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第54講 クレーム担当者が疲弊しないクレーム対応の極意(3)

クレーム対応 実践マニュアル

初期対応で成功する法則 Part1:初級編(3)
(※エスカイヤニュース2011年12月号特集 寄稿文より)
 

5.成功するクレーム対応 初期対応7つの手順


さて、成功するクレーム対応には基本的に守って実践しなければならない手順や、言葉やツールがあります。ゴールは「理解をしてもらうこと」ではなく、「諦めてもらうこと」ですから、会社や製品・サービスを改めて気に入ってもらおうと無駄な説明や、過剰なお話しはしないこと。それは相手からすれば言い訳に聞こえるだけです。そして、あなたが目指すべきことは、自分を気に入ってもらうこと、ただこれだけ。そのことを前提に、お申し出者が快く引き下がってくれる対応を目指した、対応者のやらなければならない手順を述べていきましょう。この順序を守らなければ効果はありませんのでそのお心づもりで。


1) 好感発声の3原則(トーン・抑揚・カツゼツ)で『名乗り』をする

声のトーンは「ド・ミ・ソ」の音階の中の「ミ」の音階を使ってください。「ミ」の音階には聡明で冷静なイメージを相手に与えるといわれています。普段、自分が楽に話すトーンをドとして、少しテンションを上げる感じですね。さらに、抑揚をつけることで、優しそうで気持ちの豊かな担当者の印象を与えることができ、相手のあなたへの安心感を得ることができます。そして、カツゼツがはっきりしていると、信頼や頼もしいイメージを与えます。


2) 成功するか失敗するかはグリーティング(最初のあいさつ)の3段論法から

挨拶は、「(1)お礼+(2)お詫び+(3)問いかけ」の3つを重ねて言ってください。
例としては、
(1)ご契約いただきありがとうございます。それにもかかわらず、
(2)このたびは、ご不安な思いをおかけしておりますようで誠に申し訳ございません。
(3)もう少し詳しくお話をお聞かせいただけますでしょうか?

レジで計算間違いをしたようで、後でお客様が「釣り銭が足らない」と引き返してきたとします。そんな場合は「戻って来ていただいてありがとうございます。ご不安な思いを発生させてしまいましたようで申し訳ございません。もう少しその時の状況をお聞かせいただけますでしょうか?」と、釣り銭を間違っていることについては言葉に出さずにお礼とお詫びを言い、問いかけて相手に詳しくしゃべっていただくことです。


3) ラポール(心のかけ橋)のかかる相づちを打ちながら話を聞く

お客様が話している時に、相づちを打つだけです。会話の中でこちらに問いかけてくることも多いのですが、できるだけ答えないようにします。答えることは相手の話しを奪う事になるからです。
クレーム対応時の場合、相槌に「申し訳ございません」を言う事が多いと思いますが、これはクレーム対応を失敗させる対応方法ですので注意してください。「申し訳ございません」は一通話に3回までが限度です。4回以上は相手にとって逃げ口実のように聞こえてしまい、「謝ったら済むと思うのか!」に怒らせることになります。相槌には「申し訳ございません」以外の、『共感』『慰労』『賞賛』『やんわりとした拒否トーク』を使います。そうしていくうちに心理学でいうラポール(心のかけ橋)がかかり、お客様との距離が近づく現象を発生させることができます。つまりラポールのかかる相槌をあえて使い、お客様と少し仲良くなれる関係を作るのです。


4) 会話の前半の質問には質問をし、アクティブリスニング(積極的傾聴)

「苛立っている人の言葉は氷山の一角。本音は水面下に隠れている」と言われています。そこで、対応者はお申し出者の本音や、個人的なお困りごとや、こだわっている問題などをできるだけ早く理解するために、お申し出者の水面下にある情報や事情や感情を話していただく必要があります。そのためにはたくさんの話しをしてくるお客様に、しばしば『?』が最後についているかのような質問がたくさん、対応者に投げかけられますが、それには即答をしないことです。即答をしない代わりに、こちらから『質問に質問で返す』ことが、お客様の本音を知るために必要なテクニックです。この手法を「アクテイブリスニングをする」と言います。


5) 数字の入った仕切り直しトーク

十分話をしてもらい、何が不満なのか、困っているのか、その心情がある程度見えてきたら、今度はこちらの話す番です。そこで、お客様が一息ついたところタイミングをうまく使って、自分が話す番に回るタイミングを相手の気を悪くさせないで取ります。そのためのテクニックは「数字」が入った言葉を使うことです。


6) 簡単な説明と先取り効果で汗かき提案力を高める

クレーム対応は「お詫び」をし、「説明」をし、「提案」をして解決するものですから、お客様が話している間に「何を説明してわかってもらおうか」と考えるよりも、「何が提案できるだろうか」を考えてください。申し出者から催促される前に、自分の方からなにか小さな提案をする事が汗かき提案であり、上げた拳が下りるために力のあるものです。


7) クロージングの3段論法で「ありがとう」の一言がいただける

最後のあいさつにはお客様の自尊心が高まる言葉を必ず言う事です。
そのための言葉の組み立ては、「(1)導入トーク+(2)賞賛トーク+(3)マナートーク」です。
例としては、
(1)このたびはご連絡をいただき本当にありがとうございました。
(2)お話をお聞きしていて、大変勉強になりました。
(3)今後もお気付きのことがございましたら、ご連絡をくださいませ。本日は私、○△が承りました。失礼いたします。
ここではお詫びの言葉を入れてはいけません。一度鎮まった怒りの気持ちが目覚めてしまいます。


さて、あなたの会社ではどうですか。何故この人は怒っているのだろうか。商品を交換すると提案しているのに何をぐずぐず言っているのだろうか。そんな不可思議なお申し出者はクレーム担当者にとってクレーマーに見えてくるものです。しかし、相手にたくさん話しをさせ、水面下の事情を理解し、「ああ、こういうことで怒っているのか」と自分の中の不思議を自分で明快にすることが、失敗しないクレーム対応の為に必要です。担当者が抱く疑問を解き、自分がそのお申し出に納得をするまで誠実に話しを聞くことで、たとえ希望はかなえられなかったとしても、対応者がお客様に気に入られる可能性が高い。そして、ゴールでは「あなたが話しを聞いてくれたから。あなたに免じて」と言ってもらえる、自分にとって疲弊も吹っ飛ぶ、気持の晴れ晴れ結果を導くテクニックを使うことがクレーム対応者には必要だと思っています。

 

中村友妃子          

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