スーパー銭湯はこの10数年で全国に約600店に拡大している。全体的にスーパー銭湯の入場者数は横ばいか減少傾向にあるが、さまざまな再生手法で活性化への方向転換をしている施設も少なくない。そういう中にあって、スーパー銭湯の「雄」ともいえる存在の虹の湯グループは、参入の歴史も旧く、集客力と運営力の強さは業界で群を抜いている。
スーパー銭湯の7割が赤字経営、残り20%が収支トントン、勝ち組はわずか10%という厳しい指摘をする専門家がいる中で、スーパー銭湯のリーディングカンパニーの虹の湯グループが、新しい温浴施設を打ち出した。運営会社の株式会社アールアンドビー(本社・奈良県上牧町)は5月23日、グランドオープンした「虹の湯 大阪狭山店(プライベートスパリゾート)」を開設、早くも注目を集めている。新しい潮流が動き出した、と業界関係者は指摘する。
織物工場の跡地であり、温浴施設が実現する絶好の好立地というわけでもないが、さまざまな条件をクリアして建設された今までにない画期的な温浴施設である。施設は大阪府大阪狭山市東野にあり、外観を見た地域住民は「この施設はホテルですか」と異口同音に質問するほど、従来の温浴施設のイメージと異なっている。
「ひと口では表現しにくいが、スーパー銭湯並みの低料金で、非日常が味わえ、癒し効果の高いスパリゾートです。日本のトップクラスの玄子邦治氏(商空間デザイナー)との出会いから実現した心と体をリラックスできる施設、おもてなしの心を提供するスポットです」と大原義洋氏(代表取締役会長)。
目玉は、天然温泉を活用した高さ10メートル、幅40メートルの大滝(すべての入浴シーンから滝を望むことができる)、虹の湯自慢のスィートルームのような家族風呂(個室貸切8室)である。「とにかく、滝を眺めながらの入浴は贅沢そのもの」と好評。信楽焼の壷風呂(炭酸泉・美泡浴)も珍しい。
大原会長はスタッフに対し、「目配り、気配り、心配り」と「客の目線で行動しろ」の檄を飛ばす。目に見えるサービスと目に見えないサービスで、どこまで接客力を上げるかがリピート客を獲得できるかである。虹の湯が常に心がけてきた「満足と感動」を与えられるかにさらに挑み続ける歩みが始まっているのだ。
=終わりに=
「社長の口ぐせ経営哲学」が100話で終わることになりました。約9年間、長きにわたる連載コラム、お付き合いいただき誠にありがとうございました。経営の舵を取るリーダーの戦略はますます重要な側面を持ち、日々、変化する現場の最前線での方向性を決定する手腕が問われています。
「経営者の現場での口ぐせは生きた戦略であり、活性化の糸口になる」というコンセプトはますます、今後クローズアップされると確信致します。グローバル化する世界経済の中で、知恵のある企業の舵取りの必要性に迫られている現実がある。各企業の今後の活躍を期待しながら、希望ある経営を目指したいものである。
上妻英夫