円安の影響を大きく受ける輸入商社でありながら31期連続で黒字。実質無借金、10年間離職ほぼゼロのホワイト企業、日本レーザー。
2020年には弊会から同社の仕組みを全公開した『中小企業の新・幸福経営』を発刊し、大反響をいただいています。今回は、著者 近藤宣之氏に、人手不足や、採用難、働き方の多様化に拍車がかかる時代に対応した仕組みづくりの要諦や、中小企業の戦い方などを伺いました。
※本記事は愛読者通信2024夏号に掲載したものです。パンフレットはこちらからご確認いただけます。
31期連続で黒字の要因はズバリどういったところにありますか?
経営には決して変えてはいけない「不易」と、時代に合わせて変えていくべき「流行」の両面があります。
厳しい経営環境の中で、日本レーザーが31期連続で黒字を達成できた要因は「社員の成長が会社の成長」という私の中の「不易」の信念が実を結んだことに他なりません。
昨今、終身雇用は時代に合わないと大企業を中心に人を切って利益を出す経営をやっていますが、リストラをせず雇用を守るなど、日本的経営の優れた点は維持しています。
一方、年功序列の給与体系はとっていません。年齢を重ねれば能力に関係なく給与が上がってしまうと、若手はやる気をなくします。また、再雇用やシニアも「60歳以上は一律いくら」ではやる気をなくします。詳細は書籍に書いていますが、毎期の成績や個人の能力に応じて給与が変わる実力主義の賃金形態をとっています。
また、能力に応じての給与という面で、TOEICの点数に応じて手当を出しています。
具体的には、800点以上は月給+3万円といったものです。TOEICは英語力に加えて、集中力や優先事項をとっさに判断する力も養われるので評価制度のひとつにお薦めです。受験費用は年3回まで会社で負担しています。また、社内で英会話教室も開催しているのですが、こちらの授業料の3分の2は会社が負担しています。
社員の成長には、社員教育が欠かせません。そのために毎年売上の1%、額でいうと4、5千万は社員教育に投資しています。さらに今は4つの教育団体に社員を派遣し、経営の基礎を学んでもらっています。また、海外出張の機会を営業員や技術員はもちろん女性の事務員にも与えています。
社員の成長のおかげで、他の中小企業であれば社長や部課長クラスが決断する商品の価格や為替予約を営業員個人に任せられるようになりました。任されたことで社員は高い当事者意識を持つようになり、イキイキワクワク仕事をしています。
これにより、規模の大きな総合商社がやっているような仕事を圧倒的少数でこなせるようになりました。
そうなると社長が新しいビジネスモデルとそれに伴う戦略を考える余裕があります。私自身、朝は5時台のモーニングサテライトに始まり、夜は海外の証券所と世界中の動向に目を配り、新たな戦略を考え続けています。
特に高収益ビジネスで重要なのは、価格政策です。中小企業は自社ブランドがなく、価格決定権がもてない。そのため1社の大企業に依存しているケースが中心です。これでは、儲かりません。
日本レーザーも輸入品だけでは限界があるからと、価格決定権のある自社ブランド品の創出に力を入れました。
ここで大切になるのは「アライアンス(企業間の提携)」という考え方です。自社だけでつくろうとするとどうしても技術や知識に限界があります。そこで、世界中の小さな会社や大企業からスピンアウトして一匹オオカミでやっている個人事業主など良い技術や商品をもっているところと組んで、自社ブランドの立ち上げに成功したのです。
具体的には、2019年にドイツの企業と合弁の形でオミクロン・メディカル・ジャパンという医療用のレーザーシステムの会社を立ち上げています。