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社長業

第50回 生産性向上ではなく、商品力向上へ

繁栄への着眼点 牟田太陽

※本コラムは2023年7月の繁栄への着眼点を掲載したものです。

 企業である以上、「投資に対してどのくらい利益を上げたのか」これしかない。いわゆる生産性だ。

 生産性にもいろいろとあるが、一番大切なものは「資本生産性」である。全資産を使ってどの程度の利益を出したのか。経営そのものといっていい。

 その他に、社員一人当たりが出した利益を計る「労働生産性」であったり、社員一人当たりが出した生産量を計る「物的生産性」であったり、技術力向上、効率化、ブランド力増加など資本や労働以外による生産の増加を計る「全要素生産性」などが挙げられる。

 生産性向上は言うまでもなく重要なものである。
 しかし、それをあまりにも突き詰めていくことを私はあまり推奨はしない。何故なら平等性を崩してしまう恐れがあるからだ。

 20年前の話だ。ある社員が、社員一人ひとりがどの程度の粗利益高を年間で出したのか計算をして表にして社内で配布をしたことがあった。これに対して牟田 學は烈火のごとく怒った。その怒りは息子の私が今まで見たことがないくらいだった。

 見込み事業というのは、商品が世に出るまで売れるのか売れないのか分からない。まるで博打のようなものだ。それだから「見込み事業」なのだ。そして入社年数であったり、自分が任されている商品・企画によって単価も違う。

 「チームとしてやっている仕事に対して一人ひとりを晒して犯人捜しのようなことをやるとは、君は何年私のもとで働いているのか」社内が静まり返った。企画を外そうなどと考えて仕事をしている者など一人もいない。

 いま一度言うが、生産性向上は言うまでもなく重要なものである。それをあまりにも突き詰めていくことを私はあまり推奨はしない。それは社員の都合のいい権利の主張に繋がるからだ。

 「あのチームは確かに売り上げが大きいが、一人当たりの売り上げで見たらウチのチームの方が効率がいい」「ウチのチームの方が高く評価されるべきだ」「あのチームが足を引っ張ってなければもっと賞与が出たのではないか」

 商品・企画が違えば、そこにかける時間も人工も全て違う。財布は一つであるのにも関わらず自分の部署都合だけで見てしまう。それが人間だろう。

 誤解のないように何度も言う。会計的には分析をしてキチンと数字で出すことは必要だが、細かく細かく出すことは社長としては必要ない。それは「生産性向上病」という病気だ。

 それよりも「商品力向上」を目指していくことの方が、牟田式でははるかに重要なことだ。

※本コラムは2023年7月の繁栄への着眼点を掲載したものです。


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