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188軒目 「中野屋 @長野県諏訪郡原村 ~原村にあるすばらしい『海味』の系譜」

大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

 長野県諏訪郡原村で打ち合わせがあり、せっかくだからと『中野屋』という鮨店を予約しておきました。


 少し早めに店に到着し、暖簾が出ていないので車で待つことにします。すると、奥様が車までいらして、どうぞと声をかけていただけました。

 入り口に入ると可愛い小さなお嬢ちゃんが『いらっしゃいませ』と挨拶してくれます。家族、総出での歓迎ですね。嬉しいですね。

 ビジネス化されるレストランでありますが、しかし、飲食店は家業であると言う素晴らしい側面があります。私は仕事柄、結婚してしばらくして開業して予想外の幸運に恵まれることに遭遇しました。

 昔、とある塾生のご夫妻が開業されたとき、これまで恵まれていなかったがおめでたでどうしたら良いかと相談を受けました。それで、まだ開業したばかりで一人では大変だし、かと言って人を雇うのはもっと大変だから、ベビーベッドを傍に置いて奥様に開店時間から1時間後くらいまで手伝ってもらったらとアドバイスをしたことがあります。

 多分、その少し前に日本経営合理化協会の店舗見学会でご縁があった大阪の料理人が開業した頃の話があったからかもしれません。その人(黒岩シェフ)は開業後子供が生まれて背中におんぶして料理をしたと言うのです。

 人それぞれ感じ方はあると思いましたが、これこそ家業としての良さだと思いました。客人を家族のようにもてなしくつろいでもらうと言うのは企業経営ではできないと思うのです。

 
 まずは、訪問前に當店『中野屋』を調べた『すしログ』より

「海味」の系譜
 現在の鮨を語る上で外せないのが「海味うみ」。
2代目親方の長野充靖氏は出色の鮨職人として知られましたが、早逝されてしまいました。
しかし、現在圧倒的な人気を博す鮨職人を育てられました。
まず、筆頭が長野県諏訪郡原村の「中野屋」の中山洋介氏。
そして、福岡「鮨さかい」の堺大悟氏。
堺さん、僕は日本屈指の握りの一つだと確信しています。
卓越した握りと仕事の技術です。
さらに、3代目親方を担っていた外苑前「鮨 龍次郎」の中村龍次郎氏、鹿児島「名山きみや」の木宮一樹氏(宮崎「一心鮨光洋」の木宮一高氏の三男)、「東麻布天本」の天本正通氏と、錚々たる顔ぶれです。
2022年3月に開業された「すし 田いら」の平公一氏も評価を高めています。

出典: 『すしログ

 


 車なので、ノンアルコールビールを注文した後、大将がつまみからで良いでしょかと尋ねてられましたので、お願いしますと伝えると、鮃と縁側が供せられました。

 見た目、少し寝かせている印象です。
 少しねかせているようで身は柔らかですが、旨みがのっていてポン酢をつけていただくとたいへんおいしいですね。

 

 続いて、赤貝。

 コリっとした食感のあと、赤貝らしい良いが広がります。これもすばらしいです。

 

 ひもきゅうの手巻きが続きます。

 中には細く切った胡瓜が綺麗に入っていて、こりしやきとしたテクスチャが楽しめ、赤貝の味わい、海苔の香りが楽しめます。

 

 続いては宮城(だったかな)の白魚の茶碗蒸しです。熱々で体が温まります。

 

 佐島の真蛸。山葵をのせてこれは美味しい。

 

 甘海老。

 ねっとりして美味い。噂にたぐわぬ良い仕事をされています。

 

 中トロが続きます。刺身ですが、鉄の余韻が良いですね。

 

 続いて、北海道の公魚と葱の天ぷらです。カリふわの公魚はとてもおいしいです。

 

 ガリが出てきたところで、握りに入ります。
 まずは、墨烏賊から。

 こりっと言うよりザクザクのテクスチャが良く、赤酢のシャリの酢加減のバランスが良いです。

 

 小鰭。

 真ん中に包丁一本入れて見事な見た目の小鰭です。皮が柔らかて、ふわとした小鰭。シャリの大きさとバランスよく美味しいです。

 

 細魚。
 生姜の香りよく、おいしいです。

 

 エボダイ。

 私の好きな魚種です。でも、ほとんど見かけません。口当たりは少し活かっている第一印象ですが、脂がのっていて実は柔らかいです。

 

 鰆 漬け。
 ひとこと、うまい!!

 

 鰯。
 身がしまっていて脂のりがちょうど良くうまい。

 

 小鯛。

 醤油と軽く酢橘を絞ります。ふわふわな脱水。

 

〆鯖。

 二枚付にして供せられました。最初に軽い甘さがきて、鯖のうまさがきます。

 

 煮帆立。

 複雑な味と香り。私は火を入れた帆立の甘さが好き。この握りを食べながら唐津の『つく田』の松尾さんの顔が浮かびました。Facebookでほぼ毎日投稿を見てますからかね。

 

 赤身の漬け。

 赤身の香りを楽しんでくださいと言うことですが、軽い余韻が良いです。

 

 昆布と若布の味噌汁。

 

蛇腹の大トロ。
後半戦です。脂と香りが広がります。

 

 茨城のマカジキの漬け 辛子。

 身がしまったマカジキは味わいがありますね。辛子がツーンとアクセント。

 

 煮穴子。

 穴子はふわふわに煮と言うよりは炙って良さを引き出した穴子。美味しい。

 

 雲丹。
 綺麗な六の字に海苔を巻いて。

 

 干瓢巻きと玉子。

 

 せっかくですから追加します。
 まず、墨烏賊 こちらは墨烏賊らしい食感で好みです。

 

 そして、墨烏賊の下足。ツメでいただきます。

 

 そう言えば、ここ半年間に行った初めての店で光ものや締めものも貝も出ない鮨寿司店がありました。そう言う意味で、本来あるべき江戸前鮨の構成で大変良かったです。もちろん誰が食べても美味しいと思うのですが、こちらの店は食べ込むとよりしみじみ感じるであろう、素晴らしさがあります。

 そして、大将のホスピタリティの高さが一つ一つ目の前に置く時に感じます。それも良かったです。それでいて、目の前の客人にやその客人が求める時代のトレンドに流されず、高い技術を貫く素晴らしい鮨店だったと思います。

 これは、車を飛ばしてわざわざ原村まで来る価値がある店ですね。

 2000年代初頭に、「料理人よ故郷へ帰れ」と言うコラムを昔『日経レストラン』の連載で書きました。コラムを書く私には、地方のレストランは人を呼べるのかと言う、大きな命題がありました。

 しかし、サンボネルフロアにあるレジス・マルコンやライヨールにあるミッシェル・プラスやクレモナにあるダルペスカトーレなどで食事をして、レストランは人を呼べると確信したわけなのですが、あれから、日本でもいろいろなレストランに出会うことができました。

 本日の原村の『中野屋』もその1軒と言えるでしょう。

 帰りしなに皆さんでお見送りしてくれます。
 料理はもちろん素晴らしかったですがおもてなしも素晴らしい店でした。これは、季節を変えて車を飛ばして勉強したい店ですね。

 奥様の丁寧なお見送りもさることながら、一番印象に残ったのはお嬢ちゃんのお見送りですね。これですね。生業店は人です。

 

中野屋
〒391-0104 長野県諏訪郡原村払沢6651
電話 0266-79-5028

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