和風旅館からスタートした株式会社龍名館(東京・神田駿河台)は創業が明治32年という老舗企業である。現在、旅館、ホテル、不動産経営の事業を展開している。「旅館龍名館本店」は純和風の客室(12室、30名収容)を持つ老舗旅館である。全室数寄屋造りの畳で都心では珍しい和風旅館。3割が外国人客という、リピート客が多い旅館である。朝食も和食のみ。以前、芸術家の常宿ということもあり、いくつか作品を飾っている。
3年前に建てた「ホテル龍名館東京」は東京駅の駅前の高層ビルの15階にロビーのあるシティホテル。標準的な広さの客室に最新設備を凝縮した機能的なホテル(130室、180人収容)で、ビジネスクラスでトップレベルのクオリティーなホテルというレッテルを貼られている。次世代のビジネスホテルとも呼ばれている。
系列の店として、「花ごよみ六本木」「花ごよみ東京」「和食けやき」のレストラン部門を持つ。同社はサービススタッフの基本姿勢について大きく四つの項目を掲げ、積極的に実践している。一つ目は「おもてなしの心が私たちの仕事です」。二つ目は「お客様が第一です」。三つ目は「基本的な作業を守りましょう」。そして、四つめは「効率のよいビジネスを心がけましょう」である。
老舗企業が最も重要視しているのは、サービス業の原点である“おもてなしの心”を最も重要視している。お客様のニーズに答えるきめ細かいサービスを提供している。現在、東洋と西洋のそれぞれの洗練されたサービスを融合させた“おもてなし”で、国内外のお客様に利用されている。
社訓に「人の和」を掲げている。浜田敏男社長(58歳)は「事業の基盤は人にあります。先代から引き継いで『人の和』こそ、最も重要なキーワードです。ホスピタリティの商売で最も大切なことが「人の和」です。絶えず、このことを言い続けています」という。もう一つは、できるだけ現場にいて、お客様の要望を聞き取るように心がけているという。
「人の和」は従業員同士、お客様と従業員の関係も含めて、重要なキーワードと捉えている。「今は、お客様の気持ちを先取りして手を打つ。つまり、心遣い、おもてなしが最高の満足度につながっていきます。従業員にもよく言うのですが、“サービス業は人が良くなければ務まらない”と言っています」(浜田社長)。同社のおもてなしに目が離せない。
上妻英夫