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採用・法律

第146回 『賃借人に賃料未払いがあった場合に賃貸人は無催告で解除できるの?!』

中小企業の新たな法律リスク

不動産賃貸業を営む山形商事の山形社長が、賛多弁護士のもとに相談に来られました。山形社長によると、賃借人の中に賃料未払いの方がいるようですが…。

* * *

山形社長:本日は、ある建物賃借人の賃料未払いについて、相談に来ました。

 

賛多弁護士:どうされたのですか?

 

山形社長:私は、不動産賃貸業を営み、建物を賃貸しています。建物の賃借人のうちのある方が、2か月も賃料を滞納しています。その方との賃貸借契約を直ちに解除したいのですが、可能でしょうか?元々、問題の多い賃借人の方ということもありまして…。

 

賛多弁護士:ちなみに、賃貸借契約書にはどのように書かれていますか? 

 

山形社長:建物の賃貸借契約書には、「2か月賃料を滞納した場合、賃貸人は無催告で賃貸借契約を解除することができる。」との条項があります。

 

賛多弁護士:たしかに、賃貸借契約書の条項には該当しそうです。ただ、無催告解除をするのは法的リスクがありそうです。その賃借人に対して、相当期間を定めて未払家賃を支払うように催告して、それでも支払わない場合に解除した方がよいかと思います。

 

山形社長:え?契約書に定めがあるのに無催告で解除できないのですか?

 

賛多弁護士:消費者契約法は、事業者と消費者の間で締結された契約を「消費者契約」と定義しています。そして、消費者契約法は、消費者契約において、消費者の利益を一方的に害するような条項を無効と定めています。今回の賃貸借契約は、事業者と消費者の契約であり、消費者契約に当たるところ、消費者契約法により無催告解除の条項は無効となる可能性があります。

 

 山形社長:賃貸借契約書の無催告解除の条項は無効になってしまうのですか?割と一般的なものだと思っていましたが…。

 

賛多弁護士:民法541条は、債務者に債務不履行があったとき、債権者は債務者に対し相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がないときに解除できることを原則として定めています。山形商事さんの賃貸借契約書の無催告条項は、催告解除を原則としている民法541条に比べて消費者の利益を一方的に害するものであり、無効とされるリスクがあります。

 

山形社長:そうなんですか!

 

賛多弁護士:近年の最高裁の判決でも、事案は多少異なりますが、同様のことを示したものがありますよ。

 

山形社長:どうもありがとうございました。賃貸借契約書の条項の文言もさっそく修正したいと思います。

* * *

消費者契約法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみて、事業者と消費者との間で締結される契約を「消費者契約」と定義し、消費者契約においては、消費者の利益を擁護するための規定を設けています。

 

消費者契約法10条は、事業者と消費者の契約条項につき、消費者の利益を一方的に害する条項を無効とする旨を定めています(※)。そこで、本ケースにおいては、山形商事さんの賃貸借契約書の無催告条項が、債務不履行があった場合に催告解除を原則としている民法541条(※)に比べて消費者の利益を一方的に害するものであり、無効とされるのかが問題となります。

 

最高裁令和4年12月12日判決(令和3年(受)第987号)は、(建物の賃貸借契約は)「当事者間の信頼関係を基礎とする継続的契約であるところ、その解除は、賃借人の生活の基盤を失わせるという重大な事態を招来し得るものであるから、契約関係の解消に先立ち、賃借人に賃料債務等の履行について最終的な考慮の機会を与えるため、その催告を行う必要性は大きいということができる。」などと判示して、無催告解除を定めた条項を消費者契約法10条に該当して無効であると判断しました。ちなみに、この最高裁判決の事案で問題となった賃貸借契約の条項は、賃借人の保証人が賃貸借契約を無催告解除できる規定でした。解除権者が賃借人の保証人ではなく賃貸人であった場合の判断ではありませんが、少なくとも最高裁の理由付けによれば、解除権者が賃貸人である場合でも、無催告解除を定める賃貸借契約の条項は消費者契約法10条に該当して無効と判断される可能性があると思われます。

 

※消費者契約法10条

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)

消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

 

※民法541条

(催告による解除)

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

 

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 渡邉宏毅

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