menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

マネジメント

中国史に学ぶ(1) 赤壁の戦いの真実

指導者たる者かくあるべし

 悠久の中国の歴史は、リーダーにとって教訓の宝庫であることに異論はないだろう。しばらく中国史をたどってみる。

                 ◇             ◇

 赤壁の戦い。魏・呉・蜀が覇を競い合う三国時代の入り口で、呉の孫権と、のちに蜀を建国する劉備の連合軍が長江沿い赤壁の地で魏の曹操を迎え撃って破り、天下統一にひた走る曹操に待ったをかけた一戦である。

 西暦でいうと208年11月。中国北部を手中にした曹操は、大軍を率いて南進し、荊州を落とし呉との境である長江に迫った。そして曹操は呉の若き三代目、孫権に手紙を送る。

 「これより水軍80万を率いてそちらへうかがう。一緒に狩りをしよう」。無駄に戦わず矛をおさめて降伏しろ、という脅しである。

 迎え撃つのは呉軍が3万、劉備軍が2万である。浮足立つ呉の幕僚たち。孫権は群臣たちを集めて評議を開いたが、口々に「多勢に無勢。勝ち目はない。ここで降伏を断ればさらに事態はこじれる」と降伏論を唱えるばかり。

 そこへ地方に使いに出ていた猛将の周瑜(しゅうゆ)が戻り、群臣たちを一喝する。

 「曹操は漢の帝室を支える丞相(じょうしょう)をかたっているが、実際は帝位を盗もうとする賊だ。呉は、その賊を除こうとしており、精兵も十分にある」。まずは「勝つ道理がある」と名分論で群臣を黙らせたあとで、勝算を語る。

 「まず魏は北方に反乱勢力を抱え背後が不安定だ。次に、南船北馬というではないか。彼らが得意の馬を船に代えて戦うには力はない。さらに、今は冬だ。主兵力を支える馬に食わせる飼い葉がない。これで三つだ」。指折りつつ曹操軍の弱点を数え上げる。

 そして最後につけ加えた。

 「魏の兵士たちは遠く北方から湿潤なここ南方まで駆り立てられてきた。この風土に馴染めず、必ず病気に悩まされている。曹操はこの四つの不利を押して戦おうとしている。いまこそ曹操めを捕らえる時だ」

 「私に三万の兵を預けられれば必ず勝ってみせる」。孫権は、周瑜の献策を聞き入れ出陣を命じた。そして意気上がる連合軍は数倍の敵を打ち破り北へ追いやったのである。

 〈それ未だ戦わざるに廟算して勝つ者は、算を得ること多ければなり〉(戦う前に敵と味方を比較計量して得られた勝算が相手より多いものが勝つ)

 「孫子」が説く、普遍の真理である。

 世の三国志ファンは、蜀と呉を連合させた蜀の宰相・諸葛亮(孔明)の外交采配、降伏と見せかけて、火をつけた船を魏の船団に放った「火攻の計」に胸おどらせる。だがそれは、講談調の物語世界の面白さにすぎない。 

 (書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

 

参考文献
『三国志1-5(原文)』陳寿著 裴松之注 中華書局
『三国志 きらめく群像』高島俊男著 ちくま文庫 
『十八史略』竹内弘行著 講談社学術文庫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

情報を制するものが勝利を手にする(17)ついに時代は李鴻章に追いつかず前のページ

中国史に学ぶ(2) 司馬仲達、戦わぬ名将次のページ

関連記事

  1. 逆転の発想(38) 君主なら敬愛されるより恐れられよ(マキアヴェッリ)

  2. 万物流転する世を生き抜く(28) ナポレオン、優柔不断な撤退の選択

  3. 危機を乗り越える知恵(18) 五分の勝利(引き分け)が道を開く

最新の経営コラム

  1. 第190話 少人数私募債を活用しなさい

  2. 第18話 テレワーク業務を評価するにあたっての課題と対応

  3. 第225回 「すいか泥棒」にはなるな

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 経済・株式・資産

    第40回 企業成長のために売上成長を目指さない経営:「ロック・フィールド」
  2. 経済・株式・資産

    第85回「上位企業をごぼう抜きにする力強い成長性」プリマハム
  3. マネジメント

    第85回 特別対談:株式会社トランビ代表取締役 高橋 聡氏(最終回/全3回)
  4. 人間学・古典

    第6話 「真の国際化とは…」
  5. 人間学・古典

    第12人目 「山口多聞」
keyboard_arrow_up