今のように顧客のニーズが日々変わる世の中では、経営理念が現実的なものでなくてはなりません。
なぜなら、経営理念が現場仕様、つまり現実に即していないと、経営者という指揮官のもとで働いている実感が沸かず、現場士気が向上しないため、社員は顧客の変化(声)に対応しようとする情熱を持ち続けることができなくなるからです。
理念とは、最高の理想と、ある辞書では訳されています。本来経営者は、理想を現実にするため理念をつくったはずですが、多くの経営理念が現実に沿わない理想となってしまっているのです。
では会社の経営理念(会社が存在する意味)を、どのようにすれば現実の世界に落としこめるのでしょうか?
今まで私が訪れた日本と世界の数百にのぼる優秀企業は、多くの会社が「企業文化」という言葉を口に出し、それが社員を束ね、売り上げをアップさせています。
例えばそれはユニクロが、“現場主義”という理念を掲げ、理念を現場に浸透させることで、企業文化を育み、それを会社に根付かせることで企業風土を構築し、成長していることからも証明できるでしょう。
ステップ1~今しかない~
経営理念は、会社が何のために存在するか?という理由を、世の中に対して、経営者が言語化したものです。だから、その中に、“今しかない”という言葉が、直接挿入されることはありません。しかし、“今しかない”というキーワードを経営理念から導き出すことができれば、それは売り上げという現実に必ずつながります。
1・売り場で顧客に話しかける
・・・お客さまの意見を直接聞き、限定商品を決める
2・売り場で商品を陳列する
・・・お客さまの興味を直接見て、限定商品の陳列を決める
3・売り場で商品を整理する
・・・お客さまの反応を直接感じ、限定商品の配置(棚)を決める
ユニクロの共通の言語<整理整頓>は、日本人が日本語を使うように、ユニクロだけで伝わる当たり前の伝達用語であり、それはユニクロ独自の文化(共通する価値)を育み、会社に根付き、風土となっています。
同社は、先述の仕組みを、<整理整頓>という共通言語を介して日課として取り組み、経営理念を現場に浸透させることで、売り場で働く人のベクトルをそろえ、そこから何を実践すれば、お客さまが商品を欲しくなるかという情報を収集し、もう欲しいものはない日本で、売り上げ(購入率や客単価)をアップさせているのです。
経営理念から湧き出した経営者の思いは、それが企業文化となり、風土化することで、働く人を一つにまとめることができます。他社は、同じことを共有することで育まれ、根付いた企業風土を、他社は決して真似る事ができません。
だから経営理念を、企業風土までリンクさせ、それを戦術化すれば、オンリーワンになることが可能となるのです。