このなか、同じ清華大学OBの朱鎔基前首相の動静は特に注目される。1951年に清華大電機学部を卒業した朱氏は、1984年に当時国家経済委員会の副大臣を務めながら同大学経済管理学院長を兼任した。その後、上海市長、書記、副首相、首相を歴任しながらも、2003年まで約10年間にわたって院長の兼任を続けてきた。母校に対する朱鎔基氏の深い感情は容易に想像できる。
2003年3月に朱鎔基氏は首相のポストから退き、以降、「一介草民」と自称し、「不在其位、不謀其政」(そのポストにおらぬものはその政治も謀らず)の姿勢を崩さず、公の場に一切姿を見せずに「隠居生活」を続けてきた。
ところが、彼の母校成立100周年記念の前々日の4月22日に、84歳の朱鎔基氏は清華大学経済管理学院を訪れた。学生たちの熱狂的な歓迎を受けた朱鎔基氏は、その人気ぶりは今も健在のようだ。
清華大学にいる知人から入手した情報によれば、朱鎔基氏は学生たちとの会話集会での談話の中で、次の2点が特に意味深長で注目されている。
一つ目は、大学生たちに対し、「『真話』(本当のこと)、『実話』(事実のこと)を言うべきであり、嘘の話、大げさの話、空論ばかりの話をすべきではない」と強調した。
二つ目は、「お金を義務教育、基礎教育に投入すべき」と指摘し、「日本大地震の際、大混乱の状態においても子供たちでさえ冷静に対応した。国民の素質の向上は、(日本のように)義務教育に力を入れることから始まらなければならない」と強調した。
一部の中国人は有頂天になり、自信過剰や驕りなど傾向が出ていることも事実である。朱鎔基前首相はこうした傾向を心配・警戒しているようである。