中小企業でもリモートワークなど働き方の多様化が進んでいます。日本レーザーでの取組みを教えてください。
コロナが始まってすぐ、2020年3月にリモートワークを導入し、現在も出社2割・在宅8割を維持しています。
リモートワークで一番問題になったのは、働き方が見えず、結果だけということでした。
私はこの問題を解決するために、社員がやるべき仕事と、それに対する評価軸を具体的にまとめました。私の経験上、リモートワークはこれさえやれば、かなり上手くいくと思います。
また、人によって在宅勤務のやり方は全く異なります。例えば、マーケティングの責任者で部下を3人抱える女性社員がいるのですが、彼女の場合は朝の8時半から夕方の5時半まで部下とオンラインでつなげて、常にお互いに呼びかけたら対応できるようにしています。
リモートワークを導入して良かったことは、これまで子育てで半日の有給や早退を余儀なくされていた社員が、自分の仕事を進めるにあたって裁量権が生まれ、モチベーションも大きく上がったことでした。
ですから、子育て世代の女性社員にはリモートワークの方が向いています。また、高齢化社会に拍車がかかる今後は親の介護を余儀なくされる社員が増えます。
また、リモートワークにはもう一つメリットがありました。日本レーザーは東京、大阪、名古屋の3拠点に社員がいます。リモートであれば一斉にすぐ会議や教育ができます。このような理由から、リモートは働き方の多様化に対応するという意味で非常に有効です。
ただし、欠点もあります。それは1杯飲みながら肩を組んで話すといったことができないということです。
人間というのは面白いもので同じ場所で、同じものを飲み食いしているとポロっと本音の話が出てくるのです。また、さりげない会話が大きなヒントにつながることもあります。
それを補うために、懇親会をなるべくやるようにしています。在宅でやる場合は、宅配サービスで飲み物とおつまみを送っています。また、新年会や忘年会は開催するようにしています。
最後に、本書の読みどころを教えてください。
本書は、日本レーザーが倒産寸前から31期連続黒字になるまで実践してきた「人を大切にする経営」の全ノウハウをまとめた、いわば私の集大成です。
また、日本レーザーは、親会社の日本電子からMEBO(マネジメントバイアウト)という手法で独立しています。事業承継に悩む経営者にとっては、本書でお伝えしているMEBOも一つの手法としてヒントになるのではないでしょうか。
(聞き手・構成 西野光輔)