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第36回(業態を組み合わせる)「MEATSHOPこしみず」

「社長の繁盛トレンド通信」

◆MEAT SHOP こしみず◆


「業態を組み合わせる」

 
 
 

JR宝積寺駅から徒歩5分のところにある店。
「肉とギターとオードブル」の文字が度肝を抜く

 

左を向けばこの通り、レアな中古ギターがズラリと揃う

     

入り口をくぐって左は肉とコロッケなどの総菜スペース

 
栃木県宇都宮市から電車で30分、高根沢町宝積寺という小さな町にある『MEAT SHOP こしみず』は、
おそらく世界で唯一の業態だ。

同店は「精肉店」でありながら「中古ギターショップ」でもある。

揚げたてのコロッケと並んで、状態のいいフェンダー・ストラトキャスターも"売れ筋商品"になっているわけだ。


「元は父親が立ち上げた純然たる精肉店でしたが、私が引き継いだ後すぐ、
1987年頃からギターを置くようになったんですよ」と、現オーナーの小清水邦治さんは言う。



学生時代からの音楽好きでアマチュアバンドも組んでいた小清水さんは、
店を継いだ後「このまま肉屋の2代目だけで終わる」ことに多少の不満を持っていたそうだ。
そんなとき元バンドメンバーと再会し「スペースがあるなら委託で中古ギターを売らないか?」と誘われた。
彼は宇都宮で中古楽器店兼音楽スタジオを立ち上げていたからだ。

そして店の一角を使い、売上の数%を得るリスクの少ない委託販売から中古ギターの販売をスタート。
以降、順調に顧客を増やし、今や近隣はもちろん日本全国から多くの客を集めている。
売上げもギターと肉でちょうど半々くらいだという。

コーヒーを楽しみながらゆっくりと本を物色できる「カフェ+書店」。
装飾品と同じテイストをインテリアにも持ち込める「アパレルショップ+雑貨店」。

世に数多ある複合店と比べ、「肉+ギターの店」は、そのメリットが一見見えづらい。
2つの取扱商品が、あまりにかけ離れているからだ。

ところが、それこそが同店の大きな魅力になっている。

"楽器店"は、やもすると敷居の高さを感じさせる。

商品を扱うためにはそれ相応の知識とスキルが不可欠なため「初心者だとバカにされるのではないか」
「知識が無いと不当に高いものを買わされるのでは?」と思わせるからだ。


一方で"町の肉屋"の敷居は限りなく低い。

夕食の準備をする主婦層にとっては毎日通い、2~3の雑談を交わす場。
また子供達にとっても、揚げたてコロッケやメンチカツがその場で食べられる肉屋は駄菓子屋のようなものだ。


つまり肉屋という日常的な商空間に取り込まれたギターショップは、
きわめて敷居が低くて入りやすい稀有な専門店として機能している、というわけだ。



現にコロッケを頬張りながら、ギターを物色する高校生の姿が見られた。
常連客も一見客もフレンドリーに接客され、ゆっくりとギター談義に花を咲かせていた。
リピーター率が70%に及ぶのも、こんなアットホームさによるところだろう。



もちろん「ギター+肉屋」という業態の珍しさに魅かれて遠方から訪れる客も多い。
「こんなユニークな店なら、掘り出しものの中古ギターがありそうだ」という雰囲気も漂っているわけだ。
意外な相乗効果もあり、『ライブイベントを開催するから…』と機材のレンタルと同時に、
打ち上げ用のオードブルを予約する客もいるという。



「何より二つの業態を持ったことで、仕事に対して気楽に臨めるようになったのが
私自身にとっての大きなメリット。リスク分散できますから」
(前出・小清水氏)



趣味性の高い商品を扱う店と生活に根ざした商品を扱う店。
ギターと肉に限らず、そんな組み合わせには意外なチャンスが眠っているのかもしれない。
また「自らの趣味をビジネスにしたい!」と考える人にとっても、
『こしみず』のスタイルは大きなヒントになるだろう。
(カデナクリエイト/箱田高樹)


MEAT SHOP こしみず
栃木県塩谷郡高根沢町宝積寺2374

TEL:028-675-0247

FAX:028-675-1072

http://plaza.harmonix.ne.jp/~kosimizu/

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