠みそ臭い生活力のあるできた女房」の意味で使われる。原義をたどると、「糟糠の妻」とは、酒粕と糠という粗末な食事しか口にできなかった貧乏時代をともにした女房のこと。この成語が登場する後漢書の逸話は、柔らかい話ながら、なかなか含蓄に富んでいる。決して飲んだ席での女房自慢のような軽い話ではない。ひもといてみよう。
 
 
 皇帝を教えさとす高潔の士
 漢末に帝位を簒奪した王莽(おうもう)を駆逐し漢王朝(後漢)を再建した光武帝には、数多くの高潔の士が仕えたが、宮中顧問官の宋弘(そうこう)もその一人だった。
 光武帝に夫を亡くした姉がいた。彼女は、宋弘を見初めた。皇帝は姉を屏風の陰に控えさせて、宋弘を呼び出して言う。
 「出世すれば付き合う友も変わる。富貴になれば妻も取り替える、とことわざにもある。それが人情、そこでだ…」。皇帝の言葉をさえぎって宋弘は即座に、「いいえ、私はこう聞いております」。
 〈貧賤の友は忘るべからず。糟糠の妻は堂より下さず〉(貧乏なころの友は忘れてはいけない。苦労をともにした女房は家から追い出してはいけない)と。皇帝は屏風の陰を振り返って、「おい、あの話は無しだな」。
 
 
 直言に支えられた善政
 宋弘は、宮廷顧問として採用されて以来、皇帝周辺から低俗な音曲を排除し、女性の影を遠ざけた。煙たい存在だ。「その志が本物か試してみよう」という皇帝の洒落っ気だったかもしれない。当方の勝手な想像ではあるが。
 妻を離縁してほいほいと皇帝の姉を娶れば、〝逆玉の輿〟の出世は間違いなし。それをあえて断った宋弘の本意は、「糟糠の妻」への愛着ではなく、「貧賤の友は忘るべからず」の義を側近として国のトップに説くことにあったに違いない。「立場が変わったからといって簡単に信頼する知友(部下も)を取り替えるものではありませんよ」。この故事はそう読むべきなのだ。
 光武帝は、宋弘のみならず、皇帝にずけずけと直言する者たち、ある意味での組織のはぐれ者たちを遠ざけることはしなかった。というより、そういう人物がありと聞けば積極的に宮廷に呼び集めたという。
 光武帝の治世では、収賄行為を厳しく取り締まっただけでなく、奴婢(奴隷)をたびたび解放する命令を出した。さらに文化政策を奨励し、後世、善政の君として称賛されている。
 それを支えたのは、「言うことは言う」口うるさい側近たちの存在だったことを忘れてはならない。
 
(書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com
 
※参考文献
『中国古典文学大系13 漢書・後漢書・三国志列伝選』本田済訳 平凡社
『十八史略』竹内弘行著 講談社学術文庫
『中国古典名言事典』諸橋轍次著 講談社学術文庫

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