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経済・株式・資産

第119話 経営とリスク(4)

あなたの会社と資産を守る一手

 粉飾決算の「粉飾」とは飾り立てるということです。決算時の収益がじっさいには赤字であるのに黒字にするために、勘定科目の数字を操作するということはありますが、それを架空の数字などで操作すると粉飾に該当してしまいます。

 じっさい、決算にあたり当期純利益が赤字になりそうなので、今回は減価償却(*1)をやめておこうとか、前期は年払いした倒産防止共済の掛け金を、月払いにしようとかなどの話はよく耳にします。これは税法で認められた正しいやりかたですが、架空の売上をでっちあげたり、在庫を水増ししたりすれば正しくないこととして「粉飾」と呼ばれることになるわけです。

 これら「粉飾」をする会社は、銀行融資をひきだすためとかのために、決算を見栄えのいいものにする必要性に迫られてそれを行うわけです。

 ただ、「粉飾」といっても、やみくもに行われるわけではなく、経済的合理性なり、合法性。最悪、バレにくさといったことが、社長の思考過程で考慮されて何をどのようにするかが決まっていきます。正しくないやり方の場合、売掛金の水増しと在庫の水増しでは消費税額の負担が増えない在庫の水増しのほうが行われることが多いものです。

 このように、「粉飾」を行っても税負担が増えない方法のほうが好まれます。今までいろいろな会社の財務を見た経験から言えば、粉飾を行う会社の多くは青色欠損金の繰越控除額があって、それゆえに粉飾をおこなっても法人税・地方税等の負担は増えず、消費税の負担増のみを気にするケースが多かったような気がします。さらに言えば、その期の利益がおおよそわかり始める決算月にそれらの数字を操作するための下準備が行われているケースが多いものです。

 金融機関で融資を担当していたころ、決算書の内容に疑問を抱き、元帳・納品書を精査したことが何度かありましたが、案の定、決算月に不正な操作が行われていたことが多く、同業他社と比べて目立つ数字・勘定科目、元帳の動きから判明する異常さや、経費・買掛金を仮払金(*2)に計上して資産化してしまうなど当事者はバレないだろうと考えているつもりでも、粉飾の証拠は簡単にみつかるものでした。

 ただ、粉飾の事実を問い詰めても経営者は、イエスとは言わないもので最後まで白を切るケースがほとんどでしたが。もっとも、粉飾の疑いのある会社に対する融資は粉飾の疑惑がはれるまでは抑制・圧縮されるのが普通です。

 粉飾でも、融通手形は消費税の負担増に影響を与えないため過去には行われるケースがありましたが、二重帳簿は今まで1回しかおめにかかったことがありません。 二重帳簿がバレた場合は経営者の悪意が強いものと推察され、刑事事件となることもありえるからです。

 バレなければいいと思う方もいるかもしれませんが、粉飾で銀行を騙した場合は二度と借り入れができなくなり、最悪、融資詐欺容疑で逮捕された「はれのひ」事件のような結末が待っていることもあるのです。

 

注1:減価償却費の計上は、法人の場合任意償却です。会社の判断により任意で償却できる取り扱いになっています。根拠条文は下記です。

(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)
法人税法第三十一条 参考

内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として第二十二条第三項(各事業年度の損金の額に算入する金額)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、その取得をした日及びその種類の区分に応じ、償却費が毎年同一となる償却の方法、償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法その他の政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかつた場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額(次項において「償却限度額」という。)に達するまでの金額とする。

 

注2:仮払金は支払をしたが、相手勘定が不明な場合、金額が未確定な場合にその支払いを一時的に処理しておく勘定科目で流動資産に含まれます。つまり支払いをしても流動資産なのです。在庫を考慮しなければ、買掛金を同日に支払いした場合、現金預金が減り利益は減りますが、同額を仮払金とすれば、現金預金が減っても利益は減らないことになります。

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