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人間学・古典

第86講 「帝王学その36」
林深ければ鳥棲み、水広ければ魚遊ぶ。仁義積もれば、物自らこれに帰す。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学


【意味】
林の茂み(懐)が深ければ多くの鳥が生息でき、川や池の水(懐)が広ければ多くの魚が回遊する。(君主と臣下領民の関係も同じで)君主の懐が大きく仁義の心で治世を行なえば、全ての物事は自然に治まる 。



【解説】
「貞観政要」のにある太宗の言葉です。
古今東西を問わず、トップの下には異なる思惑を持った多くの臣下・部下が集まります。放っておけばバラバラの人心が暴走しますから、トップは人心を統御し一つの組織にまとめなければなりません。人間学では、このまとめる威厳力量を「トップの人物器量」といい、臣下・部下から慕われる人気度を「トップの人徳魅力」といいます。
器量や魅力といっても抽象的で捉えにくいですから、名著といわれる人間学の書物では様々な角度から解説をしています。

まず日本の人間学の名著:言志四録では、「聡明にして重厚、威厳にして謙沖。人の上たる者はかくの如くなるべし」と、総合的な要素から君主像を述べています。
「人の上たる者」とは、古では皇帝や宰相であり、現代では首長のトップ、企業の社長や各種団体の責任者などとなります。「聡明」とは一般的な頭の良さに正しい判断力が加わったもので、「重厚」とは重々しくて落ち着きがあることです。「威厳」とは堂々とした風格で、「謙沖」とは謙虚で偏った性格でないことです。

一方中国の名著:論語では、「命(天命)を知らざれば、以て君子(君主)たること無きなり」となります。格調高い政治姿勢を求める儒教(孔子思想)では、天命を理解できない者は、立派な君子(君主)ではないと断言しています。
天命とは、天地の創造主である天帝からの命令で、この天命を天の子たる君主が遵守して人民を統治することになります。しかし天帝は神のような存在で人間言語を話しませんから、天子は修行により自分の受信水準を高め、以心伝心で天命を拝受することになります。拝受できない天子は、君主の昇進試験に落第です。(注:以心伝心とは、言葉表現できない師匠の深い真理領域を、弟子が自分の心の水準を高めて感じ取ることです)

中国の史観からの政治手法には、力でもって人民を支配する覇道政治と、慈愛で人民を包み込み人民からの信頼を基にする王道政治があります。覇道政治は、多くの場合、前政権を倒した武力をそのまま新王朝の人民に向けた威圧的な政治ですから、比較的短期間に導入できる手法です。一方、王道政治は人民からの信頼が前提となりますから、皇帝の人物修行が鍵となり時間がかかる手法です。唐の太宗が名君たる評価は、人民威圧型の武人を人望獲得型の君主に切り替えることができたからです。「貞観政要」が帝王学の名著たる人気を得ているのも、この辺りに秘密があります。

掲句に「仁義積もれば、物自らこれに帰す」とありますが、仁とは「人偏に二つ」の意味から相互に思いやること、義とは誰もが納得できる道理をいいます。仁と義に則った政治をできる君主ならば、全ての物事が自然に治まるということです。

 

杉山巌海

第85講 「帝王学その35」 上智の人は、自ら染まるところなし。ただ中智の人は恒なく、教えに従いて変ず。前のページ

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