◆ippuku 淡路町店◆
「立場を見極め新しいビジネスを考案する」
今年の7月2日に東京千代田区のお茶の水、神田、淡路町の3カ所で有料喫煙所『ippuku』が同時オープンした。7月末の段階で1日あたりの利用客は3カ所あわせて1100人以上。早くも人気スポットとしての地位を獲得しつつある。
「ippuku」の利用料は1回50円。入口にはオフィスビルの「セキュリティゲート」のような扉がついており、「PASMO」か「Suica」をタッチすれば扉が開く仕組みだ。その他、1日入り放題の「1Dayチケット(100円)」「1Weekチケット(500円)」「1Monthチケット(1,800円)」があり、それらは入口横の情報端末で購入できる。
「『ippuku』を立ち上げたきっかけはアルタ前の喫煙所を見たこと」と不動産会社のゼネラルファンデックス株式会社企画本部本部長の日根野聰弥氏。あまりに大勢のスモーカーが集まるため、煙はモクモクと路上にはみ出し実質的に分煙になっていなかった。また、路上の狭い空間で密集するスモーカーの姿は、おせじにもかっこいいとはいえなかった。これでは、喫煙者はますます嫌われそうだ。そこで、喫煙者が誰にも迷惑をかけずにゆったりとタバコを楽しめる空間が必要だと強く認識したという。
そもそもの目的は分煙の推進なので、誰でも使える料金設定にしなければならない。喫煙者を観察すると、「まずコンビニで缶コーヒーを買って近くの喫煙所やビルの陰などで一服」というのが典型的なパターンだった。缶コーヒーの平均的な価格は120円。そこで中に70円のドリンクの自動販売機を設置し、入場料を50円、合計120円と缶コーヒーと同じ価格に設定したという。もちろん、中で飲み物を買う必要はないし、ドリンク類の持ち込みも可能だ。
価格を抑えるためには無人で運営する必要がある。入口にセキュリティゲートのような扉がついているのも、全ての支払いが「PASMO」や「Suica」なのもそのためだ。また、各灰皿の下には水が流れており、タバコを捨てれば自動的に流れていく。閉店時間5分前にはアナウンスが自動的に流れて時間がくれば自動的に施錠されるし、開店時間になれば自動的に開く。
無人で運営するためには利用者のモラルも欠かせないが、室内には禁止事項も要望は何も書いてない。「でも灰を落とした人はカウンターにおかれた雑巾で掃除していくし、ゴミを散らかしっぱなしにする人もいません。どんなに酔っぱらっても閉店時間にはきちんと帰ります。だから1日に1回掃除が入るだけですんでいます。もし、うちのが経営が成り立たなくなれば、喫煙者は再び行き場を失います。だからマナーを守ってくれてるのでしょう」(日根野氏)。
ところで、喫煙に限らず、ペット連れ、子供連れ、おひとりさまなど、シチュエーションによっては、誰でも弱者の立場に追いやられる。実は日根野氏は愛煙家。だからこそ、喫煙者の肩身の狭さに気づき、新しいビジネスを考案できたのだろう。弱者の立場に陥った時、それは大きなビジネスチャンスに遭遇したととらえれば、すばらしいアイデアが浮かぶに違いない。(カデナクリエイト/竹内三保子)
◆社長の繁盛トレンドデータ◆
「ippuku」淡路町店
千代田区神田須田町1-4-8 芙蓉神田須田町ビル
丸の内線淡路町駅 徒歩1分
都営新宿線小川町駅 徒歩1分
営業時間:6:00~24:00 年中無休
http://www.ippk.jp/
問い合わせ先:03-5812-7257
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