◆上海日本総領事館のビザ発行件数は1日1万件
先月、筆者が代表を務める会員制組織・中国ビジネスフォーラムは「上海・杭州・無錫視察団」(一行13人)を派遣し、汪泉・無錫市長、肖林・上海市政府発展研究中心主任、片山上海日本総領事などとそれぞれ懇談した。
片山総領事によれば、日中関係の改善を背景に上海総領事館のビザ発行件数は急増している。昨年87万件だったが、今年は2倍以上に増え、1日(休日を除く)あたり1万件にのぼる。上海発行件数は日本の在外総領事館のビザ発行数全体の3分の1を占める。
一方、日本政府観光局(JNTO)の発表によれば、今年1~9月来日中国人観光客が前年同期比114%増の383万人に達し、昨年通年の実績(241万人)を遥かに上回る。人数で言えば来日中国人が外国人全体の26.5%を占めるが、その消費金額は全体の4割を占め、その「爆買い」はいま日本経済の下支え要素となっている。
◆「独身者の日」の「爆買い」―アリババ1日の売上1.7兆円
さる11月12日、中国電子商取引最大手アリババは「独身者の日」11月11日のネット通販売上高は前年同日比60%増の912億1700万元(約1兆7600億円)に達し、史上最高を更新したと発表した。アリババ1日の売上高は、三越伊勢丹ホールディングスの年間売上1兆2,721億円(2015年度3月期)の1.4倍に相当し、中国「爆買い」の物凄さが改めて示された。
「独身者の日」とは、6年前の2009年、アリババは4つの「1」が並ぶ11月11日を名付けたものである。同社は「ひとり者」を対象に「自分にプレゼントを」というキャンペーンを実施し、ネット通販の値引き商戦を展開してきた。
最初はこの日の売上高は僅か5000万元だった。ところが、その後毎年急増し、翌年の2010年に9億元、11年52億元、12年191億元、13年350億元、14年571億元、そして7年目の今年は912億元を記録した。6年で1824倍も急拡大した。
また、アリババは輸入品を専門に扱う傘下の通販サイトを通じ、日米欧企業の出店も誘致している。
◆求められる日本企業の対中ビジネス戦略転換
ネット通販の急成長は中国経済構造の大きな変化を反映したものと見ていい。景気減速が続く中、中国経済は二極分化の現象が起きている。製造業は鉄鋼、建材、建機など多くの分野が深刻な生産過剰に陥り、苦境が続く。一方、サービス業は旺盛な個人消費に牽引され、堅調さを保っている。
実際、今年10月、中国の小売総額は前年同月に比べ11%増、新車販売台数も11.8%増となっている。新車販売2桁増は昨年12月以来10ヵ月ぶりである。
これまで日本企業は対中投資を製造業に集中してきたが、いま苦戦が強いられている。これは日本経済が2期連続でマイナス成長の一因とも見られる。中国経済の大きな構造変化に伴い、製造業からサービス業へのシフトという対中ビジネス戦略の転換が今、日本企業に求められる。