経理社員にもリスキリングが求められる
社会がデジタル化に向かう中、企業はDX (デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいます。
一方で、業務がデジタル化していくと、社員の働き方も変わっていきます。
そして仕事の変化に合わせて、社員に対して要求される知識や技能も変化していきます。
そのため、企業がDXを進めるにあたっては、社員のスキルの再構築と言われるリスキリングが求められるのです。
そこで今回は、経理社員のリスキリングについて、説明します。
御社はDXとリスキリングに取り組んでいますか?
⚫️経理事務は近い将来コンピュータに代替される
これまで経理社員に必要とされてきた主なスキルは、簿記の知識と会計ソフトなどのパソコン操作技能でした。
簿記は、取引を資産/負債/資本/収益/費用に分類し、借方と貸方の勘定科目に区分して記録するパターンの組み合わせです。
会社が年間に行う取引の種類は、多くても数万から数十万パターンですので、会計ソフトにすべての仕訳パターンを登録しておけば自動で処理できます。
またAIに業界の取引パターンを学習させておけば、新規の取引についても正しく会計処理をしてくれます。
企業会計原則や税法等のルールも最新のものに更新され、決算書や税務申告書も自動的に出力してくれるようになります。
同様に、経費精算や仕入支払、売上回収業務等の経理事務全般についても、AIを使って自動処理が可能となります。
今後5年から10年以内に、経理事務の99%以上が経理社員の仕事からコンピューターの仕事に置き換わっていくと言われています。
御社では、いつまで経理社員に事務作業をやらせますか?
⚫️経理社員がDXスキルを磨いて業務を効率化
企業がDXを進めていくにあたり、すべての社員にデジタル化のための教育が必要とされています。
経理社員も例外ではありません。
だからといって、経理社員がプログラミング言語を勉強して、難解なコードを書く必要はありません。
現在すでに、RPA(Robotic Process Automation定型業務をロボットによって自動化する仕組み)やクラウドサービスなどの便利なデジタル化ツールが提供されています。
経理社員がこれらのデジタル化ツールの機能や使い方を学習し、自社の経理業務で活用できるように組み合わせて取り入れていけばいいのです。
自社の経理業務の問題点は経理社員がよく理解しているので、デジタル化ツールを活用して的確に解決してくれることでしょう。
新しい技術を使って仕事を体験することより、経理社員はDXスキルを身につけるとともに、今後も社内業務のデジタル化で幅広く活躍することが期待できます。
社員のDXスキルの習得には、補助金や助成金が活用できますのでぜひ検討してみてください。
御社の経理社員は、IT分野に苦手意識を持っていませんか?
⚫️経理社員の会計スキルを事業部門で活用する
中小企業においては、大企業に比べて経営管理体制が不十分なところがあります。
特に、営業部門や購買部門、製造部門の幹部や管理職に会計知識が不足していることから、各部門の業績管理や予算編成などが弱い傾向にあります。
そこで、すでに会計知識を身に付けている経理社員が、事業部の業務内容や特性を理解して関わることにより、計数管理のレベルを上げることが可能です。
例えば、事業部門における損益分岐点比率の管理や商品別の粗利益率の管理など、経理社員が管理会計を勉強して自社の業種に適した管理方式を導入すれば、利益率の改善が見込めます。
また、 製造部門においては、経理社員が原価計算や稼働率の管理、在庫管理に参画することにより、数字に基づいた管理の徹底によるキャッシュフローの改善が期待できます。
このように、経理社員が現場に近い数字を会計知識に基づいて管理することにより、経営状態の改善に貢献できるようになるのです。
会計スキルに業務スキルを付け加えることにより、スキルの再構築が可能となります。
御社の幹部社員は会計知識に基づいた管理をしていると言えますか?
⚫️経理人材をリスキリングして育成し直す
今回は、経理社員のリスキリングについて、説明しました。
ポイントは次の3つです。
・経理事務はAI化して将来的に自動化される
・DXスキルを身につけて業務を効率化する
・会計スキルを現場で活用して経営に貢献する
これからDXが進んでいくと、既存のスキルが陳腐化していきます。
経理社員は簿記の知識だけでは確実に生き残れなくなります。
会社がDXを進めていくにあたり、並行して社員のリスキリングが必要なのです。
社長としては、デジタル化後に社員が行き場を失わないように、研修教育体制の見直しをしてください。
デジタル時代に適応できる人材育成は欠かせません。
御社の経理社員には、DX後にどの分野で活躍してもらいますか?