※本コラムは2023年9月の繁栄への着眼点を掲載したものです。
親しい社長が、「小さな会社は人を大切にする経営で成功する」というタイトルで本を出版された。読むと内容が引っ張られてしまうのでまだ読んではいないが、このところ世間を騒がせている問題を見ると、私もどこかで触れておかねばと思った。
いつのころからか世間では会社を「ホワイト」「ブラック」と色分けするようになった。最近では、「ゆるブラック」などという言葉も出てきてしまった。
「ブラック企業」とは、説明するまでもなく、長時間労働、高すぎるノルマ、低賃金、高い離職率、日常的なハラスメントなどだ。これらのどれかに引っ掛かれば「あの会社はブラックだ」と言われる。これは既に令和の常識となった。
だが、相も変わらず次から次へと「ブラック企業」が出てくるのは、やっている社長本人は気づいていないからだ。それどころか自分は正しいとさえ思っている。
先日、全国経営者セミナーにて講師の方と控室で話をしていたときのことだ。
「牟田さんは、経営に何を求めますか。お金ですか。社会貢献ですか。社員の幸福ですか」と三択で訊かれた。ふいな質問で考えたが、「全てです」とお答えした。三択で全部と返答するのはズルかもしれないが、それしかなかった。
社会貢献もしたい。社員も幸福にしたい。この二つを求めるにはお金がいる。綺麗ごとを言っても、お金がないと結局は何も掴めない。これが資本主義だろう。
今回、世間を騒がせている問題は、経営にお金しか求めなかった結果だ。そこには社会貢献もない。社員の幸福もない。ましてや、「お客様第一主義」など微塵もない。日本経営合理化協会が60年近く取り組んできたこととは真逆の思想だ。
対して、「ゆるブラック企業」とはどんなものか。それは、ブラック企業のような厳しさはない、居心地も決して悪くはないけどぬるま湯、自分の成長が期待できない、将来が見えない、収入が増えない会社のことだ。いわゆる「楽な会社」だ。
先日、こんな統計を見た。
「楽な会社で働きたいか」というアンケートに対して、結果は、「働きたいとは思わない」が68%であった。実に7割近い人がNOと言っているのだ。これを高いと見るか、低いと見るか。
私は、68%の人は当たり前で、むしろ32%もの人が楽な会社で働きたいと言っていることに危機感を覚える。この人たちは、自分の成長が期待できなくても、収入が増えなくても構わないと言っているのだ。
いまの現状に、いまの日本に、「夢が持てない」と感じているのだ。こんな日本でいいのだろうか。
「ウチは、ゆるブラックにはならないから大丈夫」と思っていたら危険だ。実は、「ホワイト企業」を目指す会社ほど、「ゆるブラック企業」になりやすいからだ。
「働きやすい会社」ではなく、「働き甲斐のある会社」を目指してほしいとは実学の門などで何度も何度も言ってきた。その決定的な違いは、「自分の成長」「収入が増える」この二つがあるのかないのかだ。似ているようで全く違う。
本質を間違えてしまうと全てを間違える。社長は本質を見る目を持たなくてはいけない。
※本コラムは2023年9月の繁栄への着眼点を掲載したものです。