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愛読者通信

社員の給料を上げても 総人件費は抑制する急所

「愛読者通信」著者インタビュー

自社の人件費の「中身と質」をどう見直せば良いのでしょうか?

まず、やるべきは、自社の労働生産性を正しく掴むことだ。

労働生産性とは、年間付加価値(≒売上総利益)を社員数で割ったもので、社員一人当たりが生み出した付加価値の金額をあらわす。

過去5年の数字を並べて、もし労働生産性が下がってきているとすれば、儲けのわりに人の用い方が悪いということだ。つまり、稼ぎ出す儲けに対して、過剰あるいは割高な人員を配置しているということである。

労働生産性を高める方法は、
 ①付加価値を増やす
 ②社員数を減らす
 ③両方を実施する
の3通りしかない。

 

①のキーワードは、「事業の再構築」である。

中小企業の賃金は、「もともと少ない原資を少ない人数で分ける」のが鉄則だ。

だから、賃上げを考えるとき、儲けが少ないうちは、人を増やしてはならない。

そのためには、まずは「賃金原資」を増やすために自社の事業構造をリストラして、より儲かる分野を強化し、増益出来る体制を組むことが第一だ。

 

経営には、「攻める経営」、「守る経営」、「捨てる経営」の3つがある。

このうち、「捨てる経営」すなわち成長性が乏しく、利益率の低い事業や、商品・サービスから撤退することが、労働生産性向上の鍵となる。

「捨てる」という判断は、社長にしか出来ない。しかし、多くの社長は、売上が減ることを恐れて、捨てるべき事業を捨てられずにいる。

しかし、捨てるべき事業は、利益率が低いため、撤退しても利益には大きな影響がない。赤字事業なら、撤退によって利益は増える。そして、余剰となった経営資源、人員を収益性の高い事業へ投入すれば、企業全体の収益力は高まる。

スター精密では、3年連続で赤字が続いた事業は撤退する(捨てる経営3年ルール)という方針をとっている。

例えば、大型プリンター事業は、3年間赤字が続いたため、まだ40億円の売上がある時点で、捨てることを決め、そこから3年かけて完全撤退を果たした。

一方で、将来有望な小型プリンター事業を着々と育て、大型プリンター事業からの撤退が終わったころには40億円の利益を稼ぐまでにしておいた。この事業に撤退部門の人員を配置転換したので、リストラもしていない。

 

次に、②「社員数を減らす」を実践する際のキーワードは、「人の徹底的な見直し」だ。

たとえば、事務員が2人辞めたらすかさず正社員を2名募集・採用するのではなく、正社員は1人にして1人はパート社員にする。

これまで正社員がやっていた仕事を、思い切ってアウトソーシングするという策もある。

まして、今日はIT社会の到来で、製造や販売の現場から本社まで一元化され、省力化がますます加速している。人手不足が加速度的に進んでいくなか、人を抱えなければならない仕事の仕組みを、この機会に見直すべきである。

あるいは、ベテラン幹部が定年退職したら、同じ給料で人をひっぱてくるのではなく、若手社員を引き上げて、将来の経理・総務部長に育てる意識が社長には必要だ。

もちろん、いきなりベテラン幹部の技量を期待するのは虫が良すぎる話で、現部長の退職時期は何年も前から分かっているのだから、成長する時間を逆算して経験を積ませることだ。

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