※本コラムは2022年2月の繁栄への着眼点を掲載したものです。
先日、織物の会社の社長が、事業発展計画書の閲覧に来協された。
邪魔をしてはいけないと、挨拶だけしてその場を離れようとしたが結局話し込んでしまい申し訳ないことをした。お詫びに「少しでも時間の節約を」と近所の喫茶店にパスタの出前をしてもらい、会議室で食べてもらった。
着物の帯は決して無くなることはない。しかし使う場を増やすことは難しい。ならば帯をブランドにして、稼ぐ商品、新事業を固めていくしかない。これは何の業界でも同じだ。時流に合わなくなってきたら、「商品・サービス」「売り方」全てを大胆に変えることが必要だ。
長野県佐久市に無門塾の卒業生でシナノという会社がある。スキーのポールを作っている会社で100年企業だ。スキーブームにより一時は売り上げを伸ばしたが、その後のスキー人口減少で苦しかった時期もあったようだ。最近ではスキーだけでなく用途を広げてウォーキングポール、トレッキングポール、杖などの売上比率が伸びてきている。
シナノにはキャンプ好きな社員が多く、柳澤社長は「ウチはアルミのパイプを加工する会社だから。キャンプでこんな物があったら便利という物を作ってみないか」と社員に問いかけた。そこで商品化されたのが、キャンプ用品を吊るすための「キャンプ用ハンガーラック」だ。これが年間1億円売れるヒット商品になった。
「新事業を探せ」と言ってもこんなに難しいことはない。社長自身が考えても出てこないこともある。そうしたら後はお客様の困りごとを訊いてみたり、社員にやってみたいことを訊いてみたりするしかない。最後は「必ず出来る」という社長の強い想い込みだ。
織物の会社の社長にも色々と新事業の話をする。しかし、出てくる言葉がマイナスのことばかりなのが一番の心配だ。
「誰にやらせるのですか」「そんなこと言っても、ウチの社員、『どうせ成功しない』と言います」などと言う。これは社員の言葉ではない。社長自身の声ではないか。社長がこれでは成功するものもダメになってしまう。気を付けてほしいと伝えた。
「新事業進出は大胆にやること」とは書いたが、「大胆かつ緻密に」というのが正解かもしれない。たまに事業発展計画発表会でサプライズ的に新事業を発表する会社がある。ワンマン経営の会社に多いが、これは決してやってはいけない。新事業はサプライズでやるものではない。これこそ緻密にやるべきだ。
「数年後にこういう事業をやりたい」と、幹部会議で何度も会話し、それから初めて計画書に書き込み、そして発表会で全社員にお披露目をする。発表会までには幹部たちから社員に新事業のことは必ず伝わっている。それが幹部の役割だろう。そして新事業スタートに向け、「金」と「人」を載せていく。これがマネジメントではないか。
「人間は誰でも、本来、何事をも、自分が深く想い、考えたとおりに成すことが出来る。自分が、もし出来ないと思えば何事もできないし、出来ると信念すれば、何事をも成すことが出来る」繁栄も苦難も、成功も失敗も、全てが社長の心の中にある。「やるのか」「やらないのか」だけだ。
※本コラムは2022年2月の繁栄への着眼点を掲載したものです。