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第63話 米中協力が米リバランス戦略の核心だ

中国経済の最新動向

 今年11月10~11日、APEC首脳会議が北京で開かれた。世界にも注目される日中首脳会談の実現、米中衝突回避の取り組みなど、APEC会議では緊張緩和ムードが漂っていた。この緩和ムードは、13日にミャンマーの首都ネビドーで開催される、ASEANと日米中など8カ国首脳による東アジアサミットでも広がっている。
 
 周知の通り、2010年アメリカがアジア重視のリバランス(再均衡)戦略を打ち出した以降、東アジアサミットは南シナ海問題をめぐる米中対立の舞台になってきた。ところが、今年の東アジアサミットでは対立色が影を潜め、協力を強調する緩和ムードが広がる。これはオバマ大統領の発言から読み取れる。
 
 オバマ大統領は「米国・ASEAN首脳会議」の冒頭で、次のように強調している。「我々は個別の国で行動するより、一緒に取り組んだほうが強くなれる」と、協力・協調の重要性を訴えた。米中対立から米中協力へ転換する米国のスタンスが明らかになってきた。
 
 アメリカのスタンス転換に追随・同調したのは米同盟国のフィリピンである。南シナ海で反中国の急先鋒だったフィリピンのアキノ大統領は、今回の東アジアサミットで、南シナ海での衝突を回避するASEANと中国間の法的ルール(行動規範)の早期策定を訴える発言にとどめ、これまでASEAN関連会合で繰り返してきた中国批判を封印した。
 
 この一連の動きを総合的に分析すれば、米国のアジア戦略の方針転換が浮き彫りになるという結論に至る。言い換えれば、アジアを重視するアメリカのリバランス戦略の軸足は、これまでの中国けん制から米中協力にシフトする。この方針転換を明確に示したのは、11月12日米中首脳会談後の共同記者会見におけるオバマ大統領の次の発言である。
 
「米中協力が我々のアジアリバランス戦略の核心だ」。
 
 米国のアジア戦略の方針転換は、内憂外患に陥るオバマ政権のやむを得ぬ選択と言える。国内では、11月の米中間選挙で与党・民主党が大敗し、衆参両院で過半数を失った結果、オバマ政権は内政でなかなか動きを取れず、事実上「死に体」になりかねない。
 
 国際的には、アメリカの中東政策が失敗し、過激組織「イスラム国」が急速に台頭している。欧州ではウクライナ問題で米国とロシアの緊迫関係が続いている。アジアでは中国けん制に主眼を置いてきた「リバランス戦略」は、結果的には日中対立、中国・フィリピン対立、中国・ベトナム対立という緊張関係を強めるのみならず、南シナ海では中国軍の戦闘機が米国の哨戒機に異常接近するという一触即発の緊張をもたらしている。
 
 財政難に直面し、国力が弱まっている米国にとって、中東・欧州・東アジアという三正面作戦は無理難題であることは自明の理となり、戦線縮小が急務となる。そこで、緊急性が相対的に乏しいアジアで中国との衝突回避を優先し、中東と欧州に集中する戦略転換はオバマ政権の外交戦略の必然の選択となる。
 
 もちろん、オバマ政権は中国けん制を完全に捨てた訳ではない。本音とは別に、建前として同盟国向けには中国けん制を言及する必要がある。事実、11月15日、G20首脳会議出席のため、豪州訪問中のオバマ大統領は、地元のブリスベン大学で演説し、中国けん制を匂わせる発言もした。日豪など同盟国向けの発信とみられる。
 
 しかし、オバマ大統領が明言したように、米中協力が米国の「アジアリバランス戦略の核心」となれば、アジア重視のリバランス戦略の軸足は中国けん制から米中協力にシフトしなければならない。この戦略の方針転換によって、これまで日本を重視するアメリカの基本姿勢も中国重視にシフトしかねない。これは米中関係のみならず、日米関係、日中関係にも大きなインパクトを与える。日本は的確にこの環境変化を読めるかどうか、また迅速に対応できるどうかが今後、注目される。

 

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