インターネット企業で私たちが接触頻度の多い存在として認識しているのは、アマゾン、グーグル、フェイスブックなどのいわゆるプラットフォーマーである。日本企業で言えば、楽天やYahoo!Japanなどとなる。一方で、パソコンやスマホでインターネットのサイトやアプリを見る度に高頻度でその企業の技術に触れながらも、その企業の存在感を一切意識しないサービスを提供している企業もある。そんな企業の1社が広告プラットフォームを開発したジーニーである。
インターネット上の広告自体は誰もが目にするもので、それはTVCM同様、自動車メーカーや家電メーカーなどさまざまな企業がスポンサーとなっている。そして、TVCMで放送を流しているメディアであるテレビ局に相当するのは、サイトやアプリの運営者となる。その場合、流れる広告に広告費を支払うのはスポンサーであり、これもTVとインターネットで差がなく、それを差配するのが広告代理店であることも変わらない。しかし、広告自体を配信するのはTVではテレビ局であるが、インターネットではサイトやアプリの運営者ではなく、広告ツールが自動的に広告を配信している。時代と共に徐々に制約は厳しくなってはいるが、視聴者が一斉に見るTVとは異なり、個々人が自分の都合で見るインターネットでは、その瞬間に見た人の嗜好や興味に合わせた広告が配信される。
インターネット広告にも様々な方式があるが、インターネット広告の主流の一つにRTBと呼ばれる仕組みがある。RTBはReal Time Biddingの略で、広告の表示ごとにオークション方式で最も高単価な広告を配信する仕組みで、リアルタイムにインターネット広告枠を取引できる技術である。
ジーニーが提供する「GENIEE SSP(Supply-Side Platform)」は、2011年に同社が開発したインターネットメディア等の広告収益を最大化させるプラットフォームである。インターネットサイトやアプリ上の広告枠を閲覧するユーザー毎に、このRTB技術によりオークション形式で選択された最適な広告を配信する仕組みであり、メディアの広告収益を最大化するものとなっている。同社では、国内外のDSP(Demand-Side Platform:後述)や広告ネットワーク等とシステム連携しており、広告取引(オークション)の参加者が多く、同社独自の広告配信最適化アルゴリズムによって、より効果的な広告配信を実現することで、圧倒的なシェアを獲得している。なんと、その配信回数は月間800億回ほどとなっている。これだけ多ければ、一人の人が毎日必ず最低でも複数回、同社の仕組みで配信される広告を見ていることになる。
SSPがインターネット上のメディアなどの収益を最大化するツールであるのに対して、DSPは広告主の利益を最大化するための広告買い付けプラットフォームである。「GENIEE SSP」等に接続することで、広告主のニーズに合わせて選択された枠へ配信することができる仕組みとなっている。広告枠は、インターネットユーザーの過去の行動履歴や購入履歴、位置情報等のデータに基づいて選択された、広告主にとって有望な見込み顧客と想定されるユーザー群の枠となる。
なお、そんな同社ではあるが、つい2年ほど前には赤字であった。これはこの広告プラットフォームビジネスのユーザーをベースにマーケティングSaaS事業を立ち上げていたためで、その先行投資がピークを越えた前期からは一気に過去最高益を更新している。
有賀の眼
ネット企業ばかりではなく、リアルの企業でも今やインターネットの活用は必要不可欠なビジネス手段と考えられます。その意味で言えば、メディアサイドから見ても、広告主サイドから見ても、同社の提供する広告プラットフォームは極めて有用な収益拡大手段のひとつと言えるでしょう。
まだ、十分にインターネットが活用できていないならば、リアルのビジネスとも最も親和性の高い、インターネット広告から研究してみることは、ビジネスの一段の飛躍には有効な手段となるかもしれません。