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採用・法律

第18回 『令和時代の金の卵!?』

中小企業の新たな法律リスク

 注文は増えているのに人手が足りない、来年から自社(中小企業)にも残業時間に上限規制がかかるから残業はもう増やせない、何度も求人広告は出しているのに一向に応募がない……。「人手不足倒産」という言葉が脳裏をかすめ始めた高橋社長は、顧問の賛多弁護士に知恵を求めました。
 
* * *
 
高橋社長:とにかく人が採れません。今や「採用氷河期」という言葉があるそうですね。うちのような中小企業は、どうやったら人を採れるでしょうか。
 
賛多弁護士:御社の社員の皆さんに、「年齢、性別も、学歴、職歴も問わないから、手伝ってくれる人がいないだろうか」と聞いてみたら、如何でしょうか?
 
高橋社長:良い会社だと思ってくれている社員ばかりじゃないでしょうから、聞くのが怖いです。あ~、こんなことなら、もっと社員を大切にしていれば良かった……。それでも今すぐにできるような、画期的な採用方法はないでしょうか? 
 
賛多弁護士:どういう採用をするかは、今いる社員への強いメッセージになります。社長は、本当にもっと社員を大切にするという覚悟はありますか?
 
高橋社長:はい、その覚悟はあります。ただ、うちの社風や今いる社員に合わない人を採ってしまうと、仕事がうまくいきませんし、結局、すぐに辞められてしまいますよね。
 
賛多弁護士:採用のミスマッチを防ぐためには、自社がどういうところなのか、何を大切にしているのか、よくよく省みて、それを正直に、分かりやすい言葉で、社内と社外の両方に対して発信し続けることが重要です。
 
高橋社長:これまでは自分の価値観を表現する努力が足りなかったと反省します。
 
賛多弁護士:その上で、世間で「就職弱者」と言われている人たちの中から、自社に合う、見込みのある人を探しては、如何でしょうか?
 
高橋社長:というと? 
 
賛多弁護士:社長はこれまで障がいを持っている人たちと一緒に働くということを考えたことはありませんか?
 
高橋社長:いきなりな展開ですね。障がいのある人、うーん、正直考えたことなかったですね。働いてもらうための管理が難しかったり、周囲の社員の対応も大変ではありませんか?万一、病気が悪化したり、障がいのために事故が起きたら、というのも心配です。
 
賛多弁護士:確かに、難しそうで、大変そうで……。しかし、障がい者の場合、障がい者福祉の枠組みを利用すれば、採用後も、支援機関や就労支援のプロであるジョブコーチからの助言やサポートを継続して得ることができるそうですよ。
 
高橋社長:なるほど。そういえば、この前、商工会議所の集まりで発達障がいの社員を採用したという話をちらっと聞いたのを思い出しました。どういう順序で進めたらよいでしょうか?
 
賛多弁護士:まずは、障がい者に対して企業への就職の準備や訓練を提供している就労移行支援事業所を訪問して話を聞いてみましょう。じつは、私も、障がい者の方を採用しようと思って調べているところなんです。
 
高橋社長:えー、先生の事務所でもなのですか。わかりました。その障がい者支援をしているところに行ってみましょう、先生も一緒にいかがですか。
 
賛多弁護士:喜んでご一緒させていただきます。
 
* * *
 
先進的な事業所の例などを見て障がい者雇用を進めなければならないことは知っていても、どのように取り組んだらよいか分からない中小企業は多いでしょう。障がい者を採用しようとする場合には、ほとんどが精神障がいか発達障がいを持つ方になります。精神障がいや発達障がいの就労支援に取り組んできたプロを見極め、自社に合った障がい者を紹介してもらい、採用後も関与し続けてもらうことが、障がい者雇用を進めるためには必要です。
そして、実は、障がい者雇用を成功させる挑戦こそが、採用力は勿論、人材活用力、職場改善力などを高め、自社が生き残るための特効薬であったことに、後から気付くかもしれません。
 
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 小島健一
 
 
【参考URL】
「障害者雇用は『働き方改革』の決め手になる」鳥飼総合法律事務所 弁護士 小島健一
  インタビュー(「働く広場」(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構・2018年5月号「この人を訪ねて」)
  講演録((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構主催「第26回職業リハビリテーション研究・実践発表会」2018年11月)
 

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