menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

マネジメント

決断と実行(1) 15億円設備投資の勝算

指導者たる者かくあるべし

 本田宗一郎は、「おれのこの手があればどんな機械ででも最高のものはできる」と、古い工作機械で、その湧き出るアイデアと手先の器用さによって次々と斬新なオートバイエンジンを生み出していった。
 
 2サイクルエンジンが常識だったオートバイに新型の4サイクルエンジンを搭載したドリーム号が爆発的に売れ始めた。
 
 さらに庶民の足である自転車に小型エンジンを積んだカブ号も人気商品となった。
 
 同業他社も追随し、激しい販売競争が起きた。「今が考え時だな」とその先を見越していた男が本田の傍らにいた。
 
 本田のモノづくりの姿勢と技術力、そして奔放なアイデアに惚れ込んで財務・営業担当として本田と組んだ専務の藤沢武夫だ。
 
 昭和24年に拠点・浜松から東京への進出を目指していた本田の元に馳せ参じた藤沢は、仲介者に「俺、かねはないけれども、かねはつくるよ。かねのほうは受け持って、ひとつ一緒にやってみたい」と伝えている。
 
 金をつくるという点で藤沢は本田に劣らぬアイデアマンだった。全国にある街の自転車店をホンダの販売店に仕立て上げた。しかも、パンフレットを送りつけて「品質は責任を持つ」と売り込み、先金でオートバイを買い取らせたから財務体質は強固さを増した。
 
 モノづくりに没頭する本田からは、次々と世の先端を行く試作車が持ち込まれていた。「これは売れる。となれば、さらに最新の設備が必要だ」と判断した。
 
 「よし機械を買おう」。決断すれば速かった。
 
 「社長、もっと買えよ。欲しい機械をどんどん入れてくれ」と本田に掛け合った藤沢は、ひとつ注文をつけた。「そのかわり、すぐ動かしてくれよ」
 
 社長の本田を米国に機械の買い付けに向かわせ、ヨーロッパにも人を出した。
 
 速いだけではない、その投資が半端ではない。資本金六千万の会社が、二年間で米国、スイス、ドイツから合わせて15億円の最新工作機械を輸入した。
 
 そして本田は、機械を遊ばせるどころか酷使してアイデア商品を形にしてゆく。
 
 「本田へのこの信頼がなかったら、たとえ経理的に余裕があっても、この大冒険に踏み切れなかった」と、藤沢は振り返っている。
 
 いつ、どれだけの規模で設備投資するか、しないか。その判断はどの企業でも苦心のたねだ。
 
 正確な状況分析はもちろんのこと、決断、行動の速さと大胆さが求められる。
 
 「六日の菖蒲、十日の菊」では、幸運の女神の前髪をつかむことはできないのだ。
 
 
 ※参考文献
  『経営に終わりはない』藤沢武夫著 文春文庫
  『松明は自分の手で』藤沢武夫著 PHP研究所
  『本田宗一郎 夢を力に』日経ビジネス人文庫
 
 
  ※当連載のご感想・ご意見はこちらへ↓
  著者/宇惠一郎 ueichi@nifty.com 

 

 

 

 

 

 

 

 

人を活かす(10) 若者とともに育つホンダイズム前のページ

決断と実行(2) 決意の舞と慢心の謡次のページ

関連記事

  1. 故事成語に学ぶ(1)君子は豹変す

  2. 老舗「徳川商店」永続の秘密(8) 攘夷への現実的対処(水野忠邦)

  3. 情報を制するものが勝利を手にする(10)
    大胆な行動を支えるのは周到な根回し

最新の経営コラム

  1. 第183回 菊寿司 @福島県相馬市原釜 ~地魚主体の握り

  2. 第七十一話_禁断の組み合わせから地域活性化へ - 和歌山県田辺市のうなぎ販売展の革新的ビジネスモデル

  3. 第179回 米国に制裁されても反米しない華為

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 経済・株式・資産

    第51回 戦略的な改善の積み重ねで目指す収益性を達成「物語コーポレーション」
  2. マネジメント

    交渉力を備えよ(45) 首脳会談は人間と人間の勝負
  3. 製造業

    第217号 レベル4改善における社長の役割
  4. キーワード

    第76号 多様化するコラボレーション企画
  5. 人間学・古典

    第14講 「言志四録その14」鋭進の工夫はもとより易からず。退歩の工夫はもっとも...
keyboard_arrow_up