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ビジネス見聞録

「会社の健康を守り生産性を上げる法」/精神科医・作家 樺沢紫苑氏

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■樺沢紫苑(かばさわしおん)氏/(精神科医、作家)
1991年、札幌医科大学医学部卒業後、大学病院や総合病院、単科精神病院など8病院に勤務。2004年から3年間にわたり米国シカゴのイリノイ大学に留学。うつ病や自殺についての研究に従事する。帰国後、樺沢心理学研究所を設立し、健康づくりやメンタル疾患などの予防をビジョンに掲げ、書籍やYouTubeなどを通じて情報発信。YouTube35万人をはじめTwitterやFacebookなど累計70万人がフォローする。著書にシリーズ90万部を超えるベストセラー『学びを結果に変えるアウトプット大全』、『精神科医が見つけた3つの幸福』、『精神科医が教えるストレスフリー超大全』をはじめ40冊を出版、累計200万部。

※本コラムは、樺沢紫苑の経営講話「幸せの習慣化実践プログラム」発刊にあたりインタビューを編集したものです。




会社の健康を守り生産性を上げる

聞き手:
現在の日本の課題は人口減少と生産性の低下ということが言われています。ひと言で会社の生産性を上げると言っても様々な方法があります。また、会社を成長させようとしても採用も難しい経営環境が続きます。いまのスタッフで、低コストでも効果を出すためにはどんなやり方がありますか?

樺沢氏:
 ひとつは社員の健康があります。例えば睡眠不足になっているとパフォーマンスがものすごく下がります。社員が何時間寝ているかとか把握していない会社が多いと思います。潜在的に生産性が眠っているのです。本来100%のものが70%、60%しか力を発揮できていない社員さんがいらっしゃる可能性があります。

 例えば、夜中までゲームをしている社員が寝不足で会社に来ていたとしたら、それはマイナスですよね。だから、それは知識で予防ができることなので、睡眠不足をするとこんなにパフォーマンスが下がるんだとわかっていれば、じゃあ控えようと思う社員もいると思います。そういう生活習慣を知り、調整していくことが大切です。

 もう一つは、やっぱり一生懸命やりすぎるとメンタル疾患になったり、それで休職したりするという事です。休職するとチーム5人で回していたところが4人になったら、また次の人も具合が悪くなる。そういった問題が発生してくるので、パフォーマンスが高くストレスフリーで働いていくことが結果として会社やチームの生産性を高めていくために重要だと思います。

聞き手:
遅くまで遊んでいても、次の日も普通に働けると話す人もいますよね?

樺沢氏:
 夜中までお酒を飲んだりするみたいなね。遊びというものは、よい遊びと悪い遊びがあります。パフォーマンスを高める遊びと、パフォーマンスを下げてしまう遊びもあるんですよね。なので、睡眠を削ったりすることは非常によくありません。

 コミュニケーションを深めるためにみんなで飲みに行くのも重要なのですけども、例えば睡眠が著しく削れるとパフォーマンスを下げますということを知っているか知っていないかで違ってくると思います。知っていると予防はできます。ときどきハメを外すのはいいと思うんだけども、慢性的になるとそういうマイナスの効果も大きいと思います。

 あと、脳科学はここ10年、20年で進歩しています。例えば頭がよくなる。ほとんどの人は生まれた時の頭の良し悪しで決まると思っている人がほとんどでしょうけども、最近の研究では運動するとBDNFという物質が出て、脳というのは50代、60代になっても進化しているということがわかってきています。

 逆にいうと、睡眠や運動不足になると脳の働きが悪くなることもわかっています。ひと昔前の常識というのは実は間違っていましたというのが脳科学の世界でもあるんですね。ですので、パフォーマンスを高める方法というのもかなり確立されてきています。

 あらためてそういったものを知ってほしい。健康であるということとパフォーマンス。単に健康であるというのは病気にならないということではなく、それを突き詰めることによって今以上のパフォーマンスを皆さんが出せるようになる方法を知っていただきたいと思います。


多くの社員がパフォーマンスが下がった状態で働いている


聞き手:
例えば100のパフォーマンスを持っているけれども、健康の知識がない事で70とか60に下がった状態で働いている可能性があるということでしょうか?

樺沢氏:
 今の睡眠の話で言いますと、40代の約50%が睡眠6時間以下というデータがあるんですね。睡眠が6時間以下であると、パフォーマンスがものすごく下がっています。つまり、半分の人がパフォーマンスを下げた状態で働いているのではないかというのが私の仮説です。

 今回、解説したこのプログラムを実践すると下がっている部分を100に戻すだけなので、比較的、短期間に結果が出る可能性があります。そして、「アウトプット力を鍛える」というプログラムもやっていくと、100の人たちを110、120、130と伸ばしていくことができるので生産性の改善と向上をすすめることができます。

聞き手:
教材のタイトルに「幸せの習慣」という言葉があります。幸せを感じると人間はどのようなことが起きているのでしょうか?

樺沢氏:
 多くの方は幸せになりたいと思っています。私も幸せの本とか哲学の幸福の本とかたくさん読みましたが、漠然としてよくわからないですよね。私は脳科学の研究も長年やってまして、ある時、幸せってなんだろうと考えました。

 その時、脳の中でどんな脳内物質が出ているんだろうと思ったんですよね。研究していると、幸せを感じる時は、セロトニン、オキシトシン、ドーパミンという主に3つの脳内物質が出ています。

 セロトニンというのは健康の物質。オキシトシンというのは愛とつながりの脳内物質。ドーパミンは皆さまが幸せになるといった時に仕事での成功とかをお金持ちになるというのを考えると思いますが、それがドーパミンです。

 この3つの幸福。健康とつながりと成功、お金の幸福というのはおそらくほとんどの人の幸福のすべてだと思うんですね。これをそれぞれ脳内物質と照らし合わせて、『3つの幸福』という本を書かせていただきました。

 それは、仕事にも応用ができます。健康を維持してパフォーマンスを上げ、職場の人間関係やコミュニケーションなどを改善して、チームワーク力をよくし、最終的にパフォーマンスを高めて会社の業績を上げ、利益を高めていく。個人としても仕事にやりがいを感じる。社長も社員も幸せになれるという事です。

職場の人間関係を円滑に、アウトプット力も高める


聞き手:
 幸せを感じると会社組織にとってはどういう影響があるのでしょうか?苦しい、つらいというふうに思っている社員が多い会社と、それから、いや、この会社にいて幸せだな、仕事をしていて幸せだなと思っている会社とはどういう違いがあるんでしょうか。

樺沢氏:
 私は精神科医として患者さんをたくさん診てきた時に、「職場の人間関係が悪いです」と言う人が多いんですね。うつ病になった方とかも大体職場の人間関係を理由にあげる方が多いのが現実です。

 職場の人間関係が、もし非常に円滑なものになって、コミュニケーションが非常に取れると職場のストレスがものすごく減っていきます。人間の悩みの9割は人間関係と言われていまして、さらにその人間関係のうち職場の人間関係で病む人が多いと言われています。

 ですから、職場の人間関係を改善するとものすごくストレスフリーで楽しく働けるようになるんですね。楽しいという時にドーパミンという物質が出ます。ドーパミンというはモチベーション、幸福物質でもありますがモチベーションを高める物質であり、集中力を高める物質であり、記憶力を高める効果もあるんですね。つまり、楽しいと思いながら働くことでパフォーマンスというのは間違いなく上がります。

 一方で、いやいや働いたりするとストレスホルモンのコルチゾールというものが分泌されます。コルチゾールというのは脳の働き、モチベーションを下げて記憶力を下げて、むしろそれをやめさせようと働くのでものすごくパフォーマンスが落ちます。

 ざっくりいうと楽しみながら働く人はパフォーマンスが2倍になり、つらい、苦しいと思って働いている人はパフォーマンスが2分の1になるんですね。そうすると、比べると4倍くらい違う話になってくるわけですね。ですから、楽しいと思えるような職場づくり。それが今回のプログラムだとオキシトシン的な幸福を上げるようなプログラムが入っています。

 もう一つが「アウトプット力」を高めることがとても重要なんですけども、アウトプットというのは、話す、書く、行動するということなんですね。自分で思っていることを話したり、自分で考えていることを説明するというのが簡単ではない。

 いわゆる“ホウレンソウ”をしなさいと言っても、ホウレンソウをきちんとできていれば早々社内のトラブルとか大きなミスとかが発見されないで大事に至るということは本当はないはずなんですけども、意外とそういうものができていないというのは基本的にアウトプット力の問題だと思うんですね。

 アウトプット力というのは、誰かによってトレーニングされるということはないんですよ。今まで人生の中において、特別に何かスピーチ部に入るとかそういうことでもしない限り、あるいは文章がすごく好きだからすごく書いていますとかいうことをしない限り、普通に生活するとアウトプット力、話したり、書いたりする能力というのはトレーニングされないんですね。だから、基本的にほとんどの人はアウトプットが苦手なんです。

   私の調査でも人前で話すのが得意な人は15%くらい。85%くらいの人は人前で話すのが苦手ですという。つまり、アウトプットが苦手ということと考えてもいいと思うので、大体8割から9割の人はアウトプットが苦手なんですね。

 アウトプット力はトレーニングをすると1カ月でも上達するし、3カ月くらいやると本当に伸びていきます。なので、それができるということはコミュニケーション力が改善するということ。社内でのコミュニケーションが改善するということ。連絡がよく取れるということ。そういう色々なミスや行き違いとかが減るということですね。

 社員のアウトプット力が増えるということが一つの会社の生産性を高めることに間違いなくつながっていくと思います。あと、アウトプットをすると楽しいんですよ。自分の思っていることがそのまま相手に伝わるので、基本アウトプットは楽しいです。

 インプットというのは学校の勉強とかがインプットなのでつらいんですね。言われたことを言われた通りやるのはつまらないし、つらいんですね。アウトプットは楽しいので、その楽しいをシェアワークという形で当プログラムの中で盛り込みましたので、楽しみながらできるプログラムだと思います。

聞き手:
 上司の人しか発言しない会議というのは良くないということですね。社員がしっかりとシェアして話せるようにしていかないと能力も上がっていかないということですね。

樺沢氏:
 だから、普段の雑談みたいなものが活発化していないと、いざこの案件についてあなたの意見を言ってくださいといっても言えないわけですね。ですので、ちょっとした最近あった楽しいことを言ってくださいみたいな。

 本当に誰でもできる、誰でも答えられる簡単な練習ワークなんですけども、そういったものが普通にできるようになっていくといろんなことがアウトプットしやすくなっていくということですね。

聞き手:
幸せを経営に活かすことで、社員も社長も幸せを習慣化にする具体的なやり方はあるのでしょうか?

樺沢氏:
 幸福の脳内物質というのは先ほど主に3つあるとお伝えしました。ほとんどの人はいきなりドーパミンに行ってしまうんですね。だから、仕事で成功するとか、お金持ちになりたい、会社でいうと業績を上げろとか、利益率を上げろとか、そういう話になっていきます。

 結果というのはすぐに出ないですよね。ですので、思うように結果が出なく燃え尽きてしまう。あるいは、一生懸命頑張っているのに、なぜこんなに結果が出ないんだろうということで落ち込んでしまう。そこで仕事が面白くなくなってしまう。あるいは、メンタル疾患になる人もいるでしょう。

 重要なのは、セロトニンという健康の幸福。まず、パフォーマンス高くバリバリと働ける、心と体が健康でバリバリと働ける状態をつくっていく。さらに、オキシトシン的な幸福。つながりの幸福ですね。

 だから、個人として家族との関係がうまく行っているとか、人間関係がうまくいっていることも重要ですし、会社の中での職場の人間関係が円滑にいっている。お互いに助け合ったりするような雰囲気になっているかどうか。

 そういった部分があると、本来その人が持っているパフォーマンスを十二分に発揮することができます。いきなりドーパミンにいって、そういうセロトニンの幸福などがおろそかになっている。先ほどの睡眠不足になっている人は思うように結果が出ませんから。だから、結果としてどこかで挫折をしたり、燃え尽きたり、健康を害するということになるんですね。

 三角形のピラミッドで一番下がセロトニン、その上にオキシトシン、一番上にドーパミンが乗るイメージで、セロトニンとオキシトシンの部分は建物でいうと基礎、土台のようなものですね。

 それがしっかりすると、盤石であればそこにどんどん高層ビルを5階建て、10階建て、あるいは20階建ての高層ビルを積み上げていくことも可能です。ですが、ほとんどの人はセロトニンとオキシトシンの土台が不安定なのでどこかで崩れてしまうということが起きている人が多いんじゃないでしょうか。メンタル不全の人が出て、休職中の人が出るみたいなところはドーパミンを求めすぎて倒れてしまうという状態だと思うんですね。

聞き手:
体の健康を高めることによって集中力も高めて、生産性が上がるということがまず土台としてすすめることが大事ということですね。会社全体として取り組んでもらいたいですね。最後に社長の方々にメッセージをお願いします。

樺沢氏:
 会社に行くのが楽しい、仕事が楽しいという状況をつくれるとモチベーションも上がるし、生産性も上がるのは間違いありません。どうやったらそれができるのかというのが当プログラムの目的です。

 健康でさらに脳を活性化して、パフォーマンスを高めていくことと、アウトプット力を身につけて自分から考えて行動できるような社員を育てていくことが最新の脳科学的な知見、あるいは、私が精神科医としての30年の経験を詰め込んでつくり上げたプログラムです。

 毎回ワークというのが入っていまして、それをグループでシェアする。あるいは全体でシェアすることによってアウトプット力が確実に鍛えられるようなプログラムになっております。1、2巻目を社長やリーダーの方が聞いていただき、3巻目以降を朝礼や研修などで、1話15分を社員さんと一緒に聞いて、簡単にできるワークをするだけです。非常にやりやすいと思います。

 これからの時代は「自己成長」というのが一つのキーワードです。1カ月前の自分、3カ月前の自分よりも成長していることが実感できる。会社に来て、いろんな仕事をすることで自分が成長するということが実感できるということが、真の楽しく働くということですね。

 そういう会社であれば継続して、もっとここの会社で働きたいと思うし、もっと頑張って働こうというモチベーションも自然と湧いてくるので、非常によいスパイラルが起こってくるのではないでしょうか。会社が盛り上がってきますし、みんなで楽しく働いて、みんなで盛り上げていこうという雰囲気が出てくると思います。


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