1位づくり戦略コンサルタント佐藤元相です。
2025年10月6日、「パイン株式会社 滋賀工場」の視察勉強会を行いました。
工場見学や広報部長・井守さん、会長・上田豊さんのお話からは、「お客さまの声を聴く力」と「未来を描く力」という、企業がこれからの時代を生き抜くための本質が見えてきました。
「懐かしいですね」から始まった挑戦 ― SNSでつながる広報の力
井守さんがSNSの運用を始めたのは2010年のことです。
「パインアメの会社です」と自己紹介すると、多くの人に「懐かしいですね」と言われます。その言葉が嬉しい一方で、「懐かしい」=「最近食べてもらえていないのかもしれない」と感じたことがきっかけでした。
「もっと多くの人に知ってもらいたい」とTwitterの活用を提案。
「お客さまと直接つながれる」という新しい可能性を信じ、2010年8月1日(パインアメの日)に公式アカウントを開設しました。
炎上しないための2つの約束
SNSを始める際、井守さんが決めたルールはたった2つです。
① 人を傷つけないこと
② 自社の商品から離れすぎないこと
難しいマニュアルよりも「シンプルな約束」を守ることが大事です。この2つを守れば、安心して発信を続けられます。
SNSでは、商品の紹介だけでなく、季節の話題や日常のつぶやき、そしてお客さまへの丁寧な返信。そうした“自然な対話”の積み重ねが、温かいファンコミュニティを育てていきました。
約70年ぶりの“里帰り”が生んだ奇跡
2023年3月、1通のメッセージが届きます。
「亡くなった祖母の遺品を整理していたところ、古いパインアメの缶が出てきました。手芸のボタン入れとして大切に使っていたようです。」
その方は、缶を捨てるか迷い、インターネットで調べたところ、パイン株式会社のSNSで「過去の缶をオークションで入手した」という投稿を見つけ、「製造元に保管してもらう方が良いかもしれない」と考えて連絡をくださったそうです。
それは創業当初の社名「業平製菓」と記された貴重な缶で、社内にも残っていなかったもの。こうして缶は約70年ぶりに“お里帰り”を果たしました。
この出来事をSNSで紹介すると、投稿は17.9万いいね!を超える大反響。「おばあさまの思い出が素敵」「私も缶を大切にしています」といった共感の声が広がり、「復刻してほしい」という声も多数寄せられました。
“思い出を形に”した復刻プロジェクト
寄せられた声を受けて、2023年8月、阪神梅田本店の催事「パインなおやつ」で限定3,000缶の復刻版を販売。
寄贈してくださった家族とおばあさまへの感謝を込めて、缶の中の個包装には“ボタン柄”がひとつだけ印刷されました。
「おばあさまがボタン入れにしてくださっていたことへの感謝です」
この小さな“幸せのサイン”は、手にした人の心を温めました。


※上記の画像は、パイン株式会社 公式サイトに掲載された「SNSで話題になった約70年前のパインアメ缶を復刻!「復刻パインアメ缶」を阪神梅田本店食祭テラスにて数量限定販売 クラブハリエとの「ご縁&ご円」で誕生した相互コラボスイーツも販売を開始!」から使用させていただいております。https://www.pine.co.jp/news/news-2309/
声が信頼を生み、信頼が行動を生む
「お客さまの声があったから、この缶は帰ってきました。そして、その声が“復刻”という行動につながりました」と井守さん。
SNSは単なる情報発信ではなく、信頼を積み重ねる場所。
ひとつのコメントに丁寧に返信し、意見を改良につなげる、その誠実な姿勢こそが、企業の顔をつくっていくのです。
社長の仕事は「未来を描くこと」
続いて上田豊会長にお話を伺いました。
「社長の仕事とは、未来を描くこと」と語ります。「人が本当に動くのは“数字”ではなく“気持ち”です。ワクワクする未来、『これをやってみたい』と思える希望を見せることが大切です。」
上田会長は、滋賀工場を「理科の実験室のような場所」にしたいと語ります。
失敗を恐れず挑戦し、問題があれば一緒に考える。命令ではなく、社員が自分の頭で考えて動ける、そんな現場づくりが、企業を未来へ導く力になるのです。
会長の言葉には、長年の経営経験からくる確信がこもっていました。

「人」と「喜び」を中心に据える経営
上田会長は「売上げを追うのではなく、お客さまに喜ばれる会社を目指す」ことの重要性を繰り返し語ります。
「“もっと売るために”ではなく、“もっと喜んでもらうために”会社は変わるべきです。」
そして、会社の原点は「人」であると強調します。
「会社は建物や機械でできているように見えて、実は“人の集まり”です。人が育たなければ、会社も育たない。」
社員の強みを見つけて伸ばし、弱みは責めずに支える。失敗はチャンスととらえ、挑戦を応援する。
そのような環境こそが、人を育て、会社を強くしていきます。
まとめ ― 声と希望が企業を動かす
約70年ぶりに“里帰り”したパインアメ缶の物語は、「お客さまの声」が企業を動かし、社会に感動を広げた象徴です。
そして、上田会長の言葉は、「未来を描く力」「人を信じる力」「希望を語る力」が企業を育てることを教えてくれます。
時代を読み、人を信じ、希望を描く。
声に耳を傾け、小さな声を行動に変える。
その積み重ねが、パイン株式会社の“70年のご縁”をつないできたのです。









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