menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

ブランド

<事例―26 アンリ・ルルー(B2C)>世界で唯一キャラメリエ(キャラメル職人)の称号を受け、塩バターキャラメルを考え出した…それがアンリ・ルルーだ

酒井光雄 成功事例に学ぶ繁栄企業のブランド戦略

26.jpg

 
 ●C.B.S.という塩バターキャラメルを考案した、世界で唯一のキャラメル職人(キャラメリエ)がアンリ・ルルー
 
 アンリ・ルルー氏はフランスのブルターニュ出身の菓子職人で、ブルターニュのキブロンに1977年「Le Roux(ルルー)」という名の店をオープンさせた。ルルー氏は当時チョコレートの先進国だったスイスの製法をフランスに伝えたチョコレート職人(ショコラティエ)で、この店はチョコレートとアイスクリームを中心に販売していた。そこで地元の人に愛されるオリジナルの商品をつくろうと考え出したのが、「C.B.S.」という名の塩バターキャラメルだ。
 
 C.B.S.とは、Caramel au Buerre Salé(キャラメル・ブール・サレ 塩バターキャラメル)の頭文字から命名されたもので、ブルターニュの名産であるゲランドの塩を使用した有塩バターを生地に練り込み、「指にはつくが、歯にはつかない」というやわらかいキャラメルをつくり出した。砂糖や水あめをほとんど使用せず、甘さのなかに感じるほんのりとした塩味が売り物のキャラメルだ。
 
 当時フランスでは塩を菓子に使うという習慣がなく、甘さの中に塩を効かせた独特の味わいが斬新だと受けとられ、パリでも評判になった。雑誌「ELLE」や食の雑誌「ゴー・ミヨ」などに紹介されたことで、「アンリ・ルルー」は一躍注目されることになった。
 
 こうしてルルー氏はチョコレート職人(ショコラティエ)としてだけでなく、世界で唯一のキャラメル職人(キャラメリエ)としても、その名を知られるようになる。
 
 ●2006年に㈱ヨックモックが買収
 
 2005年に東京の伊勢丹で開催されたチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」でアンリ・ルルー氏と㈱ヨックモックのコラボレーションが企画され成功を収めた。これが縁となり、2006年に㈱ヨックモックはフランスで「アンリ・ルルー」ブランドを展開するLe Roux SARL(ル・ルー・サール 菓子の製造販売会社)を買収し、同社の下で事業を展開することになった。同社の傘下になった2008年に、フランスのランデヴァンに新工場を建設し生産体制を強化している。
 
 創業者のアンリ・ルルーから現在は二代目のシェフ、ジュリアン・グジアンを筆頭にした職人たちによってその技術が継承されている。
 
<アンリ・ルルーの事例に学ぶこと>
 
 これまで日本では製造業を中心に自社でブランドをつくり、事業を展開する企業が多かった。しかしこの事例のように他社が持つブランドを買収によって入手し、自社ブランドとして展開する企業も現れ始めている。
 
 ブランド価値を高めるには、どうしても時間とコストがかかる。そのため資金力のある企業なら買収によって「時間をお金で買う」発想もある。しかし買収後はブランドマネージメントを上手く行えるかどうかで、その成否が決まることになる。
 
 海外に市場を広げているヨックモックなら、「アンリ・ルルー」のブランド価値は十分理解しているはずだ。同社が入手したブランド資源をどう活用するか、ぜひ注目しよう。
 
 
 
 
 
《 酒井氏渾身の最新刊!》
●全史×成功事例で読む 『 マーケティング」大全』
 
《 酒井氏 好評既刊》

●価格の決定権をもつ経営

●ストーリービジョンが経営を変える

●中小企業が強いブランド力を持つ経営

<事例―25 マルト長谷川工作所(B2C)>国内と北米市場でプラスチック用ニッパーのトップシェアを誇る…それが㈱マルト長谷川工作所だ前のページ

<事例―27 クリスマス・イブ(B2C)>30年連続でトップ100にランキング入りしているコンテンツブランド…それがクリスマス・イブだ次のページ

JMCAおすすめ商品・サービスopen_in_new

関連記事

  1. <事例―16 和歌山電鐵貴志川線貴志駅の駅長を務める三毛猫の「たま」(B2C)>日本の民営鉄道として初めて駅長に猫を起用した取組み・・・それが和歌山電鐵貴志川線貴志駅と駅長の「たま」だ

  2. <事例―6 東レのアルカンターラ(B2B)>高級車市場のシートや内装材に絞り込んで、ブランド化に成功した人工皮革…それが東レのアルカンターラだ

  3. <事例―19 アウトドア用品のモンベル(B2C)> アウトドアのプロたちが、自分たちが欲しいと思う商品を自社の独自販路と共につくって成功した・・・それがアウトドア用品ブランドのモンベルだ

最新の経営コラム

  1. 相談7:含み損のある土地があるのですが、別会社で買うのがいいか、個人で買うのがいいか、どちらでしょうか?

  2. 第9回 注意しても部下が変わらないのはなぜか? ~原因は人ではなく仕組みにある~

  3. 第146回 地味ながら世のクラウド化の追い風を受けて高成長を遂げる サイバーリンクス

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 社長業

    Vol.103 「業績を伸ばす「思考回路」を見分ける」
  2. 経済・株式・資産

    第25回 今後ますます重要になる、自らの強みの再考で収益性を高めるという考え方「...
  3. 教養

    第28回 『台湾海峡一九四九』 (著:龍應台)
  4. マネジメント

    第5回 オリジナルを目指す
  5. 経済・株式・資産

    第144回 焼肉業界で独り勝ちとなった理由とは 物語コーポレーション
keyboard_arrow_up