menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

経済・株式・資産

第36話 習近平新体制が抱える4つの課題

中国経済の最新動向

 世界に注目される第18回中国党大会は、習近平総書記をはじめとする新体制の選出をもって幕を閉じた。よほどの事件がなければ、習近平体制は胡錦濤体制と同じように2期10年の長期政権となるだろう。
 
 党大会で採択された「活動報告」は、2020年時点のGDPと国民所得の水準を2010年の2倍にするという長期目標を設定している。年平均7%成長をキープされれば、この目標は達成できる計算である。
 
 筆者の試算では、向こう10年間、年平均経済成長率7%、インフレ率2%、人民元の為替レート2%高で計算すれば、2022年時点の中国名目GDPは米ドルベースで20兆ドル前後にのぼる。アメリカを凌ぎ、日本の3倍強に相当する世界最大の経済大国になる可能性が出てくる。日米欧先進国と違う政治制度を持つスーパーパワーの出現は、世界の政治・経済に与えるインパクトは計り知れない。習近平氏もアメリカを凌ぐ超大国のリーダーとして、その名を歴史に残すに違いない。
 
 しかし、これはあくまでも仮説の話であり、世界ナンバーワンへの道のりは決して平たんのものではない。新体制の前に横たわる一連の政治・経済の難題をクリアしなければ、中国経済は途中で挫折する可能性が十分考えられる。
 
 それでは、当面、習近平体制はどんな国内課題に直面しているだろうか?次の4つの課題が挙げられる。いずれも前体制が残される負の遺産である。
 
 まずは「政経乖離」の是正である。ここ10年、中国の経済改革が先行しているが、政治改革は進展なく停滞している。政治改革の遅れによって、政治の不透明、腐敗の蔓延、人権侵害、法律無視などさまざまの問題が発生し、経済成長の障害ともなっている。抜本的な政治改革をしなければ、持続成長が期待されず、経済成長の果実さえ失う恐れがある。政治改革を決断ができるかどうか?またどこまで改革できるか?習近平氏の手腕が問われる。
 
 2つ目は「国進民退」(国有企業が躍進し、民間企業が後退する)の問題である。金融、エネルギー、インフラなど一部の分野では、国有企業の独占が続き、民間企業の参入が厳しく制限されている。特にリーマンショック以降、中国政府は大型景気対策を発動し、その資金の大半は国有企業に流れ、民間企業が受けた恩恵は少ない。事実、アメリカの「フォーチェン」誌が毎年発表する「フォーチェン500社」リストに載る中国企業の数は年々増えているが、ほとんど国有企業である。こうした「国進民退」現象は市場経済に逆行するのではないかと、懸念する声が強まっている。国有企業ではなく、広汎な民間企業の躍進がなければ、経済の持続成長が難しい。「国進民退」をどう是正するかが習近平体制の重要課題となる。
 
 第三に、「外強内弱」(外需に強く依存し、内需が比較的に弱いこと)の転換である。2001年WTO加盟後、中国の輸出は毎年2、3割増となり、輸出牽引型で高度成長を遂げている。しかし、リーマンショックによって、2009年中国の輸出は一転16%減少に転落した。ユーロ危機の影響で今年の輸出も目標の10%増に届かず一桁にとどまる見通しである。中国の主要輸出先の日米欧はいずれ景気低迷が続いている。それに加えて、中国国内の人件費アップ、原材料高、人民元切上げなど輸出コストが急増している。輸出依存型成長は限界に来ており、内需依存型成長への転換が求められている。習近平体制はどんな内需振興策を打ち出すかが注目される。
 
 第四に、「官腐民怨」(役人が腐敗し、格差で国民の不満が募る)をどう解消するか。国民はいま最も怒りを感じる問題として、やはり役人の腐敗と貧富格差の拡大という二大「時限爆弾」が挙げられる。
 
 現在、中国では役人の汚職など腐敗現象が蔓延している。最近、党員除名・公職追放処分を受け、逮捕された薄煕来・前重慶市書記と劉志軍・前鉄道大臣の罪の1つは、巨額の収賄疑惑が挙げられる。また、今年8月筆者の出張先である山東省には、黄勝副省長が汚職疑惑で摘発された。彼は46カ所の不動産を不正取得し、46人の愛人ももつと、中国の「環球人物」誌が報道している。こうした幹部腐敗は個別の現象ではなく、社会風潮として蔓延している。国際透明度組織の発表によれば、2011年「世界清廉指数ランキング」で中国は182カ国・地域のうち、75位とランクされるが、主要輸出国12カ国のうち賄賂が一番横行している国とされている。「党と国家の命運にかかわる」(温家宝首相)腐敗問題に対し、習近平体制はどう立ち向かうか?どう国民の要請に答えるか?その力量が問われる。
 
 国民の不満の矛先は格差の拡大にも向けている。近年、高度成長が続く一方、貧富格差も拡大している。農村部、内陸部、貧困層の人々は、自分たちが高度成長からあまり恩恵を受けていないと、不平不満が募っており、農民暴動や反政府デモの形で爆発している。いかに格差を是正し、富の分配の公平さを保つか、またいかに成長と分配を両立させるかは、習近平体制の安定的な政権運営ができるかどうにかかわっている。
 
 要するに、習近平体制の前には難しい課題が山積し、厳しい試練が待ち受けている。これらの難題をクリアしないと、経済成長の持続が難しい。最悪の場合、習近平体制は空中分解する恐れさえある。

 

第35話 習近平体制の外交政策は「対米協調、対日強硬」か?前のページ

第37話 底打ちが確認された中国経済次のページ

関連記事

  1. 第135話 「李克強指数」で中国の景気回復を検証する

  2. 第116話 「ファーウィ排除」の勝者はファーウィか

  3. 第19話 経済減速が続く「巨艦」中国の次の一手は?

最新の経営コラム

  1. 第169回 「達人に学ぶ①アパホテル 元谷拓さん」

  2. 第4講 まず、担当者がお客様との正しい関係に合った対応をすること!

  3. 第19回 成長するフィンテック企業の戦略 ~ クラウドファンディング Makuake ~

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 人間学・古典

    第25回 背中で教える 光武帝の教育
  2. コミュニケーション

    第51回 資料に添えるひと言で他社と差をつける
  3. マネジメント

    第122回 『多くの転職は、負け始めである』
  4. マネジメント

    第26回 幹部社員の選び方
  5. キーワード

    第71号 北海道ガーデンショー
keyboard_arrow_up