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愛読者通信

「経営に奇策はない」
佐藤 肇氏(スター精密 代表取締役会長)

「愛読者通信」著者インタビュー

 リーマンショック後の世界不況にビクともしない高収益企業・スター精密。どんな環境下でも会社と社員を守り抜く鉄人社長・佐藤肇氏に、創業者の父から受け継ぎ実践する経営の定石についてお聞きしました。

佐藤 肇(さとう はじめ)氏

スター精密[東証一部]代表取締役会長(2017年3月より現職。2011年インタビュー時は社長)

実父・誠一氏が裸一貫で創業したスター精密に入社。父から受け継いだ経営ノウハウを、佐藤式先読み経営としてさらに進化させ実践。その結果、「海外売上比率8割超」「高収益・自己資本率7割」の超優良企業へと育て上げる。2017年3月より代表取締役会長。
著書に『佐藤肇 経営の決断101項』『社長が絶対に守るべき経営の定石50』『先読み経営』『社員の給料は上げるが総人件費は増やさない経営』『社長としての人件費計画の立て方』(共に日本経営合理化協会刊)

 

Q: 創業者の父から教えられた経営法が、時代を超える不変のものだと確信したのはいつ、どんなときですか?

 バブル崩壊以後の低成長時代を迎え、その真価をより強く実感している。とくに、スター精密は1994年、95年、2010年と、創業以来3回の赤字を計上しているが、いずれの場合も「先を厳しく読む」そして「不況時はとくにバランスシート(B/S)を大事に経営する」という父直伝の経営の定石に従ったおかげで、自信をもって的確な手を打つことができた。
 どちらも売上が大幅に減り、とくに2010年は、リーマンショック後の世界不況で需要が一気に冷え込み、740億円が2年で290億円に急減したが、徹底的にB/Sを圧縮して資本効率を高めることで利益率や自己資本比率が向上し、赤字以前よりむしろ会社の体質は強くなった。
 結果、いずれの場合も人件費・給与を一切カットすることなく、翌年にはV時回復を果たしている。 
 そもそも佐藤式の経営法というのは、中学しか出ていない、経営経験もない親父が、何とか安定的に会社を大きくしたい、自分の夢に協力してくれる社員とその家族をもっと幸せにしたいという思いで、掘っ立て小屋の町工場を東証一部企業に育て上げる中で必死に見出したものだ。
 そういう思いをベースに編み出した経営法であるから、時代を超えて、長期繁栄を築く不変性があるのだと私は思っている。

 

売上至上主義を捨てよ 

Q: いまのように景気が悪化していくなかで、経営者がとくに注意しなければならないことを3つ挙げてください。

 第一に健全性、第二に収益性、そして生産性の3つを大事に経営することだ。間違っても成長性を第一に追求してはならない。
 これはバブルの頃と真逆の順位だ。大体、バブル期までは成長性ありきだった。成長性を高めれば収益性も健全性もカバーできたから、毎年売上が伸び、社員が増える会社が良い会社と評価された。
 しかし、今はまず会社を潰さないことを念頭に置き、倒産の最大要因となる借金を減らし健全度を高めることを第一に考える。
 するとB/Sがスリムで筋肉質になり、総資本回転率が上がる。このやり方で健全度を高めれば、同時に収益性も上がってくる。
 また、収益性を上げるには、生産性の向上が不可欠である。とくにメーカーは設備投資の失敗が命取りになるから、社長は工場長から設備投資の要求が出た場合、今よりも設備生産性が上がるかどうかを必ずチェックしていただきたい。
 とにかく、売上至上主義で利益とキャッシュを犠牲にするような経営は厳に慎み、先を厳しく読んで身の丈に合った成長をしていかなければならない。それがこれからの経営の定石であり、もっといえば、いつの時代でも変わらぬ経営の本質だと私は考えている。
 いずれにしても、定石を無視した奇策で企業が伸びたためしはまずない。たとえあったとしても、それは一時の繁栄をもたらすだけだ。したがって、会社を永く繁栄させたければ定石を外さない経営に徹することである。

 

海外進出成功の3大鉄則

Q: ドル、ユーロに対して円高のメーカーは厳しい状況が続きますが、どのような手を打つべきでしょう? 

 海外に進出するよりほかない。わが社は年商20億円そこそこだった1960年代から、販路を求めていち早く海外進出を果たした。
 現在では世界中に14の販売会社と生産工場をもち、海外の売上が全体の8割を超えているが、その経験から中小企業の上手な海外進出のポイントを3つ進言したい。
 まず、第一ステップとして「モノを買う」ことから始めてみる。販売で何よりも難しいのは資金の回収である。律儀な日本人と違って、海外では平気でカネを払わないところもあるから、最初は客として商品やサービスを購買してみればいい。
 そのためには、実際に現地に赴くことだ。観光気分で良いから、気軽に市場をのぞいて買い物をしてみる。そうやって現地の空気を肌で感じることは非常に大事である。私も、必ず年に一回は欧米と中国、タイへ視察に行っている。
 第二に、「最初に取引するなら東南アジア」。というのも、東南アジアの人口というのは、欧州に匹敵するからだ。具体的に言うと、ASEAN10ヵ国の総人口は約5億人で、これはEU27ヵ国と同じである。
 すなわち、GDPの主要部分を占める個人消費のボリュームが、東南アジアと欧州は同等なのだ。
 ならば、時差が小さい東南アジアとの取引の方がオペレーションの負荷が小さいし、体格や顔立ちなど親近感がある方が心理的にも楽だ。以上の利点から、欧米よりもまずは東南アジア進出がよい。
 第三に「どこまで損をしていいか、明確に決めておく」。たとえば先行投資予算の枠として1億円と決めたなら、その金額まではトライし続ける。逆に、1億円を超しても成功の芽が出ないようならいさぎよく損切りして、違うやり方を考える。
 なぜかというと、失敗するパターンの多くが、結果が出ないとすぐにあきらめるからだ。しかし、海外に行ってすぐに儲けようなんて思う方が間違っている。
 そもそも、立ち上げから儲かる商売などない。最初の1~2年は赤字で、3年目からようやくトントン、4~5年目にやっと初年度の赤字を返して、ようやく6年目から利益に貢献しだすというのが、これまでの経験から言えば一番無理のない見通しであり、新規事業の定石である。
 だから、5年のスパンくらいでしっかり計画を立てて、予算を有効に使っていく。これらのコツを頭に入れて、海外進出に着手していただきたい。

 

 (聞き手/高橋悦子)

「愛読者通信」(2011年11月発行)掲載

 

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