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愛読者通信

社員の給料を上げても 総人件費は抑制する急所

「愛読者通信」著者インタビュー

大手企業を中心に賃上げ機運が高まる中、中小企業はどのように対応していけば良いのか。

そのヒントを地方の町工場を創業者の父と共に東証プライム上場企業に育てあげたスター精密(前)会長の佐藤肇氏に伺いました。

佐藤肇(さとうはじめ)氏について】

どんな経営環境でも社員の賃金を上げ、同時に高収益を叩き出す「財務のカリスマ」。

1951年静岡県生まれ。75年学習院大学卒業後、実父・誠一氏が裸一貫で創業したスター精密に入社。2009年代表取締役社長就任。父から受け継いだ経営ノウハウを「佐藤式先読み経営」としてさらに進化させ、実践。どんな不況にもビクともしない盤石な企業体質作りを経営戦略の中心に据え、「海外売上比率9割」「高収益・自己資本比率8割」の知る人ぞ知る超優良企業へと育て上げる。

社長業の激務のかたわら、地元静岡の若手経営者からなる「佐藤塾」をはじめ、弊会主催「長期経営計画作成合宿」「経営数字マスターコース」を主宰。2017年3月より代表取締役会長。2022年12月をもって会長を退任。現在は、佐藤マネジメント代表。

 

中小企業は、賃上げにどのように対応すれば良いのでしょうか?

まず、伝えたいのは、「マスコミの論調に流され、慌てて賃上げするのは厳禁」ということだ。

先日の日経新聞には、「賃上げ率2年連続で5%強」(2025年5月22日)という見出しが踊っていた。

仮に総人件費1億円の会社が、「世間ではこれだけ上がっているのか」と、このペースで毎年賃上げを続けてしまえば、1人も増員しなくても、5年後には人件費が2500万円も増加する計算となる。

これでは、下手をすれば営業利益がゼロになりかねない。

しかし、先ほどの記事は、上場企業ならびに有力な非上場企業2000社にアンケートを実施し、そのうち回答があった364社に過ぎない。日本には約360万社が存在する中、わずか364社のデータである。

マスコミは、インパクトのある数字ほど前面に出そうとする傾向がある。見出しだけを見て、慌てて追随せず、データのソースも確認して、冷静に対応することだ。

また、最近は「ユニクロや大手銀行が初任給30万円」という記事も目立つが、初任給の実態はブラックボックスで、特別な手当や残業時間が含まれている可能性もある。

まして、あなたの会社は、ユニクロや大手銀行と同じ土俵で戦う売上数兆円の企業というわけでもないだろう。

 

もっとも、物価の高騰、社会保険料の負担増など、社員を取り巻く環境が厳しさを増しているのも事実であるから、単に据え置きという態度では、社員の離反や採用難を招く恐れがある。

人件費は、経営コストの大きな部分を占め、しかも固定費である。それを毎年上げながら、利益を伸ばす。実に厄介な課題で、これは社長にしか出来ない仕事だ。社員の賃金を上げ、生活を向上させ、同時に経営の弱体化を招かない方策を社長として腹をくくり、知恵を絞って考え出さなければならない。

そのためには、自社の総人件費の「中身」と「質」について早急に見直すことだ。

決して大げさではなく、会社の生き残りをかけて「人件費の革新」が迫られているのである。

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