menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

社長業

第52回 人を大切にする経営

繁栄への着眼点 牟田太陽

※本コラムは2023年9月の繁栄への着眼点を掲載したものです。

 親しい社長が、「小さな会社は人を大切にする経営で成功する」というタイトルで本を出版された。読むと内容が引っ張られてしまうのでまだ読んではいないが、このところ世間を騒がせている問題を見ると、私もどこかで触れておかねばと思った。

 いつのころからか世間では会社を「ホワイト」「ブラック」と色分けするようになった。最近では、「ゆるブラック」などという言葉も出てきてしまった。

 「ブラック企業」とは、説明するまでもなく、長時間労働、高すぎるノルマ、低賃金、高い離職率、日常的なハラスメントなどだ。これらのどれかに引っ掛かれば「あの会社はブラックだ」と言われる。これは既に令和の常識となった。

 だが、相も変わらず次から次へと「ブラック企業」が出てくるのは、やっている社長本人は気づいていないからだ。それどころか自分は正しいとさえ思っている。

 先日、全国経営者セミナーにて講師の方と控室で話をしていたときのことだ。

 「牟田さんは、経営に何を求めますか。お金ですか。社会貢献ですか。社員の幸福ですか」と三択で訊かれた。ふいな質問で考えたが、「全てです」とお答えした。三択で全部と返答するのはズルかもしれないが、それしかなかった。

 社会貢献もしたい。社員も幸福にしたい。この二つを求めるにはお金がいる。綺麗ごとを言っても、お金がないと結局は何も掴めない。これが資本主義だろう。

 今回、世間を騒がせている問題は、経営にお金しか求めなかった結果だ。そこには社会貢献もない。社員の幸福もない。ましてや、「お客様第一主義」など微塵もない。日本経営合理化協会が60年近く取り組んできたこととは真逆の思想だ。

 対して、「ゆるブラック企業」とはどんなものか。それは、ブラック企業のような厳しさはない、居心地も決して悪くはないけどぬるま湯、自分の成長が期待できない、将来が見えない、収入が増えない会社のことだ。いわゆる「楽な会社」だ。

 先日、こんな統計を見た。
「楽な会社で働きたいか」というアンケートに対して、結果は、「働きたいとは思わない」が68%であった。実に7割近い人がNOと言っているのだ。これを高いと見るか、低いと見るか。

 私は、68%の人は当たり前で、むしろ32%もの人が楽な会社で働きたいと言っていることに危機感を覚える。この人たちは、自分の成長が期待できなくても、収入が増えなくても構わないと言っているのだ。

 いまの現状に、いまの日本に、「夢が持てない」と感じているのだ。こんな日本でいいのだろうか。

 「ウチは、ゆるブラックにはならないから大丈夫」と思っていたら危険だ。実は、「ホワイト企業」を目指す会社ほど、「ゆるブラック企業」になりやすいからだ。

 「働きやすい会社」ではなく、「働き甲斐のある会社」を目指してほしいとは実学の門などで何度も何度も言ってきた。その決定的な違いは、「自分の成長」「収入が増える」この二つがあるのかないのかだ。似ているようで全く違う。

 本質を間違えてしまうと全てを間違える。社長は本質を見る目を持たなくてはいけない。

※本コラムは2023年9月の繁栄への着眼点を掲載したものです。


▼牟田太陽の「後継社長の実践経営学」CD版・デジタル版

第51回 出会いは全ての始まり前のページ

第53回 親から子へ「事業へのこだわり」を伝承する次のページ

JMCAおすすめ商品・サービスopen_in_new

関連セミナー・商品

  1. 【お金の授業】2025年12月開催

    セミナー

    【お金の授業】2025年12月開催

  2. 幾代もの繁栄を築く 後継社長の実務と戦略(PHP研究所刊)

    幾代もの繁栄を築く 後継社長の実務と戦略(PHP研究所刊)

  3. 「2025年春季・全国経営者セミナー」音声・動画(CD・DVD・デジタル対応)一括申込み

    音声・映像

    「2025年春季・全国経営者セミナー」音声・動画(CD・DVD・デジタル対応)一括申込み

関連記事

  1. 第268回 社長の感性の磨き方

  2. 第45回 社長の「大きすぎる夢」に人はついてくる

  3. 第291回 出会いは全ての始まり

最新の経営コラム

  1. 第122回 銀行借入金の限度額を返済能力で計算する

  2. 国のかたち、組織のかたち(55) 米価安定をめぐる闘争①(徳川吉宗 上)

  3. 第45講 カスタマーハラスメント対策の実務策㉜『あなただったらどう思うの?』第3部

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. マネジメント

    第84回 『仕事に、”句読点”を打つ』
  2. 社員教育・営業

    第13話 “人が育つ人事”が21世紀の成長戦略
  3. 教養

    2017年5月号
  4. 税務・会計

    第34回 在庫をいかに少なくするかを常に考えている
  5. 経済・株式・資産

    第34話 経営者にとっての「真摯さ」とは?
keyboard_arrow_up