元切り上げ、金融引き締め、日米欧経済の不確定性などによって、2011年の中国経済は減速するだろう。ただし、個人消費が堅調なため、失速する懸念がなく、9%成長は可能。
2010年政府のインフレ率を3%以内と目標したが、実際、6月から7ヵ月連続で大幅にオーバーした結果となった。11年もインフレ昂揚が続き、通年では4~5%になるだろう。
インフレ昂揚の一因は不動産バブルにある。実際、2010年2月から7月まで6カ月連続で住宅の価格上昇率が10%を超え、明らかにバブル状態となってい る。住宅バブルを抑制するために、政府は住宅ローンの規制強化、金利や預金準備率の引き上げなど金融引き締め政策を取っている。従って、住宅価格の調整局 面は当面続く見通し。ただし、来年末から再来年にかけて住宅価格は再び上昇に転じる可能性も否定できない。
インフレ昂揚になれば、国民の生活に悪影響を及ぼしかねない。特にインフレ率が8%突破すれば国民の不満が一気に高まり、社会不安に繋がる恐れがある。インフレを抑制するために、金融引き締め政策が一層鮮明となり、通年では2~3回の金利引き上げはあり得る。
インフレ対策の一環として、2011年に7%前後の元切り上げが予想される。ただし、次の2点に注意が必要。1つは、急激な上昇がなく緩やかな元高となる こと。2つ目は外圧ではなく中国が自主的に行うこと。仮に米国から強い圧力があった場合、それは逆効果となり、5%前後の上げ幅にとどまることになる。外 圧に屈した形の元切り上げはない。
第12次5カ年計画(2011-15年)は経済成長より民生重視の姿勢が打ち出される。国民所得増と生活水準の向上で、伸びる個人消費は最大の成長ファクタとなる可能性が出てくる。
2011年に幅広い個人所得減税が実施される見通し。消費の刺激効果は期待される。
2010年の新車販売台数は1800万台を突破し、人類史上最大を記録する見通し。2011年個人所得の増加が追い風となり、新車販売は2000万台にのぼることが予想される。
世界最速・最大規模を誇る中国高速鉄道は、国内ではさらに拡大する一方、高速度、低価格、短工期の攻勢で海外受注獲得へ。日本の新幹線技術と激しく競り合う展開になる。
金融引き締めへの警戒感や09年上海株価指数80%上昇に対する反動もあり、10年中国の株価は調整局面が続き、比較的に低迷だった。11年には個人所得減税、上海ディズニーランドの着工など明るい材料が多く、株価は再び上昇局面に転じる可能性が大きい。