技術伝承以外で、効果的だった身近なAI・デジタルツール活用の事例も教えてください。

デジタルツールによって、先ほどの事例のように難しかった数値化・見える化問題が次々と容易に解決できるようになりました。
例えば、カンタンで効果的だったのが熱中症対策の「数値化・見える化」です。
2025年もそうでしたが、暑さ(熱中症)対策というのが、どの企業でも喫緊の問題になっています。ファン付きの作業着の普及や、スポットクーラーの設置など、設備投資による対策も進んでいますが、結局は、現場リーダーの経験や勘に基づく注意喚起に委ねられています。
しかし、そのやり方だけでは、最近の酷暑には到底対応できません。
そこで、おススメなのが、熱中症計(湿球黒球温度計)の活用です。この温度計には、温度・湿度・輻射熱など複数のデータをもとに「暑さ指数」を計測し、危険値に近づくとアラートが鳴るという機能がついています。価格も1万円以下と安価です。
今までは曖昧だった熱中症リスクが数値化・見える化されたことで、社長や工場長は「この数値になったら作業を中断しよう」など、根拠をもって勤務体制をコントロールできるようになり、現場の社員も若手からベテランまで同じ判断を客観的にできるようになりました。
私の指導先では、この熱中症計の設置で、熱中症による労災事件をなくすことに成功しています。このように、社員が安全に働ける環境や仕組みをつくるのも社長の大切な仕事です。
他にも、色々な会社に応用できそうな事例としては、「Googleフォーム」の活用があげられます。私が指導している金属加工メーカーでは、材料や工具の受発注をめぐるトラブルが度々発生していました。
現場リーダーが必要品の発注を、手書きのメモや口頭で担当者に伝えていたため、メモの紛失、情報共有の遅れ、誰がいつ依頼したか曖昧になるといった問題が生じ、欠品や過剰在庫が頻発していたのです。本来であれば専用システムを導入したいところですが、大規模なシステムは費用も時間もかかりすぎます。
そこで着目したのが「Googleフォーム」でした。この会社では以前、社員食堂のお弁当注文も各自が掲示されたメニューを見て、希望を紙に書き、総務がそれを集計してFAXや電話で注文するという、非常に非効率な方法をとっていました。
現在はこれを Googleフォームによる集計方式に変更し、集計作業の手間もミスもなくなっています。そこで、この仕組みを材料や工具の受発注業務にも応用することにしました。
同様にGoogleフォームで注文フォームを作成し、現場リーダーはタブレットから必要品を入力・発注します。入力された情報はリアルタイムで購買担当者が確認できるため、連絡待ちのムダや発注ミスが大幅に減りました。さらに、Googleフォームの回答内容をスプレッドシートに自動連携したことで、過去の注文履歴を一目で確認できるようになり、工具の過剰発注なども未然に防げるようになりました。






















