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採用・法律

第110回 株主総会における問題株主対応

中小企業の新たな法律リスク

株主総会の妨げとなる問題株主への対処法

伊藤社長はスーパーマーケットを営んでいます。近年、定時株主総会に元社員のOB株主が出席して、議題と関係のない発言を繰り返す、大きな声を上げるなど、議事の進行に支障が生じるようになりました。そこで、今後、どのように対応したらよいのか、伊藤社長は賛多弁護士に相談しました。

* * *

伊藤社長:当社はスーパーマーケットを営んでいます。当社は、元々、親族で始めた会社です。しかし、先代が「会社は従業員のためのものだ」と考えていた時期があり、経営幹部の何人かに株を持たせたようです。先代が生きているうちは、何も問題がなかったのですが、先代が亡くなってからは、社長である私に対し、過去の経営に関する不満をぶつけられることが増えてきました。近年は、定時株主総会に何人かで連れだって出席して、過去の待遇や退職金の金額についての質問を延々と繰り返してきます。時には大きな声を上げて罵声を浴びせられることもあります。今後、どのように対応したらよいのでしょうか。

 

賛多弁護士:かつては今ほど株式の重要性が浸透していなかったため、御社のように親族や従業員で株式が分散している会社も珍しくありません。株主が友好的であれば何も問題はないのですが、株主の中には、今回の御社のケースのように会社に対して敵対的になり、株主総会の場で社長を詰問することもよくあります。ただ、この場合、最も重要となるのは、「株主総会は何のために開かれるのか」という点です。伊藤社長は、どのように思いますか。

 

伊藤社長:そうですね、当社では毎年の定時株主総会では、株主に対して、当事業年度の事業報告をして、また、当事業年度の決算の承認をしてもらっています。そうすると、事業報告と決算承認のために開かれているといえるのではないでしょうか。

 

賛多弁護士:そのとおりです。厳密にいえば、株主総会は、目的事項として定められた「報告事項」と「決議事項」について審議する場です。逆にいうと、それだけを審議すれば十分であり、それ以外について審議する必要はありません。

 

伊藤社長:なるほど、株主総会とはいえ、株主がその場で好きなことを議論できる場ではないのですね。株主である以上、株主の発言には1つずつ、真摯に回答しなければならないのかと思っていました。

 

賛多弁護士:株主総会では、基本的には、会社が招集通知に記載した目的事項、つまり、議案について審議すればよいため、それに関係のない株主の発言については取り上げる必要はありません。御社の元社員のOB株主からは、過去の待遇や退職金の金額について延々と質問がなされるとのことですが、これが株主総会の議案と関係があることはないでしょう。そのため、議長としては、そのような質問に対しては、「本総会の議案と関連性がないため、回答は差し控えます」とだけ言って、正面から取り合わないこともできるのです。

 

伊藤社長:それは心理的にかなり楽になりますね。例年はその手の質問でかなりの時間をとられていましたので、本来、株主との間で議論すべき議案に集中できそうです。

 

賛多弁護士:それはよかったです。ただ、先ほどお話したとおり、株主総会では、基本的には、会社が招集通知に記載した議案について審議すればよいのですが、裏を返すと、招集通知に記載した議案以外の議案を当日、会社が一方的に追加して審議をすることはできない、という点には注意してください。

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