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戦略・戦術

第四話 女性事務員の視点で会社が変わる! 全社員営業で受注を増やす町工場の取り組み

中小企業の「1位づくり」戦略

こんにちは!
1位づくり戦略コンサルタント
佐藤元相です。

商品をどこから買うかどうかの決定権は
お客さまが100%の決定権を持っていて、
売る側は1%もありません。

お客さまに商品をかってもらうためには、
お客さまの自発性を待つしかありません。

この原則は江戸時代から今日まで
何ら変わっていないので、経営の大原則になります。

強い商品があるからといって、
お客さまが商品をドンドン買ってくれるかというと、
そう簡単にはいきません。

経営活動で小さな会社や競争条件が不利な会社が、
業績を良くするためには、お客さまに不便を掛けたり、
二度手間をかけて、お客さまに嫌な思いをさせて嫌われ、
あの会社から商品を買うのはやめておこう、
と思われないようにすることを改めるのが大事になります。
営業担当だけでは無く、現場で作業する人、事務の人、配送する人、
一人の対応が悪いことで、すべてがダメになってしまいます。
そこで本日は、小さな町工場が全社員営業で業績を伸ばしている
良い事例があるので紹介しましょう。

西尾硝子鏡工業所は、昭和7年、東京都大田区で創業しました。
従業員は23名で硝子・鏡に特化した町工場です。
西尾智之さんは、元商社マンで現在3代目の社長です。
西尾社長は、右肩下がりのガラス業界で、自社の顧客となるガラス販売店は
20年後 1/5になると予測しました。
販売不振や後継者不足などが大きな要因だと考えました。

 

ichi4_1.png




業界を取り巻く環境の変化
また仕入れ先となるガラス問屋さんも、現在ピーク時の半分の数になっています。
景気が悪いから会社の業績が落ち込むとか、
業界が斜陽化しているから自分の会社も苦しいなんて
言い訳は通用しません。
経営者は、どんな逆境の中でも、利益を伸ばさなければなりません。


厳しい環境の中、西尾社長は2つのことに取り組みました。
1.利益の出る仕組みをつくる!
2.お客さまを増やす取り組みをつくる!
1位づくり戦略の原理原則に基づき、
自社のビジネスモデルを再構築することにしました。
1.利益のでる仕組みをつくる!
これまでは、品質の良いものを作っていれば仕事がきました。
現場は仕事をこなしていれば、良かった。
それで食っていける世界でした。
職人は遅くまで仕事をしていた。
徹夜して仕事をすることもありました。
しかし・・・利益が出ない。
みんながんばっているのに利益がでない。

下請け仕事は値段を叩かれる!
値段の3叩き!です。
見積のときに叩かれ
納品のときに叩かれ
請求のときに叩かれる
この3段階で値段をたたかれるのです。
これではがんばってもやりきれません。
利益率を上げるために、客層戦略と地域戦略に取り組みました。
まずは客層を絞り取材を行いました。
差別化ポイントはどこにあるのか?
選ばれている理由は何なのか?
特定の顧客に絞り、徹底的に取材をしました。

お客さま取材から選ばれている理由を探していると
いくつか共通する情報がありました。
報連相が徹底されているので安心して任せられる。
分離発注している会社と連携し担当者の作業を軽減してくれる。
緊急案件に対応してくれる。さらに品質に間違いがない。

お客さまの要望や課題など、自社にとっての脱価格競争のヒント
さまざまな要因が見えてきました。
西尾社長は「顧客に選ばれている理由を強化すること」と
「より強い部分に特化していくこと」に 方針を固めました。
つぎに強い地域作りです。
弱者の地域戦略 原理原則を徹底しました。
利益性を高めるため、営業エリアは自社から30分圏内に
設定しました。
遠くまで仕事に行かなくてもいい。
日本の内装工事の半分がこのエリアで行われている。
自社の経営規模で十分にやっていける。
将来1位を目指すエリアと設定しました。

リーマンショックから3年連続赤字が続いていましたが、
実践して3年目にようやく黒字の月が出てくるようになりました。
原理原則とお客様中心の経営に間違いはなかった。

つぎに
2.お客を増やす取り組みをする!に着手しました。

全社員で営業することを決めた。
これまでずっと、私一人で営業していました。
私が居なければ何もすすみません。
そこで、全員でお客さまづくりに取り組むことにしました。
まず最初に、事務員と同行営業をすることにしました。
年3回、顧客訪問することに決めました。
スタッフが営業現場を知ることで多くの改善点が見つかりました。
訪問先へ伺ったとき、挨拶もなく仕事をしている様子をみたスタッフは、
「私たちもそんなことになっていないでしょうか?」と職場の見直しを
自らすすんでやってくれました。

またいろんな要望もありました。
たとえば、「商品を積み込むとき、頼みにくいんだよ」という
お声がありました。

スタッフはすぐに現場の方に依頼して次のような看板を
造ってくれました。
 

ichi4_2.jpg


お客さまの声から改善
驚いたことがありました。
「西尾さんってどんな仕事をしているのですか?」
発注担当者の女性からの質問でした。

私たちの仕事のことを知らないのか??
ショックでした。
そこで、女性の視点から西尾硝子鏡の仕事がよく分かる小冊子を
作成しました。
 

ichi4_3.png


西尾硝子の仕事の内容が記されている冊子
女性スタッフの意見を集めて250部作りました。

これがお客にウケました!
評判も上々でした。
これまでに冊子は3回増刷してお客さまに配っています。
こうしたことから確実に受注依頼がふえていきました。

工場の現場職人と同行営業することにしました。
クレーム対応で、お客さまが怒っていると言っても
現場になかなか伝わらない。
一緒に体感しないと分からない。

職人には黙って聞いておくようにと伝え、
私がお客さまのクレーム対応している現場を体感してもらうようにしました。
それからしばらくすると職人のクレームに対する対応が変わりました。
とにかく、初歩的に問題があるところを先に直すのが
何より重要になるのです。
さらに、工場見学を積極的に取り入れるようにしました。
工場は立派なショールームです。
発注者は誰が造っているのか分からない。
顔の見える関係づくりが次につながります。

購買担当からは「ガラスの基本がよくわかった」とか
デザイナーからは「職人と直接話ができるので
細かいニュアンスまで伝えることができる」
など喜んでもらえるようになりました。
職人がお客さまとの関係づくりを強化してくれるようになりました。
こうして業績は右肩上がりになっています。
たくさんある会社の中からお客さまに選んでいただくため、
小さな会社は全社員でお客対応に力を入れるといい。
お客さまに不便を掛けているところはどこにあるのか?
みんなで話し合ってみましょう。
こうした一つひとつの取り組みで顧客視点が芽生えていくでしょう。

第三話 下請け町工場の新販路開拓のやり方前のページ

第五話 小さな会社の働き方改革 やり甲斐や誇りを持って仕事に取り組む次のページ

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