接待飲食費の上限が1万円に
山形社長は、取引先の大手企業の社員から聞いた話を詳しく知るために、賛多弁護士の事務所にやってきました。
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山形社長:取引先の大手企業の方が、法改正の影響で社内規程が変更され、接待飲食費の上限が1人あたり1万円に倍増したと話していました。そんな法改正があったのでしょうか?
賛多弁護士:はい、恐らく、2024年度の税制改正のことだと思います。
事業者が接待交際費用として損金にできる「接待飲食費」の基準が倍増したのですよ。
山形社長:倍増ということは、これまでは1人あたり5000円が上限額だったということですね。
接待飲食費の上限が5000円だと、夜の会食は難しく、ランチや先方への差入れ弁当が精一杯な気もしますな。
賛多弁護士:はい、山形社長のおっしゃる通りです。
コロナ渦以降も伸び悩む法人の飲食需要の喚起と、「安いニッポン」と呼ばれるデフレマインドの払拭が期待され、倍増が実現しました。
山形社長:2024年の事業年度から適用されるのですか?
賛多弁護士:事業年度に関係なく、2024年4月1日以後に支出する接待飲食費に適用されます。
決算月によっては、同年度内に2種類の金額基準が混在することになりますので、会計事務所さんや経理担当者などは気を付けていらっしゃるようです。
山形社長:そうなりますよね。
1人1日1万円が上限ですか?
賛多弁護士:いいえ、1軒1人あたりの上限額が1万円ですので、一次会と二次会でお店を変えれば、それぞれ1万円を損金算入できますよ。
山形社長:へえ、そうなんですね。意外だな。
細かいことですが、1軒1人あたり1万円を計算する際に消費税は含まれますか?
賛多弁護士:事業者によって異なります。税抜経理を採用している企業であれば、消費税抜きで1万円まで、税込経理を採用している事業者であれば、消費税込みで1万円までとなります。
山形社長:なるほど。
1軒1人あたり1万円を超えてしまったら、1万円の上限分だけ損金算入できるのですか。
賛多弁護士:いいえ、1軒1人あたり1万円を超えた場合、そのうち1万円だけを損金にするという処理はできず、全額交際費として扱われます。そして、交際費は原則として損金の額には算入しないこととされています。
山形社長:なんと、それは困りますな。
賛多弁護士:山形社長の会社のような、中小企業は、交際費年間800万円までを全額損金算入できる中小企業向けの特例措置が2027年3月末まで延長されていますのでご安心ください。
山形社長:全額損金算入できるのか。ありがたいな。
我が社では、交際費を年間800万円まで使うことはないから、きっとその特例措置を使って処理されているんだろうな。
実を言うと、大手企業さんのような接待飲食についての社内規程もないのです。
賛多弁護士: そうでしたか。社長の目が届くうちはそれで足りるのかもしれませんが、今後、社員数が増える、特に、営業の方の人数が増えてくるようであれば、社内規程は作っておいた方が良いでしょうね。
山形社長:そうですよね。では、ぜひご相談させていただきます。
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法人が支出した交際費等は、原則として、損金の額に算入しないこととされていますが、中小法人は、① 800万円までの交際費等の全額損金算入②接待飲食費の50%の損金算入(注1)の選択適用が認められています。
(注1)接待飲食費の50%の損金算入の適用は中小法人以外の法人(事業年度終了日における資本金の額等が100億円以下の法人に限る)にも認められています。
今回の接待飲食費上限の引き上げの法改正は、事業年度終了日における資本金の額等が100億円を超える法人と飲食店側に良い影響が及ぶことが期待されます。
<ご参考>
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/tokurei/kousai.html
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 木元 有香